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神殺しの王となる。  作者: 唐松あせび
一章 モハナト革命
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七話 青い蜂 3

 その後も草の中に隠れたり、木の裏手に隠れたりを数回繰り返し、ツヅルとツシータはお互いに協力し合いながら着実に目的地へと進み、何とかクリーム草原の周りにある林に辿り着くことができました。

 ツヅルも「浮遊」の魔法を使いながらの魔物との戦闘に慣れてきたのか、動きが中々に洗練されてきましたのですが、もう既にツヅルが立案や指揮を担当し、ツシータが動くという基本的な戦術が「アーテル」間で出来上がりつつありました。

 それほどツヅルとツシータの戦力差は大きいのです。共に戦おうとしても彼女の極めて俊敏な動きにツヅルが着いて行けず、結局、後方で邪魔をしないように不動でいるしかありません。

 ツシータは人間よりも大分優秀な運動能力を持っていながら、クラリスから教えられた剣術などをきちんと吸収しているので、すさまじいポテンシャルを持っているようです。

 もしかしたら、僕が切り捨てられることもあるかもしれないな、とツヅルは苦笑しながら思いました。




「チキチキ! クランアーテル第一回なんか色々対策会議青い蜂編第一節~!」


 モハナトから出て実に2時間と30分の時が経過した時、クリーム草原を囲っている林の中でツシータは可愛らしく会議の開始を告げました。


「さぁ、ツヅル参謀長、青い蜂の特徴を分かりやすくアタシ(もとい)聴講者諸君に聞かせたまえ!」

 

