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スカーレットの森  作者: 結姫普慈子
第一章 学園
32/54

32. 白い光の庭園

 俺はエレベーターの中に入ると噴水のポスターの黒ずんだ部分を見つけてそこにカードキーを当てる。

 エレベーターが動き出す。

 上昇していく。

 365とパネルに数字が表示され扉が開かれる。

 今度は外は真っ白な光の中であった。全てが光に包まれていた。俺はその先に行くのをためらった。

「来て」その中から声がしてきた。

「その声は、サクラか?」

「そうだよ、アンドー君」

「サクラは俺の部屋で寝てるはずじゃないのか?」

「本当は寝ているのはアンドー君なんだ。私じゃない。ここはアンドー君の夢の中」

「俺の夢の中?」

「ちょっと待って、目を無理に開けようとしないで、現実に戻っちゃう」

「ああ、わかった」

「そんなに薄目にならなくていいのよ。普通にしていて。来て」

 俺は深呼吸すると中に足を踏み入れた。

 白い光の中に目が慣れていく。そこは庭園だった。薄く濁った透明のビニールに包まれた庭園。

 植物たちが咲き、その室内はムッとしていた。その中の花柄の模様がついたテーブルの上にサクラは腰かけていた。

 サクラは白色のワンピースを着ていて肩もとにヘビのマークがしてあった。そのヘビのマークだけが濃い緑色であった。

「おはようの反対はなんだと思う?アンドー君?」

「おやすみ、じゃないのか?」

「そうね、じゃあおやすみアンドー君って言おうか?」

「夢の中だしな、それで俺をここに呼び出した理由は?なんかあるんだろう?」

「別に理由なんてないわ。ただ呼んだだけ。私がサクラの木から生まれたってことは話したじゃない?」

「うん、話した」

「私は夢の中にも住んでいるの。現実と夢の中の両方に。それでアンドー君の意識を伝ってこの中に入ったの。ちょうど365階は天国だから。コンピュータが作ったんだけどね」

「じゃあここはコンピュータの世界なのか?」

「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える。ここはちょうど狭間なの。コンピュータが作り出したものとあなたとの」

「・・・。深淵ということか?」

「そう、深淵なの。ここから先は自分で作らないといけないの。アンドー君あなたが、この先を、結論の先を導き出すの」

「そんなの簡単じゃないか」

「どうして?」

「ただ生きてさえいればいい、俺がここに生きてさえいれば勝手にコンピュータなんて越えていく」

「そうかもしれないわね。あなたが生きてさえいれば」と言ってサクラは微笑んだ。「時々ここに呼んでもいい?夢の世界の私は現実の世界の私と同じものだけど、アンドー君とも夢を共有したいの」

「時々二人きりで会うのか、365階で。いいぞ、構わない」

「ありがとう」サクラはそう言って机から下りた。

 ストンと地面に着地する。地面は白い石で出来ていて靴が触れる音がした。

「もうそろそろコンピュータを超える気がしてるの」

「俺がか?」

「そう、アンドー君と私が。じゃあね、さようなら。おやすみ」

 そう言った後俺は自分の部屋で目が覚めた。サクラは先ほど売店で買ったパジャマを着て隣に寝ていた。すーすーと寝息を立てている。

 俺はカーテンに近付きそれを開けると外を眺めた。外は暗くて月が出ていた。月は半分で黄色く輝いていた。時計の文字盤が暗闇から光って見える。

 時刻は午前2時だった。

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