9. 自然体の魂
やがてスカーレット先生とサクラは料理を食べ終え、店の出口へ向かう。本当に料理は無料のようで店員さんにはありがとうございましたー、と言われただけだった。
「あー、美味しかったわ。たまにはうなぎもいいわね。安パイ君良いチョイスだったよ」
「お姉ちゃん美味しかったね、また三人で来ようよ」
「学校にいる間は先生と呼びなさいって言ったでしょ?まったくサクラはちょっと抜けてるんだから」
「抜けてるんじゃなくてただ、甘えてるだけだよ。今は。ね?お姉ちゃん?」サクラはスカーレット先生の右腕全部をギュッと抱きしめて甘えた声で言う。
「これから会議なのよ・・・サクラ。もうちょっと気を引き締めたらどう?それとも会議には来ない?」
「行く行くー!」
店から出ると偽の太陽光がややまぶしく俺は高い天井につけられているその光の源へ向かって手をかざしてみた。なんだかそれはSFチックでまるで現代ではないみたいである、光だった。
「会議についてくるなら、もっとちゃんとして。私に甘えないでちゃんと、先生って呼ぶのよ?わかった?サクラ」
「わかったよ、スカーレット先生」サクラはほっぺたを若干ふくらませてそう言った。
「よしよし、良い子だ」スカーレット先生はサクラのふくれたほっぺたを人差し指でツンツンと突きながらそう言い「じゃあ、安パイ君準備はいい?緊張してない?これから会議室に行くよ」
「大丈夫です。緊張はしていません。先生についていきますね」
「じゃあ、また手をつなごうね、アンドー君」サクラはそう言って俺の手を握ってきた。この手に握られるのもこれで三回目だった。といってもサクラの身体も俺の身体もコンピュータによって作られた代物であったが。しかしながらそれは自然体で魂が選びとったものでもある。
サクラの手と俺の手が馴染んでいくのを俺は感じた。
「サクラって手首に香水つけてるだろう。俺も同じ香水よくつけるんだ。ジバンシイのウルトラマリンだろ?」
「え?アンドー君も同じ香水つけるの?おそろいって素敵じゃない?」サクラがにっこり笑う。
「いつもその香水なのか?」
「うん、そうだよ。時々、スカーレット先生のを借りたりするけど。先生とは同じ部屋に住んでるんだ」
「そうか」
「じゃあ行くわよ安パイ君、それにサクラ。ついてきて」スカーレット先生はそう言って先へ進んでいく。
またエレベーターの前まで着くとボタンを押してエレベーター待つ。数秒でそれは来て俺たちはそれに乗り込んだ。
「次は87階よ」スカーレット先生は87階のボタンを押す。
エレベーターが上昇を始めた。