 ふふん、としたり顔しながら彼女は腕を組み、聞く体勢をとりました。

 どちらもツシータのことを指しているぞ、という言葉は飲み込みます。


「驚異的な攻撃性を持ち、喰らうと死に至る可能性がある程の高い毒性を保有しているらしい」

「………」

「………」


 ツヅルが一言で淡々と述べると、しばしの沈黙の時が流れていきました。


「……それだけ? なんか対策とか弱点とかないの?」

「ああ」

「……よし特攻しましょう! これにて議会平定!」 

「でも、予想だが青い蜂は100匹くらいはいるんじゃなかろうか」

「パ、パチパチ! クランエッジ第一回何か色々会議青い蜂編第二節~!」


 彼の一言により、開始から1分も経たずに終了した会議は1分も経たずに開始されました。

 ツシータは現実を直視できない破産者のような眼差しで、


「じゃあ、ツヅルの浮遊でやっつけてもらいましょう。うん。それがいいわ」

「あ、いい忘れていたけど大きさは通常の蜂よりも若干小さくてすばしっこいらしい」

「……もういいわ! そんなに意地悪をするなら、ツヅルが決めてよ! でも忘れないように、アタシはツヅルより一個上だからね!」


 どうやらツシータは年上振りたかっただけのようです。

 この言葉を投げかけられたツヅルは何も言葉を返さずにこめかみを叩きながら、いかにして青い蜂なるものを打倒せんとするかを考えます。

 モハナトを出てからずっと青い蜂対策を考えていたツヅルが何も思いつかなかったのは、とあるジレンマが原因でした。

 当たり前のことですが、青い蜂は針で相手の体内に毒を注入するという方法で攻撃してくるため、近寄って戦うのは危険です。

 しかし、その小ささ、俊敏さから近づかなければ攻撃が当たらないことも理解できるでしょう。

 それに遠距離戦闘はツシータがあまり参加できないことも相まってかなり時間が掛かることが予想されます。もし夕方、夜の戦闘に入ったら視界不良から危険です。

 つまりは、攻撃を当てるために身の危険を冒して近づくか、身を守るために遠距離を保つかというジレンマがあったのです。

 退却するのも一つの手か、とも思いました。がしかし、この時ツヅルは思いつきました。 


「……そうだ」

「ん? どうしたの?」


 突然声を上げた彼の方を向いたツシータは何気なく聞きます。振り返ると、ツヅルはたった今思い付いた作戦を語りました。


「作戦が浮かんだ。まず夜まで待機する。次に花畑に潜入し巣を探しだし、最後に巣の中にいる青い蜂を火属性魔法で巣ごと燃やし駆除する。これでどうだ?」

「ちょ、ちょっと待って!? どうしてそんな作戦が出てきたか聞かせてくれる?」


 昨日今日の付き合いであるツシータはツヅルをまだ信用できていないようでした。まぁ、ある程度親しくとも命が懸かっているときに、人の考えた作戦を無条件に受け入れられる者はあまりいないでしょう。

 彼は思い至った過程を喋り始めます。 


「冒険者ギルドの掲示板にあった『種類の違う蜂をも殺す凶暴性』という記述から、初めて青い蜂がクリーム草原に出現した時――つい最近のことだろう――に、一般的な蜂の死骸がかなりの数発見されただろうと僕は最初推測した」

「当たり前ね。でもそれで?」

「青い蜂が現れ始めた頃から一般的な蜂の死骸が増えているのだから、そいつらが殺したのはもちろん確信できる。

 ならばどこに青い蜂の巣があるのか、それを考えなければならない。

 まず、ずっと以前からこの草原の近くに巣があったということはおかしいだろう。何年か前からクリーム草原の近くに巣はあったが、今になって急に蜂を殺し始めるという可能性はなくもないが考えにくいからな。

 また、もしも青い蜂が気候の変化により各地を集団で放浪する生物だとするならば、モハナト付近の地形、環境をよく知っているはずのベラストミン採集会という組織が全くそれらに対しての知識がなかったことがおかしい。即ち、巣はある程度近くにあることが分かるし、これはこの蜂が新種の魔物であることを表している」


 ツシータは首を捻りました。


「でも、たまたま偶然遠くからここに大勢で寄っただけということも」

「それならもう1週間以上もやつらが滞在していることに違和感を覚えるな。もし、青い蜂が巣を作らないタイプの蜂だった場合、僕の作戦は根底から崩れていくのでそれは考えないことにしよう。それに生物である程度の休息は必要だろう?」

「あ、そっか。巣が帰れるところになきゃ、それだけ滞在できないわね」

「次に、青い蜂は少なくとも昼行性ではあるから……」

「ち、ちょっと待って! なんでそう言い切れるの?」

「依頼文から推測すると、どうやら蜂は刺された人の過半数は採取会に所属している人間らしい。彼らがこのクリーム草原に何のために来ていたのだろうか? もちろん、それは採取のためだろう。そして、採取なんてものは基本的に夜にはやらないのが普通だ。だから、モハナトとクリーム草原との距離から考えて、彼らが青い蜂に刺されたのは昼前後ということになる」

「なるほど。それにしても、少なくともって?」

「昼夜問わず動けるかもしれないからな。だから少、なくとも昼には動けるということが分かっている。まぁ、巣があると決めつける以上、夜には巣の中にいるはずだとしなければならないけど」


 これがツヅルが青い蜂討伐のために頭脳を使った結果でした。巣が近くにあって昼行性である、ということしか分かっていないのですが、それだけ分かれば作戦は立てれるのでよしとしましょう。


「でも、もし青い蜂が巣を作っていなかったり、昼夜問わず動けたり、火魔法が効かなかったりしたらどうするの?」

「死あるのみだな」

「えー……」


 無策で突然するよりはマシかな、とツシータは思いつつも、この作戦の危険性に思わず非難の声が漏れてしまいました。


「……アタシにはそれ以上の作戦が思いつかないしそれにしましょう。でも、火属性魔法はどうするの? アタシはそんなに回数が多くなければ使えるけど、ツヅルは覚えていないでしょう?」

