第三話
俺も足が震えて座り込みそうだったのを抑えてクルミのそばに行った。
「大丈夫か?」
クルミは涙目で俺の目を見た。
思わずそらしそうになる。
人と目を合わせるのはもともと苦手だけどこいつには特別弱い。
顔が熱い。
本人は無自覚だろうけど、そういう顔はやめてほしい。
ほかの男だったら襲われてたぞ。
赤くなっているだろう顔がばれないように口元を隠した。
「タツオ・・・私大丈夫かなぁ・・・」
「大丈夫。俺が守る。」
言った後にまた顔が熱くなった。
自分で言っておいて恥ずかしくなる。
何言ってんだ俺・・・
馬鹿にされると思ったけど、クルミは涙をぬぐいながら笑った。
「やっぱりタツオはかっこいいね。」
こいつはいつもそうだ。
こんな俺にいつもまっすぐな心をぶつけてくる。
違うやつが言ったら疑うようなこともクルミが言うと本心だと思える。
顔を隠しながらクルミを支えて立たせる。
もうゲームが始まるまで十五分となっていた。
早くあと三人を見つけないと。
でも俺達には仲間になってくれるような人がいなかった。
周りにはもう五人集まっているところがちらほらと出ていた。
二人で歩いていると、ドンっと何かが足が当たった。
当たったほうを見るとちいさい男の子が見えた。
さっきの衝撃はこいつが足にぶつかったからか。
そいつは十歳くらいの男の子だった。
そいつは俺にぶつかってから一切動かない。
「お前どうしたんだ。迷子か?」
俺は小さいやつが苦手だ。
でもこうやって離れないなら話しかけるしかない。
そいつは顔を上げた。
まだあどけない大きな瞳が俺を映した。
今まで周りに俺と同じくらいか年上の奴しかいなかったけど、そうか、十歳から三十歳だから小学生の奴もいるのか。
それにしても意外とかわいい顔してんな。
「なんだよおっさん。迷子なわけないだろ。」
・・・は?
今こいつが言ったのか?
かわいいとか言ったの前言撤回。
やっぱりガキは生意気で嫌いだ。
「お前・・・ふざけんなよ。まだ十七歳。おっさんじゃねえよ。」
「おっさん。」
「っこいつ・・・!」
「待って!相手は小学生だから!」
殴りかかろうとした俺をクルミが止めた。
「ちっ・・・」
仕方なく振り上げていた腕をおろした。
「お前、もう一回聞くけど、大丈夫か?迷子か?」
「知らない。」
ふいっとそっぽを向くこいつにまた腹が立ったが、クルミがいるので、なにもしない。
「とりあえず一緒に行こうか。歩きながらお母さんとお父さん探そう。」
クルミがガキに手を差し伸べる。
そいつは素直に手を取った。
なんだよ。クルミには素直なのか。
「俺たちもあと三人探さなきゃいけないのに、こいつの親なんか探してる暇ないだろ。」
歩き出した二人を追いかけて、クルミの横に並ぶ。
「なに言ってんの。この子も一人なんだから。」
「いいか、ガキ。あと三人見つけたら、お前は一人で親探すんだぞ。」
俺はガキを指差して忠告した。
「最後は僕に泣きつくと思うけどね」
「はぁ!?」
つくづく生意気なガキだ。