思い出
私は病室へ戻る。
実験への協力なんて、するんじゃなかった…。母親からの虐待が苦しくても、友達がいなくても、いい思い出だってあった。記憶を消されてたなんて嫌だ。人格をコピーして、どんな実験をしたかはわからないけど、きっと、良いことではないだろう。犯罪に巻き込まれたりでもしたら、大迷惑だ。
「私、なにしているんだろう…」
これからどうしていいかもわからず、ただベットに横になっている。このままだと、気が狂いそうだ。もう一回、寝ようかな…。そうだ、眠ればいいんだ。この空間から逃れられる。一時的の現実逃避でも、精神を安定させるにはそれしかなかった。
そして、私はゆっくりと意識を手放す。
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『パパー!』
『美琴。今日は、プラネタリムに連れてってやる』
『ぷらねたぅむ?』
『あぁ、お星様がいっぱいみれるとこだ。静かにしてるんだぞ?』
『うん!』
あれは…。小さい私と……パパ?
あぁ、あの日、初めてプラネタリウムを見に行ったんだ。楽しかったなぁ…。
見た後、えっと…どこに行ったんだっけ?あれ…思い出せない……。
『美琴、パパからプレゼントだ。まだ早いかもしれないけど、大事にするんだよ。』
『パパ、パパ!!!おきて、パパぁ!』
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「っ!……懐かしい夢だったな…」
私の唯一の、楽しい思い出。幸せだった時間。でも、なんでだろう。
「なんで私、泣いてるの…?」
最後の、パパからのプレゼントと、私の泣き声。あれがすごく気がかりだ。でも、泣くような要素なんてない。何で私は今、泣いてるのだろう。意思に逆らって、目から涙が溢れ出てくる。なかなか止んではくれない。その時だった。
ガラ…
「..え?」
あなたが、目の前に現れたのは。