「幸い時間はある。今は11時ぐらいだから、夜までに火属性でなるべく範囲の広い魔法を今から覚えよう」


ということで、ツヅルたちは作戦開始時刻になるまで、林を出て少しのところにある岩場で魔法の鍛錬に勤しむことにしました。


「範囲が広い簡単な火属性魔法といったら『火炎波(かえんは)』ね。アタシの体内魔力でも10回は使えるぐらいの、ある程度の冒険者ならほぼ全員が使える魔法だわ」


 ツシータのこの言葉に従い、「火炎波」の練習を始めました。

 火属性魔法の特色とはいつか言った通り、使用用途が多いことにあります。

 特に有名なのは、最も人類が習得している数が多い魔法である「火球」や熱によって様々な物を溶かす「炎溶(えんよう)」、炎を槍の形にして刺突性を追加したことにより攻撃力を高めた「炎槍(えんそう)」、火によって壁を作り、木が用いられている矢などから守る「火壁(かへき)」などでしょう。

 この「火炎波」は基本的に対単体として生まれた魔法が多い火属性魔法にしては珍しく、複数の敵を目標としたものでした。

 その鍛錬の風景は「浮遊」のときと相違ないものだったので略させて頂くとします。

 結局、彼は「火炎波」を無事習得し終えました。

 まだ日は沈みかけてもいなかったので、光属性魔法の周囲を明るく照らす「光明」や自分の俊敏性を一時的に上げる「俊敏」など新たに2つの魔法もついでに覚えることにしました。

 



 そうこうしていると次第に日が茜色に染まってきたので、ツヅルたちは林の中に戻ると、青い蜂との戦闘の恐怖を紛らわせるために会話をしていました。


「ツヅル、大丈夫……? この戦闘怖くない……?」 


 ツヅルの手を強く握りしめ、風で樹の葉がカサカサと揺れる音に体を震わせながらツシータはそう呟きます。

 問い掛けられたツヅルはそんな可愛らしいツシータを見て逆に冷静になりました。大丈夫だ、と手を握り返します。


「ツヅルは優しいわね」


 無造作に生えている木々の隙間に見える既に暗くなっている空を眺めながら、ツシータは安心した表情で言いました。

 

「アタシ、死は怖くないわ」


 彼女の急な言葉に驚きながらもツヅルは、


「僕はまだ1日とはいえ友人であるツシータの死亡の知らせを受け取るのは嫌だからな」


と微妙な言葉で説得を試みます。 

 これを聞いたツシータは嬉し恥ずかしそうに顔を赤くしながら微笑んで、


「アタシもあなたが死んじゃったら寂しいわ。アタシにはツヅルとりーちゃんと……、3人しか友だちがいないから」


と言いました。

 そんなこんなで、もう日は暮れていました。世界全体が闇に飲まれたのかと勘違いするほどの暗さは、街灯やビルの明かりになれたツヅルに違和感を与えました。ツヅルが先程覚えたテニスボール程度の大きさの光の球で辺りを照らす「光明」が無ければなにも見えません。


「何か……緊張するわね……」


 ツヅルたちは意味のない忍び足をしながら花畑の中に入りました。

 「光明」を使っても10メートル先まで見えないほどに暗い、このクリーム草原ついて語れるのは冷たい風が吹いていることと、歩くたびに左右には全く見たことのない種類の花が見えること、一般的な黄色の蜂の死骸がそこかしこに転がっていたことくらいでした。

 

「ねぇ、ここ相当広いわよ。青い蜂の巣はどうやって探すの?」


 人が通れる程度には舗装されている花畑を歩きながら、彼の手を未だ離そうとしないツシータは囁き声で呟きます。

 もしかしたら青い蜂がまだ活動しているかもしれない、と彼女は恐怖しているようでした。

 しかし、彼らがもう5分も蜂の死骸がある道を歩いているのに、攻撃性が高く縄張り意識も高いであろう青い蜂が1匹も姿を見せないことから、恐らくツヅルの予想は当たっているのでしょう。

