19. 歌うサクラ、舞うマリファナ
イヴコンビニの中でアニメソングが流れ始めた。
「バニラソルトね」スカーレット先生が言う。
ねじを巻く音が聞こえる。やはりそのソングは大音量で大臨場感で大音質で、大宇宙だった。甘い女性ボーカルが耳の奥へと鼓膜の薄い膜へとささやく。
それはソウルに直接触れるようで、俺はマリファナアイスクリームの共鳴効果で俺自身がバニラになる。
自分の吐息がバニラに聞こえた。
「塩じゃなくてマリファナ味ね」サクラを見ると瞳孔がぐるぐると周っていた。天井のシャンデリアもぐるぐると周っている。
回転木馬や回転椅子、回転エレベーターのように遊園地の空間がここ、イヴにはあった。
「あっはーん、酔っちゃった~」スカーレット先生がそう言ってコートの上のボタンを一つ取った。
白色の生地のブラジャーの上に緑色の丸いくぼみが見えた。
「これ、すっごい美味いっすね」
「私の食べてみる?アンドー君」スカーレット先生がそう言って自分が持っているアルコールアイスクリームを俺の口に付けた。
それは冷たかったがピリッとした辛い熱さがあった。
やはりイヴコンビニではバニラソルトと呼ばれるアニメソングが流れており、先生のブラジャーはピンク色のコートからはみ出ていた。
「お姉ちゃんブラ見えてる。みえブラよ」
「これってもしかしてチラリズム?」
「やぁね、お姉ちゃんったらもうちょっとお上品になったら?」
「いやね、サクラ。私はいつもセクシーでお上品じゃない。この髪を見て」先生は自分のピンク色の髪の毛を指先で風にゆられるようになぞる。「このピンク色は高貴な色なのよ」ふわふわと陽に揺られその髪の毛はほんのりホワイティだった。
俺は自分のアイスクリームを食べ終えて、下のコーンを食べていた。
「このバニラソルトって曲いいですね、誰が歌ってるんですか?」
「堀江由衣ちゃんよ」スカーレット先生がそう教えてくれた。
「ふーん」
「イヴコンビニにてバニラソルト、歌は堀江由衣ちゃんね」サクラがそう言って、自分も歌い始めた。
サクラの唇が音楽のグル―ヴにつづられ、ビリビリと空間をゆがめるように振動していく。宇宙が変わっていく気がした。
サクラの歌声は暗闇の中から聞こえるセイレーンのごとく深淵へと俺を引きずりこむようであった。
スカーレット先生がピョンピョンと跳びはね始めた。ブラジャーに隠されたおっぱいがぽろりと出てしまった。
「ぽろりもあるよ」俺はそう言った。
「あら、お姉ちゃんちゃんとおっぱい整えて」サクラがスカーレット先生の盛り上がったブラジャーを素手で抱えてそっとコートの中に戻してあげる。
その時、バニラソルトの曲が終わって、次の曲が流れ始めた。
次の曲は、何という曲なのだろうか、アコースティックのギターで始まり、かわいらしい女性のボーカルだった。
「この曲は花澤香菜ちゃんのざらざらね」スカーレット先生がそう言った。
サクラがまた歌い始めた。「ねぇ」とサクラが歌う。俺は語りかけられるようなその歌声になんだか涙が出てくる気分だった。
自然と涙を流す俺に、スカーレット先生がにやにやと笑う。




