四十二話 心臓の呪い 2
クラは見た目通りのパワーファイターで、人間の身でありながら獣人用の戦斧を軽々と振り回すことができる「湖の剣」屈指の戦士です。
彼を倒したいのだったら、とにかく攻撃を躱しながら隙を窺い魔法を放つのが常套手段でしょう。
ナラスの実力は精々C級冒険者程度なので、適当にあしらっておいてクラという危険がなくなったら殺せばいいでしょう。
ナービはそう考ると、行動に移しました。
現在、ツヅルやツシータ、そしてサリーと謎の水色の生物が魔族と戦っています。邪魔をするのも憚られるので、彼は上級火属性魔法である「業火」を詠唱しながらその戦闘地域から離れました。
「業火」とは、下級火属性魔法「火炎波」の上級版ともいわれており、術者の視界全体を埋め尽くすような圧倒的物量の炎が飛び出す魔法です。
この状況でナービが詠唱時間の10秒を稼ぐのは簡単でした。「昏睡」によって様々な状態異常を引き起こされてフラフラのナラスたちに彼は「業火」を放ちました。
途端、先程まではいくら見渡しても草と花と木しか見えなかったこの平原が炎の洪水によって赤く染まっていきます。
「……ナービッ!」
その炎の大行進を耐えきったクラはいよいよナービの反逆に気付いたかのように叫びました。
「ナービ! このクソ野郎! お前、どういうことなんだ!」
そして、数瞬遅れてナラスもそう叫びました。動揺と怒りによって、紳士という偽りの仮面が剥がれ落ちたようです。
ナラスは「業火」によって、鮮やかだった金髪がくすみ、鎧や剣は少し溶けていて、肌を露出させていた顔や拳などは大きな火傷ができていました。怪我に慣れていないのか、痛みに震えていました。
追撃を掛けようと、ナービがまた「業火」を詠唱すると、
「オラァ!」
と野蛮な声を上げながらクラが短剣を投げつけてきました。
大きく振らなければならないため隙が多い彼の戦斧はいつでもどこでも使えるわけではありません。
洞窟内など、範囲攻撃では同士討ちの可能性があるようなダンジョンではクラは短剣を使っていました。
さすがは、ナラスとは違い実力でA級冒険者の座を勝ち取った男です。メイン武器以外の武器の扱いもかなり上手く、ナービはその投擲された短剣を避けるために「業火」の詠唱をやめてしまいました。
もちろん、数多の戦闘を切り抜けてきたナービがその攻撃を予想していないはずがないでしょう。横に転がって避けきり、立とうとした時、
「なっ……!」
つい数秒前までは遠く離れていたはずのクラが彼のすぐ目の前で戦斧を振りかぶっていました。いくら彼でもこれは予想できなかったようです。
ナービは反射的にクラの左足のスネを思い切り蹴りながら、「防壁」を詠唱しました。
「防壁」は中級聖属性魔法で、下級聖属性魔法「魔法壁」を詠唱時間を短くした代わりに効果が薄した魔法、という説明で概ね間違っていないでしょう。
何故、わざわざ効力が薄い「防壁」を選ぶかというと、ただ単純にこのクラという男の戦斧を振り下ろす速さが尋常ではないほど速いからです。
「本当に獣人用の斧なのか?」と聞きたくなるようなクラの斧の使いっぷりは、斧を極めしものという称号を与えてもいいほどです。
その振り下ろしでナービが致命傷を負わないために「防壁」で一枚壁を挟んでおく、というわけです。
さらに、斧を受け止める用に「二重魔法」で自身の左腕に中級地属性魔法の「固結」というある物を金属のように固くする魔法を使いました。
そして、斧を受け止めたら、上級無属性魔法の「衝撃」という一部分に圧力を掛ける魔法や中級風属性魔法の「暴風」などでクラをふっ飛ばしたり、はたまた下級無属性魔法「転換」で体を動かして避けたりするのもいいでしょう。
どれもそこまで詠唱時間は長くないので、クラに行動を読まれてなければ成功するかと思われます。
「……!」
クラは斧を勢い良く振りました。
ギリギリだったものの何とか「防壁」の詠唱を完了していたので、巨体なクラの腰程度の高さに魔力で出来た薄い壁を設置します。
「甘いぜッ!」
そして、クラの斬撃は予想通り、「防壁」を突き破って眼前まで来ました。それを「二重魔法」で詠唱していた「防壁」を左腕に使用し、斧を受け止めます。
少し血が滲んだが、その痛みを無視して少しでもクラにダメージを与えるために「衝撃」を腹に打ち込み、ナービは急いで立ち上がり彼から離れました。
「ハハハッ!」
腹に一発を受けたクラは少し体を揺らしましたが、すぐに戦闘態勢戻ると笑い出しました。
「さすがだな。完全に油断している時に『神速』を受けても防ぎ切るなんて!」
