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今日から学校と仕事、始まります。①莞

裏切京子の身体検査

作者: 孤独
掲載日:2016/01/31

裏切京子は人間ではなく、化け物である。


「というわけですので、あなたのお力を借りに来たのです」


 こじゃれたリボンを髪に付け、頼みごとをするには少々上から目線の強さが際立つ。この人の命令に応えたいという気持ちを持つ、M男にはそれが好感度の高さに繫がる。

可愛いよりも綺麗な方に意識が高い顔の作りだが、胸の小ささと身長の低さがとても勿体無い状況。しかしながら、彼女が着ている服は紛れもなく、セーラー服という学生服。即ち、彼女はまだ発展途上の女性であるのだ。


「明日、私は」


長くて清潔な白いニーソ、絶妙にパンツを隠してしまう位置になるほどの紺色のスカート。両足の締まり具合、下半身へのガードの薄さには眼をやってしまう。前から見ても、後ろから見ても良い。

小さい胸の膨らみを増させるような、紅い胸リボン。


「身体検査なのです」


もうちょっとだけ、背が高ければ女王様が似合う。良いとこ育ちのお姫様といったところの顔と姿を持つ、それが裏切京子。


「そうなんだ、裏切ちゃん」

「”そうなんだ”とはなんですの!?私のことをホントに知っているのですか!?ミムラ!!」


その裏切と対峙している年上の女性、沖ミムラは足につきそうなほどの長い黒のツインテールが特徴的。ホットパンツとTシャツという寒そうにしか思えないほどの薄着な格好。無関心そうな声を出しながら、ポッキーを食べている姿は可愛らしい。現在は女子大生として過ごしている。

裏切と比較すれば、背と胸はある方に見えるし、露出している度合いから言って目に惹きつける率はヤバイ。本人はかなりの暑がりであるため、だいたい薄着である。


「私はあなた方と違い、体の構造が違う怪物なんですのよ!!検査されたらバレるじゃない!私が人間じゃないということが!!」

「大声で言ってるんだけど?裏切ちゃん」


美人2人と言わせて欲しいとのこと。(たぶんな)

そんな女性2人はお互いが認める、正真正銘の怪物である。


「自分でバラしてるんだけど。ついでに私もだし」


沖ミムラ。”天運”の持ち主。形と命、種族こそ人間であるが、超常現象を上回る神秘の運を持つ女性。


「悪かったですわね!でも、あなたの実力をしかと調べてからですわ!本来ならば広嶋様にご協力を願いたいのですけどね!」


裏切京子。人間の姿を持ちながら、その中身はおぞましさと奇奇怪怪な異形生物。地球が生まれではなく、異世界から地球の日本、宮城県に移住してきた怪物女子高生。”裏”という能力で何もかも覆す力を持つ。


とある飲食店での叫び声だった。

裏切が大きな声で正体を周りにバラしているだろうが、それらを信じる人はいくらいるだろうか?

