四十六話 革命前夜
モハナトの街に帰った頃には、もう夜でした。
汚れた服を着替えてからレダンに報告しに行く、といってナービは帰ってしまいました。
テルランは腹いっぱいまで食事をしたので眠りに落ちているようです。
南門付近の人通りが少ない薄暗い通りにツシータと共にぽつんと残されたツヅルはとりあえず、メアの様子を見てから帰ろうと思い、
「ツシータ。先に帰っててくれるか?」
と、言いました。
「また、それ?」
普段のツシータならば即、何の疑いも持たずに了承したはずですし、現にツヅルはそう思ってました。
しかし、彼女は意外にも反抗的な態度を見せます。
「ツヅル、いつもそうじゃない? アタシは唯一無二のパートナーなんだからもっと……。そんなにアタシのこと信用できないの?」
ツシータは怒りを表情と声で表しながら、いつもよりも早口でまくし立てます。
その声を聞いても、一日の労働で疲労しきった道行く冒険者たちは見向きもしませんでした。まぁ、子供の痴話喧嘩に巻き込まれるのはただただ苦痛でしょう。
表情豊かなツシータですが、しかしここまで感情を露わにしている姿を今まで見たことがありませんでした。
「……ああ、その通りだ。済まなかった。……だが、僕もさすがに考えなしに動いているわけじゃない。後数日、いや明日で全ての決着はつくんだ」
ツヅルは真剣な表情で説得しようとしましたが、彼女は頷かず、言葉も返さずに沈黙していました。
「……分かった。今日の予定の話なんだが、メアという少女に会いに行くんだ。今日の魔族との戦いは彼女のためだった。何なら付いてくるか?」
根負けしたかのようにツヅルは言いました。
「……うん」
ツシータは少し迷っていたようでしたが、やがて頷きました。どうやら、拗ねるのをやめてくれたようです。
「ここが、メアさんの家……」
酒場通りのハズレまで来ると、もう看板を外したことによりただのオンボロ小屋と化した「リリィージェラス」の姿が見えました。
ツシータには革命のことを除き、メアのことを話しました。
その話を聞いて、ツシータはその少女に運命付けられた人生に同情を覚えていました。
また、彼女は会話をしている間に冗談に微笑を見せられるくらいには精神が回復したようです。
サラが死んだことをどうやってメアに伝えよう、とむしろツヅルの方が弱っていました。
「何やってるの?」
扉も前で立ち止まっている彼を見て、ツシータは怪訝そうな表情をしました。
その表情に動かされるようにして、その古臭い――彼から見れば――木製の扉を開けました。
そこには、普段着ていた魔術師用のローブではなく、可愛らしいピンク色の布の服を着ていたメアが涙を流しながら呆然と立ち尽くしていました。
「……ツヅル?」
彼女は首だけをゆっくりと動かしました。
「ツヅル! 起きたらベッドに寝てて、お婆ちゃんもいないし、ツヅルもいないし、店の方に出てみたら魔法薬も棚も何もないし、台所にはお金が置いてあるし。なぁ! メアのお婆ちゃんはどこにいるんだ?」
「……とりあえず落ち着け」
ツヅルは勢い良くこちらに迫ってくるメアの肩を掴んで、そう言うことしかできませんでした。
それ以外の行動が取れないくらいに居た堪れない姿でした。
しかし、そんな彼女を傷つけまいとして「ここでサラが生きている」なんて嘘を吐いたら、それこそリーフの二の舞いでしょう。ツヅルはあんな誰かを盲信した姿を見るのは素直にいえば、嫌でした。
「サラさんは、死んだ」
その時のメアの激昂ぶりは、この先続いていく彼女の人生の中でもトップクラスに凄まじいものでした。
「お婆ちゃん……」
メアの魔法によって、壁の一部は焼け落ち、床は何かで切り裂かれたかのようにズタボロになった店内でツシータと協力して彼女を取り押さえたツヅルは、サラたちの過去とその結果だけを端的に話しました。
「このチョーカーの中に、お母さん、が」