「神速」とはクラの隠し手札です。「俊敏」、名の通り物体の動きを早くする魔法を「五重魔法」として使うのです。
同じ魔法を重ねて使うとその魔法の効果が強化されます。
五重にも重ねた「加速」は通常の32倍の魔力を使用する代わりに4倍以上もの速さで動けます。
尤も、通常の4倍の速さで走るのは身体への負荷が大きいので、この「神速」はクラの強靭な肉体あってこそのものらしいです。
「魔力的に『神速』が使えるのはあと1、2回か?」
君の手の内は分かっているんだ、と煽るような言葉を吐くと、ナービは彼にも効くような強力な魔法を詠唱するために遠くに離れました。
気付くと、ツヅルたちとはもう随分離れていました。
そして、やっと痛みから回復したナラスが眼光に怒りを含めながらこちらに向かってきています。
ナービの魔法スタイル、広範囲の魔法で敵を殲滅するのを得意とする彼にとって、この近くに敵しかいない大きな広々とした草原はありえないほどの好立地でした。
(アレを使おう)
ナービはニヤリと笑いました。
「おい、ナービ……! これはどういうつもりだ……?」
クラの隣に立った全身ボロボロのナラスは訝しげな目をナービに向けました。当然でしょう。
ナラスはこの場にいる誰かがファリースリの件を知っていると思っていないし、まさかあの少年が魔族討伐に乗じて彼を殺そうなんて計画を立てているなどと考えてもいないでしょう。
「ああ、それには実に深い理由があるんだ」
ナービは無表情ながらに言いました。これは詠唱のための時間稼ぎです。
詠唱する魔法はアレ、ナービが自作した魔法の中では唯一実用的なもので、群れをなす魔物たちを相手取る時には実に世話になったものでした。
「クラも聞いてくれ」
彼は「無音魔法」でアレを詠唱し始めます。
ナラスたちは本当に深い事情があると思っているのか立ち止まったままでした。
「先日、モハナト公爵と会ってね」
当たり前だが、嘘です。
アレは元々詠唱時間が長く、さらに「無音魔法」での詠唱なので2分ほど掛かることは見込んだほうがいい。
「あまり話したくない内容なんだが、モハナト公からとある薬物を買ってみないかと頼まれた。私は、また新たな事業に目覚めたのか、と内心呆れていたんだが、公爵さんの表情はどうにも芳しくない。明らかに利益を望んでいる顔付きじゃないんだ。……」
ナービはゆっくりとした口調でどこかで聞いたような話を2分間喋り続けました。黙々と聞いてくれたナラスたちのおかげで、アレの詠唱は終わりました。
さて、アレとは一体どんな魔法なのでしょうか。あくまで自作なので名前は付けていませんが、あえて付けるならば、「透明な炎」でしょう。
ナービは魔法を研究していた時に、火属性魔法の「業火」の範囲を縮めて火の温度を高くしてみよう、と気まぐれで考えました。
すると、どうでしょうか。温度を上げていくとどんどん炎の色が薄くなっていったのです。ナービの魔力では完全に透明にするまではいきませんでしたが、そこは「着色」という色を塗る魔法などの力で多少は何とかできました。
彼はよく目を凝らさないと分からないような炎を作り出すことに成功したのです。
この「透明な炎」はまさに防御系のトラップとして有効でした。ナービは自分を中心とした半径1メートル程度の円をこの炎で作りました。
迂闊に飛び込んできたら、骨まで燃え尽きるのです。
「神速」ほどではないにしろ、非常に魔力を使用する魔法なので頻繁に使えるわけじゃありませんし、今までで2、3回しか使用したことがありませんでした。しかしこの状況ではクラを倒すために最も適した魔法でしょう。
何故なら、
「……!? 『神速』!」
ナービが魔法を使おうとしたらクラは「神速」を使って、恐ろしいほどの速さで向かってきてくれるのですから。
彼は「透明な炎」の存在は知らないですが、ナービが広範囲の魔法を得意にしていることは知っています。
(やつがデカイ魔法を放ったら終わりだ)
そう思っている時に彼が魔法を使用するような素振りを見せます。
まさかそれ自体が演技だともしらないまま、クラは軽はずみに「神速」を使ってしまうでしょう。
相手はモハナトでトップの魔術師なのです。出し惜しみしていては負けることをクラは理解していました。
「待て! クラ!」
「透明な炎」の存在を知っているナラスはそう叫んだが、どうやら間に合わなかったようです。もう、クラには自身の絶叫しか聞こえていなかったことでしょう。
髪の毛、皮膚、服、斧。彼の身につけていた、彼自身の全てが燃え尽きる音がしました。
「うあああッ―!!」
自分の体が一気に半分溶けたのです。絶叫をあげる以外の選択肢はありえません。