 しかし、そんなことも気づかずにツシータは、ちょっと声を掛けるだけでもビクッと体を震わせるほどに怯えていました。


「そいつが蜂の習性を持っているのなら、木の根元か枝の部分だろうな」

 

 春の夜の湿気が多い寒さに若干の心地の悪さを覚えたツヅルは、肌にくっつく布の服の袖を掴みながらそう言います。

 その言葉にツシータは頷くだけで返事をせずに、辺りをキョロキョロ見回したり足元の蜂の死骸を見たりと、巣の場所の情報を集めに掛かりました。


「ねぇ、何か虫の死骸の量がこの草原の入り口よりも増えてない?」


 そして、唐突に気付いたことをツシータは口にします。

 確かに、最初は道端に蜂が数匹転がっていただけなのに、草原の中心に向かっていくと段々花畑で生息する虫の死骸の量が種類問わず多くなっていることにツヅルは気付きました。

 凶暴な動物や昆虫というのはどの世界にもいるものですが、ところで、何故その生物たちに凶暴性が備わってるのでしょうか。それは食料確保か防衛反応のせいでしょう。

 無駄に生物を殺すことのある人間とは違い、生きることに必死な動物たちはわざわざ理由もなしに生物を殺すことはあまりないのです。

 つまり、青い蜂の虐殺は食料確保か防衛反応、どちらかの理由が存在すると考えると、


「食料確保のためならば死んでいる虫の死骸が食い散らかされずに放置されているのはおかしい、ということは……」


 虫の死骸が一番多い場所は防衛反応が最もよく働く場所、即ち青い蜂の巣付近だと予想できます。

 そうと気付いたらもう後は足を動かすのみです。2人は虫の死骸が多い方向へと早急に進みました。もしツヅルの魔力が残りわずかとなって、「光明」が使えなくなったら生きる望みはありません。

 時には一直線に進んだり、ジグザグに進んだりしながら、どんどん先へと急ぎます。


「巣を見つけたら、僕とタイミングを合わせて、反対側から燃やしてくれ」


 そういえば伝えていなかったな、と作戦の詳細を隣で小走りしているツシータに若干息を切らしながら伝えました。


「失敗、しないのよね?」


 少し心配そうな表情を浮かべて彼女は言いました。

 まともに戦ったら勝てるはずのない集団の本拠地に攻め込もうという大胆な戦法なわけですから、その不安を感じるのも無理もない話でしょう。

 



 クリーム草原突入から25分後、たまにある生き物の死骸で足の踏み場がないほどの道を歩む時の気色悪い感触を堪えながら、ツヅルたちはついに中央西付近の1本突っ立っている大木の幹に青い蜂の巣を見つけました。

 それは、遠目で見る限りは普通の蜂の巣の大きさとも変わらず、肝心の青い蜂が巣の付近で飛んでいる様子は見えませんでした。

 虫の死骸が散らばっているこの地面のことを無視できるとするならば、この巣から世にも珍しい青い蜂が這い出てくるなんて思いもしないほどには普通の蜂の巣です。


「それじゃあ、いくぞ」


 風で木の葉の揺れる音が何とも言えぬ恐怖感を煽り立ててくるのを押さえつけると、ツヅルはそう呟き、ツシータと巣を挟んで反対側に立ちました。

 ツシータの姿が闇に隠れ、ツヅルも「火炎波」を詠唱するために「光明」を消し、ついにその場所には爛々と輝いている星のみが残されます。

 月に似た衛星が2つほどこの星にもあるようですが、残念ながら雲に隠れていてその光を役立てることはできそうにもありませんでした。

 ツヅルが目を閉じてイメージを膨らませると、赤色の魔法陣が浮かび上がります。やはり、魔法陣にはアルファベットの文字が連なっていて中央には「Flame wave」という単調な英単語が浮かんでいました。

