35. すけすけワンピースとアラート無限
サクラが帰ってきた。サクラは焼きたてのガーリックの匂いがするフランスパンを三つ持っていた。
「これ食べよう。お姉ちゃん着替えちゃって、なんでまだ裸んぼなの?」
「ちょっと安パイ君をからかってたからよ」
「アンドー君は私の恋人なんだからあまりからかわないでよ」サクラがスカーレット先生をにらみつける。
「はいはい、ごめんなさいね。今着替えるわ」と言って先生はやっぱり棚を引いて下着を手に取る。
「アンドー君、先に食べちゃおう」
「そうだな、先生はエロすぎて食欲がこんもり出てきた」
「何よこんもりって、はいパンだよ」サクラに手渡されたフランスパンを齧る。結構歯ごたえがあってパンには甘みがあり、ガーリックとバターの塩気が利いていて焼きたてのパンは美味しかった。
ガジガジとそれを齧って食べていく、落ちたパンのかけらが机の上に散らばって行く。
「さあ、私も食べようっと」スカーレット先生は一つ手に取ると食べていく。先生の今日の洋服はすけすけの透明のビニールのワンピースだった。下の黒い下着が透けて見えている。
「なんて格好してるんですか、先生」
「何よ、安パイ君。ああ、これ透けてたわね。これ透け具合を調整出来るのよ」と言ってワンピースの襟元を手探りで触っていると次第にワンピースの色合いが濃くなっていく。ワンピースは濃いグリーンになった。生地はエプロンのような分厚い生地で肩もとが開き、先生の肌が見えていた。「これでいいでしょ?」と言って先生はまたパンを食べる。
俺たち三人はプールにいた。サクラは50mのプールで平泳ぎしており、スカーレット先生は俺のそばで大きな白い浮輪にお尻をはめこんで腰かけていた。
二人はおそろいの黒いビキニを着ていた。やっぱり先生の方がおっぱいは大きかった。この時間ビキニを着ているのは先生とサクラくらいだった。
「無限、無限、無限、...」その時コンピュータの音声でアラートが鳴り始めた。
「なんなんですか?このアラート?」俺がそばにいるスカーレット先生に聞いた。
「これは・・・。ちょっと待って、サクラ!」先生は浮輪から下りてプールサイドを上がってサクラのいる方へ向かう。
俺も追いかけるとサクラは50mプールのちょうど真ん中で背泳ぎの格好をしたまま硬まっており、周囲のプールの水面が青白く光り輝いていた。
「無限がやってきた・・・。サクラ!」先生と俺は50mプールに入りサクラのいる場所へと進んだ。
「無限、無限、無限、無限、無限、無限、...」サクラのそばに来るとサクラは小さく口を開きそう繰り返していた。先生はサクラを抱えるとプールから上がるため、プールの梯子に向かう。
「コンピュータがやってきた」先生はそう言ってサクラを梯子の上に横たえる。
「コンピュータってどういうことなんですか?」
「この学園はコンピュータ尽くしだけれど、元々人間じゃないものに人間の身体を与えることは本当は無理なことなの」
「じゃあサクラはどうやって?」
「サクラは矛盾から生まれたの」
「矛盾?」
「生命の矛盾。それは無限から取り寄せたデリバリーピザみたいなものよ」
「ピザが生命なわけないでしょ、先生」
「とにかく、コンピュータをなんとかしないと」
「今、コンピュータは無限という場所に近付いてコンピュータ自身が人間の身体を獲得しようとしている。サクラはとばっちりにあってる。でもこれはチャンスなのよ、安パイ君」
「コンピュータが無限に近付くことが、人間の身体を獲得しようとしていることがチャンスなんですか?」
「だって、寿命の持っているサクラが次の段階へと進むことを意味しているから」
「なるほど」俺はよくわかっていなかった。
「やっぱり、あなたは救世主ね」
サクラの目は閉じていて口だけ動いていたが、やがて口が閉じて、寝息が聞こえてくる。
先生はそのサクラのほっぺたをぱちぱちと軽く手のひらで叩くとサクラが目を覚ました。
「おはよう。お姉ちゃん、それにアンドー君。やっと私、いつまでも生きられるようになった気がする。そんな気がするだけかもしれないけど」
「良かったわ。目が覚めて」コンピュータのアラートも止まっていて、プールはざわざわ生徒達の喧騒でざわついていた。
「物語が再生したの。コンピュータが目を覚ました。私は意識がない間、夢の中にいてそこでコンピュータに会った。コンピュータは身体を手に入れたようだわ、ついでに私の寿命も永遠になった」
「コンピュータが身体を手に入れたならコンピュータは永遠に生きられるの?」
「元から永遠に生きるのがコンピュータじゃない、お姉ちゃん、ちょっとは考えたら?」
「それもそうね。ちょっと安心したら喉乾いちゃったそろそろお昼にしない?」
「昨日言っていた、ファーストフードですか?」俺がそう聞く。
「そうよ、ファーストフード」
「いいね」サクラがそう言った。




