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スカーレットの森  作者: 結姫普慈子
第二章 外の世界
43/54

43. 天へと続く

 今度はサクラが先生にドライヤーで髪の毛を乾かしてもらっていた。

「サクラの髪の毛が乾いたら私のお願いね、じゃんけんで負けるんじゃなかったわ。めんどくさっ」先生はそう言う。

 サクラは耳にカナル型のイヤフォンを突っ込んで、歌を歌っていた。

「サクラのりのりじゃない」

「誰の歌なんですか?」

「やなぎなぎの『アクアテラリウム』」と先生が言う。

 やがてサクラの髪が乾いてしまうと、サクラはドライヤーを片手に持って先生の髪の毛を乾かしていく。

 ドライヤーのゴーゴーという音に混ざり、おだやかであたたかなサクラの歌声が聞こえてくる。やがてその曲が終わると次の曲が始まる。おそらくランダムに曲を混ぜているのであろう。

 今度は心臓の鼓動の音が聞こえてくる。サクラのイヤフォンは爆音で流れている。俺の心臓が一緒に動いているのがわかった。

 その歌を先生とサクラは一緒に歌っていく、混ざり合った歌声はどこかの水辺へ俺を運んでいく。

 その曲は霜月はるかの『瑠璃の鳥』であった。化け物じみた曲であった。なぜなら、天へと続く鳥の飛翔を描くルートが誰かの手によって分断されていたからだ。その喪失感がちょうどよく俺の鼓動に響いていた。学園と外の世界のように分断された。



「それでサクラ、ステファニーちゃんの夢の中に入った?」

「入ったよー。新しいことがわかったんだ」

「教えてよ」

「二人はね、全人類を収容できる世界を作ろうとしている。ステファニーちゃんとコンピュータちゃんならそれは可能だと思うわ、私は」

「なるほど。でも途中で神様が現れて、それを壊しちゃうんでしょ?」

「そうなるかもね。そうなる前に二人を学園に戻そう」

「なんでですか?全人類を救えるんですよ?」と俺が聞く。

「全人類を救うのは、安パイ君、あなただけなのよ」とスカーレット先生が言った。

「・・・。別に他の二人でもいいじゃないか」

「だめなの。RPGって知ってる?」

「ゲームですよね。俺もやったことあります」

「この世界はRPGじゃないけれど、あなたはRPGなの」

「俺はゲームの中の住人なんですか?」

「この世界じゃない場所から来た人間だから、あなたはゲームなの」と先生が言う。「本当はあなたは別の世界から来たのよ。学園とも外の世界とも違う」

「じゃあ俺の帰る場所は?」

「アンドー君はここにいればいいんだよ」サクラが俺に近寄ってそう言う。ドライヤーはもう終わっていた。「シャワー浴びてきちゃいな、アンドー君。もしかしたら数時間後にはぷんぷんしてるかもよ?」

「わかった・・・」俺は部屋のシャワー室に向かった。

 俺が向かう後ろでサクラは歌を歌っていた。the pillowsの『ハイブリッド レインボウ』だった。

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