状況を整理するためかそう呟くメアは、どうにも信じられない様子でした。当然でしょう。数日間眠っていた人間にはあまりに突飛過ぎることでした。
「やっぱり、ツヅル、君は凄い。下手したらサラお婆ちゃんどころか、皆死んでいただろう」
でも、と一拍置いて彼女は続けます。
「わがままいうようで悪いが、サラお婆ちゃんは助けてほしかった……!」
とメアは涙を流しながら、そう呟きました。
サラに対するメアの思いを知ったところで、メアに対するサラの思いを知ったところで、正義のために奮迅できるほど人が良くないツヅルに彼女たちを救うことはできませんでした。
「メアも君と同じ宿に泊まりたいんだが」
10分間ほどすすり泣いた後、メアは何かを決心をしたかのように立ち上がり、堂々とそう言いました。
「それは、僕に許可を取ることじゃないだろう。……それはともかく、どうしたんだ?」
サラのことを思い出させるかのような発言は慎むべきだと分かっていましたが、どうしても気になったツヅルは聞いてしまいます。
「メアはお婆ちゃんの後を次いで、魔法薬の店を建てる。それを夢にした」
生きる意味を造る。この状況でそれができるメアの強さにツヅルは驚嘆を隠せませんでした。
しかし、そろそろ日も落ちる頃合いなってきたので、ツヅルたちは先に引っ越しの準備をすることにしました。
「そういえば、意外と可愛い服持ってるんだな」
「えっ!? いやこれは、べ、別に趣味とかじゃないぞ! メアの趣味はもっと格好良くて大人っぽい服だからな」
ジタバタと否定に掛かる彼女を見て、先程まで無言だったツシータもいつもの様な朗らかさで笑いました。
「全くもう……」
はぁ、とため息を吐くと、メアは思い出したかのようにツシータを見ました。
「……そういえば、えっとツシータさん、だっけ。君とは初対面だね! いや、ツヅルと共にこんな夜の町並みを歩いてきたのだから、それはもう友好関係を築いているのだろう。その武器とか見る限り、冒険者だね。ということは、これからメアと同じ立場で歩みを共にすることになるだろう! なんたってメアはツヅルと生死の狭間をひた走ったことのある仲間だからな! あ、メアの正式名称はメア・ハイナレスト・ツヴァンス・ルビロンドという」
「……ツシータ・アーテルよ。ツシータでかまわないわ。ツヅルとは唯一のクランメンバーで、あなたの言う通り並々ならぬ関係を築いているわ。性格がベストマッチしている相棒なのよ」
「いうほど、マッチしてるか、痛いッ!」
その口調とは打って変わり相変わらず芝居がかったメアの自己紹介から、何故か自慢げなツシータに移り、そして、無神経なツヅルは肩を思い切り叩かれました。
「少し着替えるから待っててくれ」
明かりが付いていない非常に暗い廊下を少し渡ったところにある部屋の前で、カラカラと笑ったメアはそう言いました。
ツヅルは頷くと、余りの暗さに耐えきれなかったのか、「光明」を放ちました。
「すっかり、慣れたものね」
「ツシータが教師をしてくれたからな」
「師を越える弟子……。戯文でありそうだわ」
戯文、この世界でのそれはツヅルの前世でいうフィクションの小説に近いものです。
何でも、何の役にも立ちそうにない滑稽な文章、と知識人が馬鹿にしたという理由から、そう名付けられたようです。
しかし、それは現在、これを読むために文字を覚えるという人間も現れるほどには、それなりに庶民の間で流行していました。
よく読まれているのだと、王がいない国ということで有名なカルキカート共和国のヘストの『国王差別日記』、言わずと知れたルリガイア王国のガーリアの『夢見る現実主義者』などがあります。
因みに、我がベストロジア王国にも『ご機嫌斜めな秋の空』という、秋の天候のように気が代わりやすい少女とその少女に夢中な一人の一般的な少年の戯文で有名なクーノという戯文家がいます。
さて、
「終わったぞ」
