33. 氷のようにつめたいそうめん
俺はサクラが売店で持ってきたオレンジのかごを見ると、遅い夕食を摂ることにした。
夕食はそうめんであった。テーブルの周りの椅子に腰かけてそうめんを置く、袋から取り出してその細いめんをちゅるちゅるっとつゆにつけて吸いこんでいく。
そのそうめんはよく冷えていて俺の喉を通るときにやわらかな氷を飲みこむような感じがあった。
やがてベッドのサクラがもじもじと動き始めてそこから出てくる。
「アンドー君、ご飯食べてるの?」
「ああ、いただいているよ」
「私もまだ食べてなかったから一緒に食べる~」サクラは寝ぼけている声でそう言って、まなこを軽くこする。
サクラの瞳は涙がたまっていたようで目の端に濡れている涙がかすめていく、それが頬へと流れていく。
サクラはかごから俺と同じそうめんを取り出してテーブルの椅子に腰かけた。
「つめたいね」サクラはそれを口に入れて飲みこむとそう言った。午前2時の俺の部屋の中はどこかリラックスする冷たさで満ちていた。
「ああ、つめたい」俺がそう言うと、その時外から雨の音がし始めた。
サーっという音が静かにしていた。静寂の上に雨が降る。
俺はカーテンを開けると外の景色を見てみた。外は大粒の雨が降っていて窓にそれが時折当たる、トントンという音がしている。
「この学園でも雨が降るんだな。まるで外の世界みたいだ」
「だって、この学園は外の世界を中に入れるために作られたんだよ?モデルは外の世界なんだ。雨だって降るよ。明日はプールだけど、冷えないといいね、アンドー君」
「そうだな」俺はそう言ってまたテーブルに戻ってそうめんの続きを食べ始めた。
二人で食べ終えると俺は「ごちそうさま」と言ってサクラもそう言う。
「私、お姉ちゃんの部屋に戻るわ」その後にサクラがそう言った。「喧嘩しちゃったけど、もしかしたら心配してるかもしれないし。電話してみる」
「電話っていうのは先生と交信する機械のことか?」
「そうだよ、アンドー君」そう言ってサクラはハンガーに引っかかっているスカートのポケットからマシンを取り出してボタンを押す。「もしもし、お姉ちゃん。今はアンドー君の部屋にいるの、今まで寝ちゃってた。今ご飯食べたところだよ。うん、そうめん食べた。アンドー君は何もしなかったって?何もしないよ」
サクラが話している間、俺は冷蔵庫から例の水を取り出してキャップをひねり口に付けていた。
「お姉ちゃんは今から帰ってもいいけど、アンドー君の部屋に泊っていってもいいって。アンドー君どうしよう。私、眠いなあ」
「う~ん、眠いなら寝たらどうだ?俺は床で寝るし」
「アンドー君、床で寝るの?添い寝しようよ、せっかくなら」と言ってサクラは俺の背中に軽く手を置いてベッドへと連れていく。「おやすみアンドー君」俺はサクラと一緒に布団をかけられて寝ることになった。
カーテンは開いており、雨の音が室内で響いていた。甘い雨音だった。ショパンの雨だれのように。




