粛清
時刻は午後4時32分。
窓の外では赤い夕焼けが見え、カーカーとカラスの鳴き声が聞こえる。
「望、こんな事言うのも何だけど、正直言って俺はお前の事が嫌いだ」
「…は?」
開口一番、武の爆弾発言に望は目を見開いた。
「あん時は何も責めなかったけど、許すとは一言も言ってねぇんだよ!! 俺たちの身も心もズタズタにしたお前には、その罪を償ってもらうからな!!」
そう言うと、武はサンドバックを殴るように望の身体に何度もパンチを放った。
望は短く呻き声を漏らし、金魚のように口をパクパクさせている。
武はというと、復讐ができて嬉しいのか、唇を歪めて不気味な笑みを浮かべている。
普段はクールで面倒見が良く、先輩からも後輩からも好かれている武。
そんな彼が、こんなにも過激な姿を顕にしている。
この光景を見て、彼の事をよく知っている人でも武だとは思わないだろう。
確かに、奴はこれまで幾つかの問題を起こしてきた。
武は、ある時望と口論になり、逆上した望に階段から突き落とされて病院送りになった。
僕は、俺の想い人を横取りした罰だと脇腹を何発も何発も殴られたり蹴られたりして、食べた給食を戻した。
そして、人がいる教室でオ○ニーを無理矢理させられた。
もう、望を許す理由なんてどこにもない。
僕は武に協力する事にし、望に制裁を加える事にした。
冗談でも何でもない。本気だ。
「武、もういいだろう。次は僕がやるからな」
「はぁ…はぁ……わかった」
武はシャツで汗を拭い、息を切らしながらもクールな笑顔で頷いた。
僕は筆箱からカッターを取り出し、望の口に指を入れて舌を引っ張った。
「望、お前はよく嘘をつくし、平気で約束を破るよな。だから……いっそのこと、舌を切ろうか?」
「え……」
チキチキチキ、と無機質な音をたててカッターの刃が出る。
望はすっかり怯え、身体をガタガタと震わせていた。
「ふざけてんのか……」
「別にふざけてないぞ。僕たちはマジだからな。たっぷりと血を流してくれよ。うひひ…」
「は、隼人…許してくれ……」
「嫌だね。今までした事を振り返ってみろ。悪人は、それ相応の報いを受けなきゃ、な!!!」
ザクッッッ!!!
「ぎゃああああああ!!!」
耳を塞ぎたくなるほどのけたたましい悲鳴が部室中に響く。
望の舌は見事に真っ二つに切れ、辺りは赤黒い血の海と化した。
望は口から涎と血をだらしなく流し、床にぐったりと倒れ込んで気を失った……