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スカーレットの森  作者: 結姫普慈子
第一章 学園
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8. うな重

「それじゃあこれで入学儀礼は終わり」

「生まれ変わりの終わりだね」サクラはそう言う。

「じゃあ終わったところだし、会議室に行く前に食堂にでも行く?安パイ君ご飯まだでしょ?」スカーレット先生がそう言って俺の鼻先を人差し指でコツンとつついた。「可愛いわねその顔。あなたの魂は可愛らしい色をしていたわ」

「俺の魂を見たんですか?あ、お腹空いたのでご飯食べます」

「そうよ、可愛らしい色よ。表面は青白くて中はオレンジ色だった。じゃあご飯食べに行きましょうか。また迷子にならないようについてきて」

 先生はスタスタと先に行ってしまう。サクラは俺の手を軽くなぞると「すごいすべすべだね。また手をつなぐ?」

「いや、ちょっと恥ずかしい」

「いやね、友達でしょ?それとも迷子になりたいの?」

「食堂に行くんだったら大勢生徒がいるだろうし、サクラも騒がれたら嫌だろう?転校生といきなり手をつないでるなんて」

「私は気にしないわ。アンドー君、案外シャイなのね」サクラはそう言ってクスリと笑った。

 それからサクラは半ば無理矢理俺の手を握って先へ歩き始めた。

「ちょっと・・・サクラ。まあいいかなるようになれば」

「あなた達遅いわよエレベーターもう来てる」スカーレット先生は俺たちをせかすようにそう言う。

 サクラの手ににぎられた、俺はサクラと一緒に軽く走ってエレベーターに向かった。もうスカーレット先生はエレベーターの中にいた。

 俺とサクラが中に入ると先生は20階のボタンを押す。おそらくそこが食堂なのだろう。

「ここの食堂は全部無料なのよ。アンドー君何食べたい?」横にいるサクラはそう言って口笛を吹き始めた。広いエレベーターなので口笛はあまり壁に反響しなかったが不思議と居心地の良さが俺の心に芽生えてきた。

「そうだなあ、やっぱり俺はうなぎが食いてえ」

「じゃあ私もうなぎにしようかな」スカーレット先生が言いながらサクラの口笛に自分の口笛を混ざり合わせた。

 セッションであった。

 サクラの口笛は天高くのぼるようにすがすがしく、スカーレット先生の口笛は地獄の釜が開くようにノイジーだった。

「スカーレット先生、口笛へたくそなんですね。サクラはとても上手いのに」

「はいはい、私はどうせノイズですよ」と言ってスカーレット先生はしょんぼりしてしまった。

「いや、でも音が出るだけすごいですよ。音が出せない人もいますし」と俺は軽くフォローをする。

「そうよね!」そうスカーレット先生は言うとまたノイジーな口笛を吹き始めた。


 そして20階にエレベーターが到着する。

 中はやはり偽の太陽光があたりに照らされ、やや小振りの木々が植わっていたり、青色の蝶々が飛んでいたりした。

 真っ先にサクラが俺の手を連れてエレベーターから出ていく。彼女の手首から香水の匂いがした。それは不思議とこの景色と混ざり合い、緑色の健康的な一枚の葉っぱをもぎとったフレッシュな感じがあった。

「じゃあ今回はサクラに案内してもらいましょうか」先生がそう言って後ろからついてくるのが聞こえた。

 やや早歩きで歩いていく。壁のついていない店が柱だけで吹き抜けの形でいくつも立っている。

 ラーメン屋さんがあったり、ハンバーガー屋さんがあったり、蕎麦屋さんがあったり、イタリアンの料理屋、中華料理、和食となんでもあった。

 その中にあほ面をしたうなぎの顔のマークの店があった。サクラは俺を連れてそこに入って行った。

 中に入るとうなぎの焼ける匂いがしていた。香ばしくてその匂いに俺はお腹が鳴りそうになった。席はあまり混んでいないため直ぐに席に着くことが出来た。座敷の席である。

 その座敷の紺色のクッションに三人で座りメニューを見てみる。

 最高級うな重があったので、迷わず俺はそれに決めた。

「サクラと先生は決めたか?」

「私はアンドー君のと同じのでいいよ」

「私も安パイ君のと同じで、元からその積りだしね」

 俺は店員さんを呼ぶと注文を済ましてしまう。店員さんから飲み物は何にするか聞かれたので、俺はコカコーラ、サクラはアイスティー、スカーレット先生はアイスコーヒーにした。


「そう言えば会議室に行くって言ってませんでしたっけ?」

「そうよこの後、会議室に行くの。安パイ君のことをみんなに知らせなくっちゃ。そこには校長先生と、生徒会のメンバーがいるわ。それプラス私とサクラ。まあサクラは成り行きだけど」

「そうなんですか」俺がそう言うと店員がドリンクを運んできた。

 俺はコカコーラで喉を潤した。シュワシュワシュワーと炭酸がグラスの上で弾けている。料理が来るまで三人共無言でめいめいのドリンクを飲んでいた。

 やがて2~3分後に料理が運ばれる。最高級のうな重だった。

 俺は割り箸を割りうなぎをまずは一口サイズに切ってから口にご飯と一緒に入れた。うなぎはぷりぷりとしており同時に舌の上でとろけた。それから甘いたれの味が口の中に広がると俺は次々と目の間にある料理を食べていった。

 もう無我夢中に食べた。気がついたときにはもう完食していた。腹八分目であった。

 サクラと先生を見るとお行儀よくゆっくりとうなぎを口にしていた。

「安パイ君食べるの早いのね。ビックリしちゃった。やっぱり男の子だからねー」とスカーレット先生は食べてるものを飲みこむと言った。

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