そんな戯文について話していると、魔術師用のいつもの黒いローブを着たメアが扉から現れました。
彼らは部屋へと入りました。
「何この武器! 格好いいわ!」
「ふふふ、ツシータにも分かるか……!」
女性はその本能的な何かにより、誰かと仲良くなるのが上手いと聞きます。
しかし、この状況をその本能に当てはめることには違和感を感じるのを禁じ得ないでしょう。
「やっぱり、分かる人には分かるんだなぁ、ツヅル」
「あー、そうだな」
メア自身が扱うことができないほど重たい杖槍を見て、ツシータは感激していました。
しかし、彼女と非力な持ち主の違うところは、獣人の怪力を利用してその武器を軽々と持ち上げたことでした。
なるほど、ツシータが戦闘で扱うならば、この武器は使い物になるかもしれません。
「で、何を宿屋に持っていくんだ?」
さすがにベットは持ってけないぞ、とツヅルはおどけて言います。
「あんまり、多くはないと思う」
「あのレー袋も持ってかないのか?」
「持ってくに決まっているだろう! だが、流石のメアでも100万レーというのはちょっと身に余る……」
サラが彼女に残した遺産金の量を聞いて、驚きました。
とりあえず、ツシータに欠伸が見られるようになったので、そろそろ荷物を纏めようと呼び掛けました。
メアは頷いて布製の買い物袋的な大きさの袋に服やら何やらを詰め込みました。
服数着――ピンク色の寝室着も――、裁縫セット、工作セット、そして1万レー紙幣100枚を押し込みます。
「それじゃあ、行こう」
どうやら、持っていく荷物は本当にそれだけらしいです。
ウキウキとした顔のツシータが杖槍を持ったので、ツヅルは手持ち無沙汰になりました。
いざ行かん、という時、メアは思い出したかのように右手に持っていたチョーカーを自分の首に付けました。
「……似合うか?」
「ああ」
彼女の心境を思えば、そのチョーカーが似合う、と言われるのも何だか複雑な気持ちでしょうが、嘘を言ったところで仕方がありません。
メアの赤茶色の髪に、黄色と茶色が混ざったようなカーキ色のチョーカーは実によく似合っていました。
こうして、メアを宿屋に連れて行きました。受付にいたシュラに頼み込み、合わせて2部屋借りました。
内訳としては男女的な意味合いから、ツヅルとネリー、メアとツシータです。
ツヅルは石のように固いベッドに横たわりました。
(ああ、明日、遂に……)
間違いなくモハナトを揺るがす、そう、冒険者革命が起こる。ツヅルはここまでに張った布石の数々を思い出しました。
リーフ、メア。共にツヅルが救ったと同時に傷つけた者でもあるでしょう。
(恩人と敵が共存している僕に、彼女らはどういう感情を持っているのだろうか)
革命は起こせても人の気持ちは分からないものらしいです。
「で? 何で、私らをこの宿屋に集めたんや?」
3月18日午前8時です。ツヅル、ツシータ、メア、ネリーという宿屋の面々。スラマイナとシャルイン。そして、セランとミーラはツヅルが住まう宿屋「ゼルミー」の大広間にいました。
「ルシラたちに自分たちの身を守らせてください、ってどういうことや? それに……」
スラマイナはもう一つ質問を加えます。
リーフのことを聞きたくなる衝動を抑えて、質問に答えます。
「今日、恐らくこの街で革命が起こります。今日、朝ギルド通りと住宅街で無償配布された新聞を見ましたか?」
「うん。あたしたちもここに来る途中で受け取ったよ、ほら」
すると、シャルインが近寄ってきて、その新聞を差し出します。
モハナトにはまだ、いえベ印刷技術が発展していながらストロジア王国には新聞というものがありません。
一部の国では有料で配布しているらしいですが、どうやら、それも首都のみだそうです。
初めて見るらしく、興味津々とした目で皆は新聞を覗き込みました。
『モハナト現公爵、A級クラン「湖の剣」リーダー、ナラス=ビス殺害。ギルド長、レダン=ヒューズ=リカンがギルド内で改革演説をする』
