44. シャワー室のラジオ
シャワーを浴びているとシャワー室の窓辺にある防水仕様のラジオからラジオDJの声が聞こえてくる。
「さあ、みなさんご機嫌よう」
「ご機嫌じゃねえよ」俺はそう言う。
「ラジオパーソナリティのステファニーです」
「え?ステファニー?」
「お相手をつとめる、コンピュータのイヴです」
「マジ?」俺はそのラジオを抱えるとシャワー室を出てサクラと先生の元へ行った。
「先生、サクラ、ラジオでステファニーとイヴが出てる!」
「アンドー君、裸よ。待っててタオルで拭いてあげる」サクラがそう言ってタオルを持ってきて拭いてくれる。
「ホントにステファニーの声じゃない。聞いてみましょう」
「私達二人は、新しい世界を作ろうとしています。無論みなさん全員が入れる世界を、です」
「それでステファニー、その世界はいつ頃できあがるの?」
「あともう半分でできあがるわ。今は研究所から放送してるの」
「なるほど、でも今の時世、ラジオを聞いてる人は少ないんじゃない?」
「そうね、イヴ。でも私は予感をしているの。このラジオを聞いている人の中で私達の意見に賛同してくれる人がいるって」
「私達の意見とはずばり、この世界をぶっ壊して、それから新しい世界に移住することです」
「新しい世界では全てが自由です。また一から作り直します。それからはまた自由ではなくなるけど、私達が目指しているのは世界と人類の共存です」
「世界と人類の共存とはズバリなんですか?ステファニー」
「それはね、世界自体に人間の魂を放り込んで作り直すことよ」
「それによって人類は救われると?」
「人類というより、より大きなものが救われるのね。例えば、自然とか環境とか音楽とか物語とか詩とか、あとはそうね、あなたなんかも」
「素晴らしいとは思いませんか?」
「もう半分の時間だけ待っていてください。私達が完成させますから」
そこでプツンと音が鳴ってラジオの音が消えた。
「参ったわね、宣戦布告してるわよ、この子たち」
「どうするの?お姉ちゃん?」
「とっ捕まえて学園に戻すしかないわね、安パイ君、未来の私は何か言ってなかった?」
「そういえば、ステファニーとコンピュータはちゃんと見つかるって言ってましたね」
「じゃあ、テキトーでいいわね。どうせ新しい世界なんて出来るわけないんだから、面倒くさいわね」
「でも学園は新しい世界なんじゃないんですか?」
「あれは新しくなんてないわ。むしろ古いほうよ」
「そうね、だってノアの箱舟だもん」
「サクラそれ、安パイ君にもう言ったの?」
「うん、言ったよ。アンドー君が学園に来て直ぐに」
「そっか。じゃあそろそろチェックアウトの時間だし、外に出ようか、荷物持って」
俺たちは荷物をまとめて外に出た。外はやっぱり暑かった。