また、その前から2人の目のつく容姿に意識を向けているお客様や店員もいる。


「だからって大声は良くないよ。周りの人達に迷惑だよ」


今の言葉はミムラが言った。もう一度言う、ミムラが言った。

その次の瞬間に、裏切とミムラ以外には忘れられない思い出となるだろう。または不幸となるだろう。


厨房からいきなり沸きあがる、濃厚な煙。火事と思わせるほどの濃さであった。



「火事だーー!」

「皆様!ここから逃げてください!!」

「大爆発の恐れがあります!」

「落ち着いて出てください!!」


店員、客。口元をハンカチで覆い、厨房からやってくる煙から逃れるように出口に向かっていく。一瞬のパニックに対して、周りは不思議な事に冷静な対応をしていた。

幸いな事に怪我人などは現れなかった。


「あなたの仕業ですね?」

「酷いよ!別に私が狙ってやったことじゃないんだから!何が起こるか分からないだけだもん!」


裏切の言葉など、周囲の人間はすぐに忘れるほどのアクシデントだった。どうやらかしたのか本人にも説明不能なのが欠点であるが、これがミムラの”天運”の力。

ミムラの力で自分がただの人間であることを証明して欲しいと、思っている裏切であった。



◇  ◇


身体検査とは。


身長、体重、胸囲、座高、心音、視力、聴力、血圧、血液、体脂肪などなど。体に異常があるかどうか、どんな状態なのかをチェックするものである。


「外面的にはどうということはないですけど……」


人間の外面であるため、それらのチェックで裏切が人外であることが漏れる可能性は低いだろう。学校生活からバレたことは一度もない。

問題は血圧、血液、心音のチェック。体の内側を調べられたら人間じゃないことが確実にバレてしまう。そうなればどうなるだろうか?自らの力で、この楽しい生活を捨ててでも抗い続けるか。潔く捕まることを選ぶか。私は……この体を持ちながら、楽しい生活を過ごしていたい。

とはいえ、バレなければ良い。なんとかなさい、ミムラ。


体操着姿で身体検査に臨む裏切。救援を頼んだミムラがどのようにこのピンチを掻い潜ってくれるか、そもそもやってくれるのか怪しい。


「えー、では身体検査を始めます。しっかりと先生には挨拶するように」


いよいよ、身体検査の時間。男子は体育館で、女子は保健室で行なわれる。女子が辱めている姿を観られない男子にとっては悔しいことだろう。しっかりとカーテンで窓は覆われている。


「次、裏切さんどうぞ」

「は、はい」


出席番号順であるから、裏切は比較的に早い方だ。すぐに呼び出され、緊張しながら保健室に入っていく。


「裏切ちゃんですね。では、身長と体重から図りましょう」

「……………」


しかし、その緊張が一気に解き放れる。検査を行なう医師の姿がもうすでにあれなのだ。白衣に包んで、伊達めがねをかけながらも。その目立ち過ぎる長すぎる黒のツインテールを持つ女性。断言できてしまう。


「そうきたのね!?」

「何がですか!私は沖ミムラという者ではありません!三村先生というバッヂが見えないのですか!?」

「まだ何も誰とは言ってないじゃない!!でも、ミムラじゃない!」


”天運”の力を持ちながら、検査する医師に成り代わってくるというシンプルな手段で助けに来たミムラであった。


「一度医者になってみたかったの」

「その理由で医師をぶっ飛ばしたの?」


とはいえ、助かった裏切はホッとしながらミムラに誘導されて身長と体重を量る。


「ほうほう、裏切ちゃんって思ったより背は小さくないよね?」

「そうでしょ!」

「体重は普通なんだね。意外」

「あ、当たり前じゃない!というか重いと思っていたの!?」

「胸は私より小さいよね?」

「量る前に言うな!そーいうあんたも大きい方じゃないでしょ!?」


知り合いに検査をされると結構腹が立ってくる。自分の数値を楽しそうに記入しているミムラを見ていると余計に感じる。


「というか、ミムラ1人なの?」

「だってその方がバレないでしょ?4人くらいいたみたいだけど、インフルエンザで寝込ませちゃった。安静してれば治る程度だからその心配はしないで」


凄く効率が悪い。普通は流動的に検査していくものじゃないかしら?そして、サラッと担当する医師達にインフルエンザを発症させるミムラの”天運”。恐るべし。

だが、使い方がアホ過ぎるところも恐るべし。そんな大掛かりじゃなくてよくない?インフルエンザに、程度なんてあるのか?


「次は聴診だね。上を脱いで」

「こ、こうかしら?」


ちなみに聴診は服を脱がなくても大丈夫です。裏切は異世界人であるため、そのことが良く分かっておらず普通に脱いだだけである。ミムラがまったくの医療に関して素人だということを認識していない。正面から裏切の胸をちゃんと見て、ミムラは少し羨ましい顔をする。


