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スカーレットの森  作者: 結姫普慈子
第一章 学園
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5. サクラ

 猛スピードでの車の体験もあと少しで終わりだ。なぜなら学校の直ぐそばまで来ていたからだ。あれからもう30分程経っていた。

 まじかに見る学校はバカでかくて俺はこんな建物を作って罰当たりだなと思った。だって大きすぎるものは罰が当たりそうだし。

「お疲れ様安パイ君。スピード落とすね」やっと俺は解放される、と思い大きく伸びをした。乗車時間が30分と言ってもわけのわからないスピードに音楽だ。あまりのめまぐるしさに気分は上昇した後落下した。


 車は大きな入口(白い壁に綺麗に四角く亀裂が入っている)の前で停まるとスカーレット先生は車から降りてスカートのポケットからカードを取り出した。それを入口脇のポスターの前に持っていく。

 ポスターは有名な絵画のプリントでまんなかに四角いくぼみが出来ている。何回も重ねられたのかその部分だけ黄色く汚れていた。ほかの部分は不思議と綺麗なのに。

 先生はそこにカードを当てた。

「おかえりなさい、スカーレット先生。今ゲートを開けます」途端に女性の声が壁から発せられ、入口が開いていく。

 スカーレット先生は車に戻るとまたシートベルトを締めて開いた入口の奥へと進んでいく。

 まず中に見えたのは噴水だった。周りにはベンチがあり、ここの生徒が座って本を読んだり、話をしたりしていた。カップルのように見える人もいる。俺もこんな広い学校なら恋人作れるかも!となんとなく思った。

 そこを横切って奥へと進んでいく。中は建物の中なのに太陽の光と同じ色の光が満ちていた。天井は高い。車の窓を開けて空気を吸ってみても木々の匂いと甘酸っぱい花々の匂いが風に揺られやってくる。

 車はゆっくり進んでいた。さっきまでのスピードが嘘のようだった。おかげで外の景色がゆっくりと見ることが出来た。

「どうここの学校は?中々楽しそうでしょ?」先生が笑顔を作って何かを誘うように言う。

「そうですね、ここなら俺、彼女できるかもしれません」

「がんばってね」先生は唇を横に伸ばして年上の威厳をもたせたよく通る声でそう言った。どこかそれは突き放すような響きを持っていた。


 駐車場の前に来た時、車に女子生徒が近づいてきた。そして俺の座っている窓のそばに立つと口を開く。

「この子が先生が言ってた子なんですか?」その生徒は俺をちらりと見てからスカーレット先生のほうを向いてそう言う。

「そうよ、たった今到着よ。仲良くしてあげてね」

 その生徒から香水の匂いがしてきた。おそらくジバンシイのウルトラマリンだろう。その香水は俺もよく使っていた。

「私はスカーレット先生の妹なの。名前はサクラ。そのサングラス、おかしいわね」

「ああ、サクラよろしく。俺はアンドー・パイナップルだ。このサングラスは君のお姉さんのものだよ」サクラの瞳もブラウンだったがスカーレット先生よりかはそれは黒味がかっていた。

「じゃあ、停めてくるからそこで待ってなさい、サクラ」先生はそう言って、車を駐車場へ進めていった。

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