11. ルームナンバー505でおやすみ
505と銀色の板に薄いホワイトで書かれてある扉の前に来ると横の壁に付けられたミュシャの絵が書かれたポストカード位の大きさの装置にサクラは銀製のカードをくっつける。
ピッっと高い音が鳴って鍵が外れるガチャリという音が鳴った。
「入ろうっか、アンドー君」サクラはそう言って扉のノブをひねり中へと入って行く。俺も扉をくぐり中に入った。
扉の中の部屋はホワイトの薄い絨毯が床全体に敷かれており、学習机が一つと奥の壁にベッドが一つあった。棚やタンスなんかもある。
結構広かった。
「そういえば、アンドー君、荷物とか持ってきてないの?」前に立つサクラがカードをうちわのように扇ぎながらそう聞いてくる。窓からは偽の太陽光が差しており外からは上の階なんかも見えた。この100階から120階の寮はおそらく建物の中でマンションのようになっているのだろう。
「あ、スカーレット先生の車に忘れてた」
「スカーレット先生のとこまで戻る?」
「いや、めんどーだ。明日またあらためて行くよ」
「必要なものはないの?服とか下着とか」
「そうだな、服は必要だな。スカーレット先生のいる会議室に戻るか。でも面倒くさいしなあ」
「仕方ないわねアンドー君、私のパジャマをかしてあげるよ。部屋の中で待っていて、今取ってくるから。これカードキーね、渡しとく」そう言ってサクラは部屋を出て行った。
部屋の奥に冷蔵庫があったので中をのぞいてみた。
見たことのないパッケージのミネラルウォーターが入っていた。それを冷蔵庫から取り出しキャップをひねり口に入れる。
その水は薄いオレンジの香りがしていた。味はほんのり甘い。井戸からくんだ水のようであった。
それから俺はそのオレンジの香りがする水を飲みほしてしまうとペットボトルをゴミ箱に入れてベッドに横になった。
新しい身体か、と俺は思った。服は制服を着ていた。白い半そでのシャツに濃いグリーンのズボン。
自分の肌は青白く外の偽の太陽を透かすかのようであった。
俺は窓辺に行きカーテンを閉めた。途端に部屋が暗くなる。遮光カーテンだったのだろう。俺は部屋の明かりのスイッチをつけに行った。
スイッチは部屋の出入り口の扉の脇にあった。それをカチッと押す。
部屋が明るくなった。スイッチの上には白、オレンジ、青、赤、緑、自分で色を作る、と書かれたパネルとスイッチがあった。オレンジのボタンを押してみる。
部屋の明かりがオレンジ色になった。電球色に近く、それは電球色よりもほんの少し黒かった。
どうやら自分で色を変えられるらしい。
オレンジ色でいいか、と思って今度は学習机に向かう。そこに座り、引き出しなどを開いてみる。中には何も入ってなかった。
そうしていると、ピンポーンという音が部屋の音に鳴り響いた。上を見るとどこにもスピーカーのようなものはない、おそらく天井の何処かからか出ているのだろうけど。
「サクラだよー」その何処かからつけられたスピーカーからサクラの声が聞こえた。
「今開けるよ」
俺は扉に行き、鍵を外して中にサクラを入れた。
「これ私のパジャマだから、良かったら着て」俺はサクラにふわふわの白い上下のパジャマを受け取った。
「いいのか、俺は男なんだけど、パジャマ貸してもらって」
「いいのよ、アンドー君。遠慮しないで」
「いや、そういう問題じゃなくて」
「アンドー君はやっぱりシャイなのね」サクラはそう言い俺の胸を人差し指でつついた。「これから寝ちゃうの?それとも学校を案内してあげようか?」
「今日はもう疲れたし、もう寝ちゃおうかな。ありがとな、サクラ、色々と。学校の案内は明日お願いするよ」
「わかった、アンドー君。また明日ね。おやすみ」
「おやすみ、サクラ」




