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知る者ぞ知る

 

……緋氷先生と同盟を結んだ翌日。


 私は、いつも通りに登校する。

夢巻ゆまきさん、おはようございます」

どうしてもタメ口で話せない。

偶輝たまきさん、おはようございます」

それは夢巻ちゃんも一緒だった。


「1限目は数学ですね。因数分解は苦手です…」

夢巻ちゃんは、数学が苦手。

「それよりも私は、4限目の体育が一番の苦手分野です。運動不足なもので…」

私は、体育が苦手分野。


そんな話をしながら、陵谷高校に辿り着く。


 今日の授業は、数学から始まって、国語、英語の語学ダブルパンチ、体育…私の苦手分野。そして午後は、物理、歴史。


 無事に体育まで終わり、私は疲弊していた。

「やっと体育が終わりました…。一段落です…」

しかし、こうして休んでいたら昼休み終わっちゃう! 私は、そうして疲れ果てていた身体を頑張って起こし、屋上で夢巻ちゃんと一緒に弁当を食べに行った。


 その時だった。

 目の前で楽しそうに団らんしている男子グループがあり、それに見入ってしまった。

 ネクタイの色からして、3年生の人達だ。

「…」

1人の男子に目が止まった。

 その人には、左目に謎の傷が2つあり、何やらとても朗らかに話していて、私は一目惚れしてしまっていた。

 その視線に気付かれてしまったのか、その男子は私の方に歩み寄ってきて、

「こんにちはっ。…貴女、可愛いですね。彼氏いそうだから諦めましょうか…」

と、いきなり告白じみた事をしてくる。

 さすがにいきなりだったから、驚いて、

「彼氏いないですよ? それに、そんなにモテませんし…」

と正直に暴露してしまう。

 すると、

「そうなんですか…。であれば、よければ僕と、友達からお願いします!」

 そう言い、彼は、握手を求めてくる。

「…あ、わ、私でも良ければ…っ」

半ば緊張しながら、その握手に応えた。


「僕は、瀬城せぎ 隼斗じゅんとと申します。よろしくお願いします」

「あ…私は、瀬賀せが 偶輝たまきと申します。よろしくお願いします」

お互いに名前を教え合い、普通に会話は終わった。


そして、彼が去った後、夢巻ちゃんは私に、

「…隼斗さんと知り合いなのですか?」

と聞いてきたけど、私は、

「いえ、今日初めてお会いしました…」

と返し、一件落着した。


そして午後も無事に授業を終え、部活動も終えて、帰宅。そして就寝した。



……翌日、異変が起きた。

 普通に午前中の授業を終えた後、瀬城先輩が私のクラスまで来て、お昼に誘いに来た。

「偶輝さん! 一緒にお昼に行きませんか!?」

彼も私に一目惚れしたのだろうか。これって相思相愛ってやつ!? 私も彼に一目惚れしたし、そうとしか思えない!

 とても浮かれた気分で、私は先輩と一緒に屋上へ行き、お昼を共にした。


 すると、思いがけない質問が来た!


「…偶輝さん、敬語以外の言語“タメ口”を知ってる人間ですよね?」

なんと、瀬城先輩はタメ口を知っていた。そして、私が知っていることも。

「知っています。…瀬城さん・・も知っているのですか!? タメ口を…」

「知っています。そして、私は…


 タメ口が嫌いです…」


そう。瀬城先輩はタメ口が嫌いな人だった。

「な、何故です!? タメ口は…」

そう言いかけた時、先輩は口を挟み、


「あんなに馴れ馴れしい言葉は不必要です。タメ口なんて存在したから、年上の人は偉そうにするんですよ。そんな年齢差を感じさせないためには、例え年上でも、年下に対して敬語を使えばいいと思っていました。…今、それが実現している最高の時間なんですよ!!」


年下の人間にさえ敬語を使うようにすれば、年齢差を感じずに過ごせる、と主張した。

 もちろん私は反対し、


「タメ口は、年下に対して…ではなく、同い年の方々、そして友達や家族には使ってよかった言語ですよ!? 年齢差によって口調を崩すのは、年上だから・・・です! あれはタメ口とは言いません!」


と、タメ口は友達や家族へ使うものだということを主張する。が、しかし、


「それこそ不必要です! そうして馴れ合うことで、年齢差の概念が出来てしまうのです。分かりますか? 若者にしか通じない言葉、大人の方々しか分からない言葉、昔の言葉…そうして存在してしまうからこそ、年齢差が存在してしまうのです! であれば、全ての言語を統一して、敬語のみで過ごせば、ほら…問題解決するではありませんか!!」


敬語に対して熱弁し、私を説得しようとする。

私は、その熱弁に対抗を見せた。


「しかし、年上に対して敬語を使えば良いではありませんか! 年齢差は誰でも感じる必然。それは生きてる中で必要であり、日常です! 敬語だけの世界なんて、かしこまりすぎて堅苦しいですよ!」


そこまで言った時、昼休みの終わりのチャイムが鳴り、


「…続きは、また明日ですな。僕は、偶輝さんの考えが私に寄ってくれることを祈ってます…」

どうしても私を説得したいのか、そう言い捨てて私の前を去ろうとした。が、

「私は、瀬城さんの考えが私に寄ることを祈ってます…。タメ口は必要ですよ…」

と最後に言い捨て、屋上からは、私が先に去った。


 今回の論争で、気付いた事が1つある。

 私は何度も“瀬城先輩”と呼ぼうとした。でも、口から出てきた呼び方は、


“瀬城さん”


だった。

 つまり、年齢差を感じさせないように、“先輩”などの堅苦しい呼び方を封じて、“~さん”で統一させようとしている。この元凶である何かが…。



……瀬城先輩と私の間で、敬語とタメ口に対して言い合いすることになるとは…

そして、この“敬語世界”が誕生してしまった元凶は、いったい…。


私は、それを緋氷先生に報告した後、緋氷先生と作戦会議をし………ーーーーー


 

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