『モハナト現公爵、利益のために違法薬物を運用してラミ伯爵ら貴族たちを虐殺。騎士団の英雄クラリス=アーキュリー動く』
見出しはこのような過激なものでした。
「何や、これ……」
スラマイナは急いでいたのか、今初めて見たようで、その内容に驚愕していました。
すべての作戦が繋がりました。
―――――3月15日 夕方―――――
「そして明々後日、つまりは3月18日の予定ですが……」
リーフを誘拐してからそんなに時間は経っていない頃、ナービがツヅルが寝泊まりしている宿屋まで赴いた時、彼は革命に関するすべての作戦を吐き出しました。
「……本当に、明々後日に革命は起きるのか? 私にはどうにも信じられないんだが」
「まぁ、そうですね。じゃあ、時系列順に作戦を語っていきます。まず、ナービさんにはこの後、レダンさんにとあることを伝えて欲しいんです」
ナービは頷きます。
「新聞って分かります?」
「……ああ、この国にはないけど」
「じゃあ一つ目です。ブラーノ商会などを使って、『モハナト現公爵、利益のために違法薬物を使って貴族たちを虐殺し、騎士クラリス・アーキュリー革命のために動く』『モハナト現公爵、冒険者ナラスを殺害』という旨の新聞をできるだけ街の多くの人に配れるようにしておいて下さい。もちろん、演説者も手配しておいてください」
「っ! それは……!」
ナービはその作戦を聞いて、驚愕を隠せなかったようです。
しかし、ツヅルの方はまるで事務作業をこなしているかのように冷静沈着でした。
「無理だ! 確かにアーキュリー隊長が遠征から帰還するのは18日、19日くらいだが、欺瞞じゃないか、彼女がこちらの陣営に来るなんて。むしろ、モハナト公爵側に付き革命の鎮圧に参加するかもしれない」
「それが、二つ目です」
「二つ目? クラリスさんをどうにかこちらの陣営に引き入れろって? そんなの……」
「違います。誰か使者を送ってこう伝えてくれればいいんです。『ツヅル・トヴァーリという少年がモハナトに革命を起こそうと貴方に協力を求めています。標的は例の薬物のモハナト公です。あなたの英雄的素養と悪の公爵を打ち倒した栄光があれば貴族になるのも夢じゃない、と彼は言っていました』、と」
ツヅルはあの僅かな会話で、クラリスの貴族願望の強さに気付いていました。
それが欲望故なのか、もしくは他の何かなのかは分かりませんが、もしクラリスが街の評判に合うような優秀な人間ならばモハナト公爵のファリースリでの商売にも気付いていたはずです。
そこに革命という天運が突然舞い降りて来たら彼女はどうするでしょうか。
そして、その依頼者は、唯一クラリスのカリスマの奥にある願望に気付いたツヅルです。きっと、信頼してくれるでしょうし、そうじゃなくとも損得勘定で見れば協力する以外の道がないことに気付くでしょう。
「あ、レダンにも謝罪を伝えてください。あなたは英雄になるには無欲過ぎると」
呆然としているナービを見つめながら、ツヅルは話を次に進めます。
「ナラスの無力化は単純に革命を行うに当たって、この街で一番の戦力になりそうな冒険者をこちらの陣営に引き入れるためです。その時、ナービさん。あなたには少し演説をしてもらいます」
急に名前を呼ばれたナービはしばらく視線を彷徨わせていましたが、やがて諦めたのか、この10歳とは思えない頭脳高い彼を見ました。
「因みに、聞いておきたいんですが、ナラスの家族構成ってどのようになっていますか?」
「両親と、……妹が1人。みんな死んでいるよ」
「じゃあ、その妹を使いましょう。貴方は革命当日、ギルドに行き、冒険者達の前で血が出るほど拳を握りしめて、こういうんです。『ナラスの妹はモハナト公爵に人質として誘拐されていたようだ。一昨日、妹を人質にされたナラスは、モハナト公爵に魔族と共に死ねと命令されていたようだ
