病気
目が覚めると、そこは病室だった。
ツン、と鼻にくる薬の匂いがする。何故、ここに私はいるのだろう。あれはやはり夢だったのだろうか…?家族か誰かが、ここに運んできてくれたのか?しかし、現実とは思えないような、異様な雰囲気だ。すると廊下から、コツ、コツ、と、誰かの足音が聞こえてくる。そして、この病室の前で止まり、扉が開く。
「なんだ、目が覚めてしまったのか…。」
40代前半であろう男性が、私をみてため息をつく。「実験失敗か」そう言いながら、私に近づく。実験…?実験って、一体…。
「美琴、自分の事は、わかるか?」
「はい。えっと、高校二年、神崎美琴です…。」
男性は驚いて、続けて質問をする。「病気の事は、わかるか」と。
病気…?わからない、病気って、私が?
「な、なんの事ですか」
「覚えていない…か。いいか、美琴。お前はある実験台となった。病気だったお前は、我々にとって丁度よかった。お前は、PTSD別名、外傷後ストレス障害という病気だ。」
「ストレス…障害…?」
「あぁ、強いストレスが原因におこる病気だ。」
わからない、覚えていない。どうして…?それと、実験って、何…?なんの実験なの?
「実験って、なんの実験ですか」
「すまんが、それは言えん。覚えていない以上、お前には言えないんだ。」
なに、それ。実験台に使われて、失敗して、なにも覚えてないから言えない…?いくらなんでも、そんなの失礼なんじゃないのか。
私の頭には、次々と疑問が浮かぶ。この後、私はどうなるんだろう。死ぬのかな。
「お前は、ここで病気の治療を行う。心配はいらない。」
心を悟られたように、男性は言う。そうか、なら、大丈夫なのかな…。
「じゃあ、俺は仕事に戻る」そう言って、病室をでる。…病気の治療って、なにをするんだろう。カウンセリングとかなのかな。そう考えていると、眠気に襲われて、私は眠りにつく。