27. シーツの歪み
俺は眠っている間、夢を知覚しないでぐっすりと時間のトンネルを通り抜けるように眠った。
起きると、そこは俺の部屋の中であり、俺はベッドに寝ていて、隣にはサクラが無防備な寝顔を見せて眠っていた。お互いが向き合った形であった。
「あれ、この部屋は・・・」俺は寝ぼけまなこでベッドで腰を上げる。
ベッドのスプリングが反応してシーツが歪み、その落ちたシーツへ一回転してサクラが転がってきた。俺の体にサクラの着ている制服が当たった。
「う~ん、なあに」とサクラはもぐもぐと食べ物を咀嚼するように口を動かしながら言って、それからぱちりと目を開いた。「あ、アンドー君」
「コンピュータの仮想空間から元の世界に戻ってるな」
「ああ、そういえばあそこで寝ちゃったから意識がこの世界に戻ったんだわ。おはよー、アンドー君。今何時?」
「いや、時間はわからない。時計は持ってないんだ。この部屋にもないし」
「そっか」と言って、サクラは窓に近づく。俺も一緒に窓辺に行った。
窓の外はまだ陽が高く、サクラが見ている方を向くと大きな時計盤が窓の向こう側の壁に貼り付けてあった。壁は赤いレンガで出来ていた。
ギリシャ数字で描かれた文字盤の時計で時刻は12時丁度を指していた。
「お昼ね。アンドー君、またご飯食べに行く?」その時サクラのスカートのポケットから音が鳴り始めた。「あ、電話だ。もしもし」と言ってサクラはポケットから板のようなものを取り出し耳に当てる。「お姉ちゃん?今はアンドー君の部屋だよ。ちょっと眠たかったから眠ってたの。うん、ご飯食べに行かないかって?」サクラは俺の目を見る。「わかった食堂に向かえばいいんだね、了解」
「その板の向こう側で先生と話せるのか?」
「そうだよ、アンドー君。食堂でまたご飯食べようってお姉ちゃんが言ってた。一緒に行こ」
「オッケー、行こうな」
「うん」そう言うサクラはまだ眠たそうだった。
食堂で三人で飯を食ってるところであった。今日はうどんにした。サクラはきつねうどん、スカーレット先生はたぬきうどん、俺は冷たいざるうどんだった。
「サクラ、安パイ君の部屋で寝たんだって?」
「そうだよ、初めは私達の部屋で寝たんだけど、起きたらアンドー君の部屋だった」サクラはそう言ってからきつねをかじった。きつねの汁がジュワジュワーと出てくるのが見えた。
「最初は私達の部屋だったの?それってどういうこと?」
「お姉ちゃんに写真もらったじゃない?あの写真を仮想化してその世界に入ったんだよ。そこで寝ちゃって、起きたらアンドー君の部屋のベッドで二人で寝ていたの」
「なるほどね、でもその展開ってなんだか素敵よね」
「ん?なんで?」サクラは今度はうどんの麺をちゅるちゅるっと吸い込む。もぐもぐ。
「私達のいるいわばプライベートの空間から、サクラの好きなアンドー君の部屋にワープしたのよ。それも仮想から現実へと。それってドラマティックじゃない?」
「もう!お姉ちゃんったら!アンドー君とはただの友達なんだよ!昨日出会ったばかりだし」
「でも二人とも似合ってるよ。なんてったって私の妹は私と似て美しい乙女なんだから。安パイ君も美少年だし」
「俺なんかただのヘンチクリンですよ」
「安パイ君は黙ってて」
「はい」




