50. ゲームの世界の住人
目を閉じていると気が付いたら俺は別の場所にいた。
エレベーターの中である。エレベーターのボタンのパネルには0から無限までのボタンがあった。なぜか俺はそれを知覚している。
俺は迷わずに∞のマークが付いているボタンを押す。
エレベーターが上昇を始める。外の景色は見えないが上にあがって行く重力が俺にのしかかる。その身体が溶けていくような気分に俺は高揚感を覚える。
魂が快楽を導いていた。
やがてピタンという電子音がしてエレベーターが止まり扉が開く。
俺はゼーハーと息をしながら自分の身体を見る。
大丈夫、何も変わっていない。俺はそして外に出た。
エレベーターの外はどこか変わった香木の匂いがしていた。白檀やハーブの香りがしている。道を進んでいると木を燃やしているのが見て取れた。
誰もいない。
「お~い、ステファニーさん、イヴさん、どこにいるんだ~?」
「こんにちは、ゲームの世界の住人さん」ふと俺の後ろから声がした。後ろを振り向くとイヴがいた。「私達は明日、世界を壊す」そうイヴが言う。
「世界を壊すのか・・・。でも学園はどうなるんだ?それにわざわざ世界を壊すのはなぜなんだ?」
「学園はこの世界を壊れるのを予見して建てられたものなの、おそらく私達が世界を壊すのを予想していたのでしょう。大丈夫よ学園は」と言って一息吐く。「世界を壊すのが必要なのは身体の生まれ変わりが必要だからよ。私達の求めるセカイへの」
「なるほどなあ、俺とサクラとスカーレット先生は君達二人を学園に戻すように言われてるんだ、戻ってくれないか?」
「条件がある」
「なんだ?」
「あなたとサクラ、別れてほしい。あなたには元の世界に戻ってほしい」
「それは無理だな、だって約束したんだ、サクラとは一生恋人だってな」
「あら、そうなの?でもあなたには元の世界に戻ってほしいのよ、ゲームの世界に」とイヴが言うが、俺はサクラとは一生友達でいようって誓っただけであったことを思い出す。
「なんで元の世界に戻らなくちゃいけないんだ?」
「だって、あなたがいると不都合ですもの。私ってコンピュータでしょ?あなたみたいな救世主はいらないの」
「仲良くしようぜ~」
「いやよ!」
「俺のことが嫌いか?」
「そうね、見た目は割と好きかも」
「悪いな、俺には恋人がもういるんだ」
「あなたと恋人になりたいわけじゃないわよ、いやね。ちょっと待ってマスターを呼んでくる」と言ってイヴは奥の道へ入って行く。
天井は薄暗く、白い石膏で出来ていた。俺は寒気を感じたので焚火のもとに歩いていく。
しばらくするとイヴがステファニーを連れてやってくる。
「こんにちは、安パイ君」
「よっ」
「安パイ君達は学園に戻ってほしいんだよね、それならこうしましょ、このリボルバーのピストル、これに一発だけ弾が入ってる。これをランダムにまわして五回、引き金を引いて。安パイ君の頭に銃口を向けて。それであなたが死ななかったら帰るわ」
「え・・・?」俺はそう言うが、ステファニーはピストルを渡してくる。
「使い方はこうよ」と言って説明してくる。「弾が入る部分は六つだから、六分の五の確率で安パイ君は死ぬわ」
「じゃあ、俺帰る・・・。もう世界なんて知らない」
「元の世界に帰りたいの?ならエレベーターで0のボタンを押しなさい」とステファニーが言う。
「学園は今補助電源で動いてるんだが、後一年しかもたないんだ、なんとかならんか?」俺が聞いた。
「それなら、これを持っていって」と言ってステファニーは黒い炭のようなものを渡した。「これがあれば補助電源が永遠に使えるようになるから、このセカイの産物だよ」
「おお、ありがとな。じゃあ二人は学園に戻らないってことでいいんだな?」
「そうね、安パイ君がこのゲームをやらなければ」
「わかったよ。帰る。じゃあな、元気でな」
「安パイ君も元気でね。これでお別れね」
俺はエレベーターに戻った。そう言えばサクラとスカーレット先生がいる場所は何階なんだろう、多分1階かなと思って1のボタンを押した。
そうして俺はサクラとスカーレット先生の元に戻った。
「どうだった?安パイ君」と先生が聞く。
「二人を連れ戻すことは無理でした。命がけのゲームをやらなきゃ帰らないって言われて・・・。でも学園の補助電源を永遠に続けるものはもらいました」
「あら、そう安パイ君、勇気ないのね」
「ごめんなさい」
「じゃあ、学園とこのセカイ以外の世界は滅ぶのね」とサクラが言った。
「そのようね」と先生が言った。