自分の手は汚したくないが、モハナト内で絶大な人気を誇っているナラスは鬱陶しい。だから、モハナト公爵は強大な力を持つ魔族に自分とナラスだけで向かわせて、偶然魔族に殺されたという状況にしたかったのだろう』、と」
「なっ! 何を!」
ナービは怒りに身を任せて、ツヅルの肩を掴みます。
「今何を言ったのか分かっているのか!?」
しかし、ツヅルは無感情に振る舞っていました。
真剣な表情のナービが葛藤していましたが、一分後、無理やり自分を納得させたのかツヅルから手を離して、腕を組みながら椅子に座ります。
「……とりあえず、今日の時点ではそれだけか?」
「いや、今日というか革命はこの二つをやってもらえれば、もう僕の出る幕はありません。ナービさんかレダンさん、クラリスさんに指揮をとってもらえれば終了です」
「そうか……。じゃあ、アーキュリー隊長の件はアールナに頼むよ。ラミ伯爵が瓦解したから、彼女は丁度職なしだし。新聞の方は私から頼んでおくとする」
ツヅルの未来予想図にナービは頷いて、そう言いました。
――――――――――
時は戻り、3月18日午前8時です。
この新聞を見ながら、真摯な態度のツヅルはお辞儀をしながらスラマイナたちに頼み込みました。
「なので、すみません。今日起きる革命から僕らを守ってくれませ……」
「ええで!」
「えっ」
即答、いえ食い気味の気前のいい了承にそのままの姿勢でツヅルは固まりました。
「もちろん、リーフちゃんも分も合わせていつか恩を返して貰うけどね」
ジト目でスラマイナを睨んでいるシャルインが付け足すかのように言いました。
「まぁ、ツヅルなら問題ないやろ! こいつ、こう見えても死線を二度潜ってきた男やからな!」
「はぁ。……彼があれを解決できるとは思いませんが」
それは過大評価じゃないか、と間接的にシャルインは問い掛けてきます。彼女が疑り深いのように見えますが、むしろこんなに簡単に人を信用するスラマイナの方がよほど異様でした。
「……リーフの状況はどうですか?」
「あ、それはアタシも聞きたいわ」
ツヅルが迷いながらも放った言葉にミーラたちと談笑していたツシータも賛同しました。
「『昏睡』から起きた後、凄い暴れようだったよ。床に散らばっている会長が製造している魔術書の失敗作が粉々になるくらいには。今はルシラとかが見てくれているから大丈夫だとは思うけど」
ツヅルの心情に暗い感情が芽生えましたが、
「で、ツヅル? 私らとこの子達はここにおればいいんか?」
と、スラマイナが別の話題に移ってくれたので表情には出さずに済みました。
「はい。僕はまだすることがあるので」
ツヅルの外出目的とはクラリスやレダンなど革命の主導者たる面々と話をすることでした。
今一度モハナト公爵についての情報交換をし、戦術や戦略を定めなければなりません。
この革命はクラリス率いる遠征部隊アンド冒険者とモハナト公爵率いる傭兵隊との戦闘になります。
幸い傭兵隊には500余名程度しか在籍していないらしいので、心配する必要はないと思いますが。
ともかく、そういう目的があってツヅルはわざわざ外に出なければならないのです。
「そうか……。なら、シャルインを連れて行けや!」
「ええっ!?」
シャルインは嫌そうな顔をしましたが、会長の頼みとあらば逆らえないのか、渋々ながらツヅルの近くに来ました。
一つの街の革命という大舞台。しかし、これまでに積んできた布石、犠牲の数々によりここまで来ることができました。
未だ一度も会ったことのないモハナト公爵はどんな表情をしているだろうか。ツヅルはそう思います。
ファリースリで商売を始めた時、まさか自分の街の冒険者に自分が殺されるなどとは当然思っていなかったでしょう。
ナラスを神の如く慕っていた冒険者達、利益を独占しようとして貴族を殺した事に憤慨している侯爵やその他貴族。
これらが、今ツヅルの手の中にいると言っても過言ではないでしょう。
勝利の時は、近く思えます。




