39. バカンス
ガタガタと車が猛スピードを出して揺れている。今度は下り坂だった。俺が学園に行くときは上り坂であったが。
その時、ガッタンという大きな音が鳴って車が小さく跳びはねた。その衝撃でサクラは後部座席で寝ているところから床に落ちてしまった。
「サクラ!大丈夫か?」俺はそう聞くがサクラはうんともすんとも言わないで後ろの席の足元に転がっていた。
「ねぇ、安パイ君、サクラのこと見てきてあげて、転がっちゃってるようだから」
「わかりました」俺はそう言ってシートベルトを外して後ろの席に行き、サクラを床から席に戻してやる。
サクラはまだ眠っているようで瞳を閉じていた。俺はサクラを膝枕してあげた。サクラのやわらかな白いほっぺたが俺のふとももに当たっている。
「どう?サクラは?段々と霧がかってきたわよ、安パイ君。寒くなってきわね」本当に辺りは霧がかってきて、寒くなってくる。先生はエアコンのスイッチを切った。
「サクラはまだ眠っているようです。俺が膝枕してあげてます」
「あっそう。サクラはぐっすりか。きっとコンピュータの夢の中に入ってるんだわ。と言ってもコンピュータは今眠っていないようだから、コンピュータが見ている現実を夢の中を通して見ているのかもしれないわね」
「サクラは現実と夢の中の両方に住んでいるようですね」
「あら、安パイ君知ってたの?」
「はい、知ってます。サクラに教えてもらいました」
「う~ん」そんなことを言っているとサクラは起き上がって目を覚ました。「おはようアンドー君、膝枕心地よかったよ。多分」
「多分っていうのはなんだ?俺の膝枕は結構硬かっただろう?」
「硬いって言うか、匂いがあったね、アンドー君の。今日、香水つけてるでしょ?ウルトラマリン」
「ああ、つけてる」
「それで夢の中はどうだったの?コンピュータの?」
「ああ、それね。見えたよ。コンピュータの夢の中が」と言ってサクラは小さくあくびをする。目尻に涙がたまる。「ステファニーちゃんとコンピュータは世界を壊そうとしてるわ」
「世界ってどの世界よ?学園の中?それとも外の世界?」
「それがわからないのよ。おそらく外の世界だと思うけど。世界をいったん壊してまた新しい世界を作ろうとしてるみたい」
「なんでわざわざ世界を壊すのよ?」
「この世の国を再建するんだってさ、私にもよくわからない。ただわかってるのはこの世界の何処かを壊すっていうこと」
「神にでもなったつもりなの!?」先生がそう言ってハンドルを手で叩く、クラクションが無人の通りで鳴った。
「怒らないでよお姉ちゃん。新しいことが始まるんだよ?でもまあ、私達には歓迎すべきことじゃないっか」
「当たり前じゃない!」
「そうですよ」俺が言う。
「アンドーくぅ~ん、バカンス楽しもうね~」とサクラが寝ぼけ眼でそう言った。




