46. イヴのセカイ
「粗末なものですが」俺たちは緑茶を渡された。四人の武装した兵士に連れられた場所は机が一脚ある部屋でこじんまりとした場所だった。
緑茶はどれも茶色の同じ湯のみの中に入っていた。
「ありがとうございます」俺はそう言ってお茶を飲む。久しぶりに飲む緑茶はほんのり甘くてそして口の中が渋みでリラックスした心地になる。
「私達兵士はこの研究所で雇われています」お茶を渡してくれたのは先程の礼儀正しかった人だった。「本当に新しい世界が出来るのが楽しみなんです。あと一歩のところなんです。それまで待っていてくれませんか?」
「仕方ないわね~。こんな粗末なお茶じゃなくてもっと美味いもの持ってきてくれたら考えてあげる」とスカーレット先生が言う。
「そうよ!私達はジャンキーなの!」とサクラ。
「やぁね、サクラ。ジャンキーじゃないでしょ」
「う~ん、でも私マリファナタバコ吸いたいし」
「コンピュータの身体なんだから中毒症状はないはずよ。私達は一般的な人間じゃないから」
「そうなんだ、初耳」とサクラが言ってお茶に口をつけた。「このお茶結構美味しいよお姉ちゃん」
「そう?」と言って先生がお茶を飲む。「あら、美味しいじゃない。大したもんだわ」
「私は日本人なんです。お茶の淹れ方はとても上手いんです。えっへん」と礼儀正しい兵士が言う。
「まぁ、どうせ世界なんてどうせできっこないんだから、待っていてあげる」
「お~い、ムトウ。もうすぐセカイが出来るらしいぞ」と新しい兵士が入ってきて言う。
「おお!そうか!みなさんも新しい世界を見にいきませんか?」
「いいわね~!見たいわよ!行きましょう」とスカーレット先生が答えると俺たちは兵士二人に研究所の奥へと連れられて行く。
道中を歩くと真っ暗だった廊下がどんどん俺たちが歩くたびに光って行く。
やがて一番奥への扉へとたどり着く。
「来たのね」そこにはステファニーがいた。「ようこそセカイが出来上がったわ」
俺とサクラと同年齢に見える美しい少女の腹の中に何か宇宙のようなものが透けて浮かんで見えた。その少女は眠っていて壁に磔にされていた。死んではいないが、深く眠っている。
「ここがセカイ。イヴの中なの」
「へぇ、出来ちゃったんだ。綺麗なものね」
「この子がイヴちゃん?」とサクラが言ってその美少女に近付く。
「そうよ」突然その磔になった美少女が目を開き言う。「私達は旅立つ。さあ、行きましょう、ステファニー、私のマスター」と言ってイヴは自分の腹の中に頭を突っ込むとそのまま消えてなくなる。後には宙に浮いた、小さな球体の宇宙が取り残される。
そしてその中にステファニーが入って行った。
「私達も行きましょう。二人を連れ戻すの」と先生が鬼気迫った表情で言う。
「なぜです?」俺が言う。
「本当にこれが最初で初めての人類を救うためなの。行くわよ」と先生が言った。
「わかりました。行きましょう。サクラ、準備はいいか?」
「アンドー君の行く所ならどこにでも行くよ。流石に男子トイレとか男子更衣室とか髭剃り屋さんとかは無理だけど」
「髭剃り屋さんってなんだ?」
「行くわよ!」と先生が言って、俺たちはその『セカイ』に飛び込んだ。
その『セカイ』に入ると元いた世界が如何に終わっているのかが理解できた。そして俺たちはちょうど物語の中にいたのだ。