その筋肉が詰まった腕や腹は完全に塵一つも残さずに消滅して、血液も蒸発するので白い骨が露出していました。
そして、その人骨もこの世に存在したくないかのようにじっくりと時間を掛けて溶けていきます。
鼻は焼け落ち、眼球は一瞬で砕け、炎が頭蓋骨にまで到来しました。
一言で、ありきたりな言葉でいってしまえば、酷い。そんな光景でした。
獣人や精霊族を高値で売り捌いていた奴隷商、魔物の精神魔法に掛かってしまって突如仲間を攻撃しだしたクランメンバー、時々か弱い少女を家に引き連れては残虐な方法で殺していた貴族。
ナービの冒険者人生の中でも、ここまで残酷な殺人は見たことがありませんでした。
この光景に驚いている間にも、クラの全身は消滅していきます。
ナービを恨めしげな眼で――尤も、目はもうないのですが――見つめながら、心臓を焼かれています。
後方の魔術師と最前線の戦士。あまり話すことはありませんでしたが、それでもこの殺しを行う理由にはならないでしょう。
やがて、「透明な炎」の効果が切れ、右半身だけが残っているクラの体が崩れ落ちました。
最早、血液が全て蒸発していて、ある意味では貴重な資料となりそうな断面図が見えます。
約150年前に書かれた「人体解剖全集」という本をナービは15歳の頃に読んだことがありますが、今その時に感じた吐き気と同じものを味わっていました。
こんなことするやつの気が知れない、と思っていた自分がこれを作り出すとは皮肉なものです。
「は、はぁッ!」
すると、そんな声が空間に響き渡りました。
「……っ!」
背中が切られる音と痛みが同時にやって来て、ナービは倒れます。
後ろを見てみると銀色の全く使われていない綺麗な両手剣を持っているナラスの姿がありました。
クラの姿を見て、私が感傷に浸っている間に不意打ち攻撃を仕掛けてきたのだ、とナービは悟りました。
まだ、一回剣を振ったのみだというのに肩で息をしているナラスは仰向けに倒れているナービを目掛けて剣を振りかぶりました。
いくらクラよりも遥かに格下なナラスの剣でも、もう一回斬撃を喰らったら命があるかどうか分かりません。
「『転換』」
ある程度魔法というものに慣れた魔術師は、基本的に詠唱を口には出しません。
決闘の時に次に使う魔法の名前を言って、相手に対策を講じられるのはあまりにも滑稽ですし、魔法を覚えたての頃は魔法の名前を口にすることによってイメージを膨らませることによってより魔法を放ちやすくするという鍛錬をすることがありますが、ある程度魔法が使えるようになれば自然とその鍛錬の効果のなさに気付き、やめます。
なので、ナービのような2桁年魔法に携わっている人間が魔法の名前を口に出しながら唱えたのには理由があります。その行動の理由は大抵このどちらかです。
一つ目は、痛みや疲労などで精神が妨害され、魔法を放つのに必要なイメージを固めることができないときに、魔法を使うため。
二つ目は、あえて本当に詠唱している魔法とは違う魔法の名前を口に出して、相手を撹乱するため。
この二つの内、今回のナービの場合は前者の理由に見せかけた後者です。
ナラスは彼の「転換」という言葉を聞いて、
(こいつは傷を負っているから、口で詠唱しているのだな)
と、思っているはずです。
剣の鍛錬も真面目に行えない彼が魔術師の戦術を知っているわけがありません。
そして、ナービは無詠唱で魔法が使えないほど疲労しているのだ、という勘違いも引き起こせるのです。
そうして、こちらを侮ってどんどん攻め込んで来てくれれば、いくらでも殺すチャンスはあるでしょう。
「転換」を放つと見せかけて、「衝撃」を放つのです。
ナラスはこちらの策略にまんまと嵌ってくれていて、剣を私がどこに移動してもいいように、掬い上げやスラッシュ、叩きつけができる形をとっていた。
掬い上げとは簡単に言えば剣を下から上に振り上げるもので、スラッシュは両手剣の一般的な戦い方である叩き潰すというようなものとは違い、斬り付けることに特化した技だ。叩きつけはその両手剣の特性を活かして、自分の背より低い位置にいる物体を重力任せに振り下ろす技です。
つまり、ナラスの前方方向に移動したら掬い上げ。左右どちらかに来たらスラッシュ。虚をつこうとして彼の真後ろに移動すれば叩きつけが待っているということでしょう。
まぁ、ナラスにそのような受け身の攻撃姿勢を取らせたのはナービなのだから、それに引っかかるわけがありませんが。
「ぐっ……!」
ナラスは鳩尾あたりに「衝撃」を不意打たれると、苦痛の声を漏らしながら、蹲りました。
