派閥争い
「偶輝さん…話があるので、明日の放課後に少し時間をください…」
唐突に、夢巻ちゃんは私に告げる。
「は、はい。いいですけども…」
私は恐る恐る頷き、明日の放課後を空けておく。
………そして、翌朝。
相変わらず一緒に登校、そして授業を受け、放課後になった。
移動した先は、屋上。
「話って、何でしょうか…?」
それを聞いた時、衝撃の告白をされた。
「偶輝さん…。あなたは、知っておくべきだと思うので話しますが…、この世界は、田駒さんの手によって創造された、敬語しか存在しない世界…。名を、
『滅崩調世界』
と呼びます。略称『UBW』です。」
そう。夢巻ちゃんは『真実』を語り始めた。
「この『UBW』が出来たことで、全ての人類から『タメ口』を奪いながらも、堅苦しい『階級』の概念や『年齢差』の概念も無くし、全年代を平均的にして差別化を無くした、素晴らしい世界を構築…。それを実現したのは、田駒さんが開発した、
『脳回路を操縦する電磁波』
つまり『サイコパス』です。
このサイコパスを利用し、先程の全てを、脳回路の細かい計算を駆使し、実現したのです!」
そこまで聞いたときに私は疑問を抱き、それを夢巻ちゃんに聞く。
「夢巻さん…。なぜ田駒さんは、そこまでして敬語しか存在しない世界を構築したのですか?」
そう、田駒先生が行為に至った理由だ。
すると、その質問をした時、田駒先生…本人が、屋上に姿を現した。
「そんなのは決まっているではない…」
タメ口で話そうとした瞬間、夢巻ちゃんは田駒先生を睨みつける。
それに気付き、田駒先生は敬語で話し始めた。
「……っ、決まっているではありませんか! 年の差を感じて、年上に敬語…。年下には普通にタメ口…。そして呼び方も堅苦しい『様』や『先輩』『先生』…。軽々しい上に、元は女向けの呼び方のハズの『ちゃん』…。私は、それがイヤになったのだ…コホン、なったのですよ…!」
やはりと言って良いのか、敬語がぎこちない。
それもそのはず、感染していないのだから。
だからこそ、苦労せずに『先生』や『先輩』、私達が口に出すことの出来ない言葉を、いとも簡単に発声できている。
『そんなのは人それぞれ、自由です! その日常を奪う必要が、どこにあるのですか!?』
突然、誰かが大声で話し始める。
「誰!?」
私は質問を投げた。
すると、その人物は、姿を現した。
ネクタイの色が橙色なので、3年生。
眼鏡を掛けていて、明るい茶髪セミロング、瞳の色は明るい朱色。身長は175cmくらい?の男子生徒だった。
「私は、瀬賀さんに賛成です。私はタメ口というものが分かりませんが…この世界には敬語しか存在しないけれど、それが逆に堅苦しいとは思いませんか!?」
彼はタメ口の記憶は無いが、実は密かに、私と緋氷先生の行動を尾行していたという。
確かに、彼の語り方は、やたら知っていたかのようだった。
「開発したのは田駒さん。それを隠すために召集したのが、そこの藍戸さんと…」
その続きを聞いたとき、一同は驚愕した。
「…先程から、屋上の入り口の裏側で盗み聞きしている瀬城さん…!」
『ええっ!!?』
私と夢巻ちゃんは、驚きのあまり叫んでしまったが、田駒先生は知っていたようだ。
「まさか、バレるとはな…」
ついつい出たタメ口で、田駒先生は驚いていた。
「この世界の真実は、ここにいる6人しか知らない…。…他言無用だ…」
この時から、世界を揺るがす大戦争が始まろうとしていた…
…とは、まだ誰も知る由が無かった……………