 「火炎波」は「浮遊」のように詠唱の速い魔法ではありません。魔法に慣れているとは言い難いツヅルは30秒は掛けて、火の波がこの青い蜂の巣がある大木を中心とした広場全体に広がっている光景を想像し、呟きます。


「『火炎波(かえんは)』」


 その魔法はまさに火の洪水と表しても過言ではないほど、標的を定めず火の波が周りに雪崩のように広がって行きました。

 ほぼ同時に放たれたツシータの「火炎波」とぶつかり波打ちながら、様々なものを飲み込んでいきます。

 いよいよ葉に燃え移りクリーム草原全体を照らすような光源となった大木、もはやどういう種類の虫だったか分からなくなった死骸、色とりどりの赤色の花、そして火に包まれている青い蜂の巣。 

 しばらくその光景を見ていると、濃い青色をした蜂のような姿の虫が何匹か巣から外へ出てきました。 

 さすがに一気に全滅されるのは無理か、とツヅルらは逃亡する覚悟をしていたのですが、まさに青い蜂という名前に相応(ふさわ)しいその虫たちは、燃え盛る炎の中に沈んでいきました。


「別に怖がる必要はなかったな、ツシータ」


 ツヅルはツシータの元に駆け寄りそう煽ると、彼女は顔を真赤にして、


「べ、べべ、別に怖かったわ、わけじゃないわよ!」


と、噛みながら早口で叫びました。

 



 当然、来たからには帰らなければなりません。ツヅルたちはクリーム草原から出て、林を抜け丘を抜け云々としている内に次第に街の明かりが見えてくる所まで来ました。23時からは完全に門を締め切ってしまうのに東門にまだ馬車が並んでいるのが見えたので、まだ21~22時程度でしょう。

 ツシータは全然疲労してなさそうな様子でしたが、慣れない肉体労働をしたツヅルは気を抜くと眠ってしまいそうな意識を体を揺らしながらなんとか保っていました。

 ツヅルはツシータと適度に会話をしながら、腹や頬をつねったりしていると次第に身分証を見せれば東門へと到着しました。

 夜の街というのは不思議な感覚がすることがあります。空は暗いのに街は明るい、ということに何か違和感を感じるのです。

 そんなプリミティブな気持ちにツヅルも浸っていました。

 モハナトでは東西南北中央の九方面で非公認ながらも区域がブロックで別れていて、南ブロックはギルド街、北東ブロックはスラム街、東は酒場街で、北西と西は住宅街、南西には商店街があり、南東ブロックは貴族街、そして中央ブロックはそのまま中央区と呼ばれています。

 ツヅルたちは東門から入ったので、西側の住宅街に存在するリーフがいる宿屋まで結構な距離を歩かねばなりません。

 それには疲れているツヅルはもちろん、ツシータも辟易としました。

と、その不幸について彼らが語り合いながら、少なくとも大通りよりは喧騒の少ない酒場街の外れの通りを歩いていると、とある名前を知っているだけの有名人を見つけました。

 それは、ツヅルがアールナにクランについての説明を受けているときにたまたまギルドに入ってきたこの街のトップクラン「湖の剣」の団長、金髪碧眼のナラスです。

 彼は街の南東側、つまり貴族街と呼ばれている貴族の称号を持っていなければ家を建てることができない区域の方向に大きなケースを持って、コソコソと駆けていきました。


「ん? ツヅル、どうしたの?」


 急にそっぽを向き始めたツヅルに違和感を覚えたのか、ツシータは立ち止まります。


「……ツシータは先に宿屋に行っててくれ。僕がギルドに依頼の報告してくるから」


 彼はナラスの行動にきな臭さを感じて、咄嗟(とっさ)にこんな発言をしました。もちろん、その発言はギルドへ向かうためではなく、ナラスを追いかけるためのものですが


「うん。ありがとう。じゃあ、先に行っているわ」 


 ツシータはなんの疑いも持たず了承しました。

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