「形は綺麗だね」

「なっ!?」


からかっているのか、本心なのか良く分からない。しかし、ながらミムラは少しムッとしながらテキトーに聴診を行い始める。

裏切の前に人を聴診しているため、その区別が素人のミムラでも分かるほどの違いがあった。


「全然、人間が違うんだね」

「ば、ば、化け物で悪かったですわね。これじゃあ、広嶋様も好んでもらえませんもんね」

「そんなことないと思うけど」


聴診を終えて、ふと思ったことがある裏切。


「あなた、どうやって調査書に書くの?異常とか分かるの?」


そんな今更に訊くのかと思うほどだった。しかし、ミムラは


「テキトーに書くよ。病気は悩むことから生まれるからね。みんな、健康体でしょ?身体測定とかを間違えなければ良いんじゃない?」

「あなたが言うのなら、なんか大丈夫な気がした」


聴診は確かにそれで行けるのだろう。しかしながら、ミムラが


「次は血圧と採血をするね」


注射器を持っていると、不安が一気に走った。それはとてもテキトーにやってはいけないだろう。


「あなた、どこに刺すか分かっているんでしょうね!?」

「血管に刺せばいいんじゃないかな?」

「なんで疑問文!?」

「分からないけど、たぶん大丈夫だよ。裏切ちゃんの前の子もテキトーにやって血抜きが出来たから」

「ダメ!あなたは医者をやってはいけない!!人間じゃない私でも言える!」

「そんなー」


別に注射が怖いわけじゃない。素人が注射を握って、どこに刺せばいいか考えている目をしていたら、不安が走るに決まっている。


「10秒、目を瞑っていれば大丈夫だから。腕もまくってちゃんと出して」

「できるかーー!」


裏切の必死な声であったが、ミムラもミムラなりの考えがある。このまま裏切を相手にしている時間が長くなれば、待っている生徒達が可哀想だ。廊下って結構寒かった記憶がある。


「しょうがないから、裏切ちゃんに無理矢理させちゃうよ」

「!?」


注射を嫌がる子に無理矢理させるには力だ。一見すれば、ただの女性のように見えるミムラであるが、その強運だけでなく身体能力も相当なものを持っている。

怖がり嫌がる裏切を素早く取り押さえて、注射を腕に打ち込もうとする。


「ひゃっ」


裏切は強く目を瞑った。助けを求めようとしたら、殺されそうになった。

1,……2,……3,……4,……5,……6,……?

しかし、痛みがない。一体、何が起こっているのか。


「はい、終わり」

「え?採血したの?」


恐る恐る眼をあける。もしかして、注射をしたフリとか?


「よく分からないけど、裏切の血を抜いたよ。血は見た感じ、人と変わらないんだね」

「本当にどうやって私から血を抜いたのよ!?まったく痛くないから、ホントに怖いんだけど!あなたって怖い!」


注射器に自分の血が抜かれて入っているところをしかと見てしまうと、本当に不安ばかり。こんな人物がクラスメイトの女子全員の身体検査を行なうというのか。

ともあれ、ミムラが医師を担当してくれたから調査の方は問題なくすり抜けられそうだ。


「検査結果は全部健康体で良いね」

「それで本当にいいのかしら?クラスメイトには悪いことをしてしまったわ」

「お大事ね、裏切ちゃん」

「あなたがみんなをお大事にしなさい」


こうして身体検査を乗り越えた裏切であった。



◇   ◇


後日談。


「私、医者を目指そうかなって思ったよ」


初めて医者のような仕事をしてみて楽しかったミムラは、初めて夢らしいことをみんなに語ってみた。


「やっぱりさ。みんなを救うって気分良いよね」

「そうね」

「特に元気な姿を見るとこっちも嬉しくなっちゃう」


ふと思ったが、あれは医者の仕事だとは思うが医者らしくはないと考える裏切の方が人間らしかった。


「医者になって色んな病気を治せる人を目指そうかな。大学全然関係ないけど」


ミムラが医者?それを知った裏切、そして2人の仲間達は次々に深刻かつ、恐怖を感じて言う。


「医者は止めなさいミムラ!」

「止めてくれ、……なんとなくオチが見える」

「世界中に病魔が流行って、ミムラさんがいなかったら治らないような世界になりそうです!!」

「俺達が患者になる前にお前を死者にするぞ」


そして、特にミムラの被検体にされた裏切は彼女に銃口を向け、刺し違えてでも止める。


「あなたは絶対に医者になってはいけません!!」


才能がないというより、単なる興味で進路を決めてはならない。それが相手を傷つけることもあるのだから。仮にミムラがここで泣いて苦しんでも良い。

今の安全と安心、平和のため。周りが平和になっていく世界を、望むことを拒む裏切達であった。


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