ナービはそれを見て、すぐに立ち上がり離れます。
追撃をしても良かったかもしれませんが、ナラスが起き上がるまでの短時間で戦闘不能にできる魔法をナービは持っていませんし、背中を負傷して少々体の動きが鈍くなっているため、いざ斬撃がとんできたときに避けれないかもしれない、という懸念がありました。
苦痛により1秒ほど腹を抱えていたナラスはすぐに立ち上がりました。
ここで痛みに身を任せて屈み込んで、敵を見ないことの愚かさは彼にも分かっているのでしょう。
「ナービ! お前はどうしてこんなことをした!」
立ち上がったナラスは必死な表情でそう叫びました。
「………」
「俺とお前がこんなことをするのは誰も望んでいない! 『湖の剣』のメンバーだって、……リーシャだって!」
「リーシャの話は辞めろ!」
ナービは大声を出しました。
リーシャとは今対峙しているナラスの妹のことです。
一言でいえば、ただえさえナラスの妹ということで恨まれていたのに、「湖の剣」の副団長でモハナト最強魔術師ということでそこそこ人気のあったナービと結婚したことにより、過酷な嫌がらせを受け、挙句の果てには殺されてしまった悲劇の主人公のような女性です。
ナービとナラスが「湖の剣」を創設したのも彼女の働きであり、自分のことを顧みず、ナービたちを案じてくれるほど心優しい性格をしていました。
確かに、彼女がこの場にいたら、「やめて!」と自分が攻撃を受けたかのように悲痛に叫んでくれるかもしれません。しかし、彼女はもういないのです。
「リーシャだとか、そういうのは私たちが今対立していることに関係ない。ナラス、これはファリースリに手を出したお前にけじめをつけてもらうための戦いだ」
そう言うと、今度はナラスが狼狽しました。
「なっ……! なんで、お前がそれを知っている!? いや、違う。あれはやむにやまれぬ事情があったんだ!」
「嘘を言え! その言い訳を今まで、何度使ってきたと思っているんだ」
まさか微塵もバレていないと思ったのだろうか、ナラスの動揺ぶりは凄まじいものでした。
これを告げてしまえばもう戻れない。それはナービも察していました。
そして、自分は利益のために親友を殺した極悪人だと彼は思い込むことでしょう。
クラを殺したこと、そして以前は唯一無二の親友であったナラスを殺すこと、この2つの罪過をナービが正当化できるはずがありません。
私は非情な悪人なのだから、味方を2人くらい死なせてしまっても仕方ない。そう合理化する以外に道は無いです。
「『業火』」
そんな話をしている間にもナービは魔法を詠唱していました。
全く学ばない奴らだ、彼はそう思います。
「無音魔法」は決して万能ではありませんが、魔術師と戦うときは「無音魔法」と「数重魔法」を警戒すれば勝てる、と言われているくらい、魔術師の常套手段です。
やはり、ナラスは褒められた強さの持ち主ではありません。
ナービの脳には色々な考えが巡り、突如涙が出てきました。
何か色々なことを考えているはずなのに、何も考えられない。
ナービが魔法の名前を口に出して詠唱したのは、そんな風にして急にイメージが纏まらなくなったからかもしれません。
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時間は少し巻き戻ります。ナービがナラスとクラに睡眠魔法を放った場面です。
「……あらぁ?」
突拍子もなく仲間割れをした3人とそれを見ても表情を一ミリたりとも変化させないツシータを見て、ムーロは首を傾げました。
ツシータはあたかもこれが計画の1つとでもいうような素振りでした。
「これは、……何だ?」
ナービたちの仲間割れを見て、動揺を隠しきれていないツヅルはツシータの肩を掴みながら、聞きました。
「落ち着いて。事情は後で話すから。今は目の前にいる魔族のことだけを考えて」
ツヅルを引き離し、落ち着いた聡明な表情のツシータはムーロにまで聞こえるような声で言います。
それを聞いたツヅルは「……ああ」と渋々ながら頷き魔族の方に向き直りました。
「……ツヅル、予定通りの作戦でいいんだな?」
革命のことを除き、事情は粗方聞いているサラでもこの異様な光景に少し動揺を示しながら、そう質問しました。
彼はサラの方を見ないで、ただムーロを一点に見つめながら頷きます。
ツヅルが考えた作戦では、以前ネリーとアクセサリー店に行った時に偶々見つけたスペースチョーカー――魔力によって創り出された空間に魔力を持たない物体を収納できる、というもの――が重要な役割を担っています。
この場で必要なものはそのチョーカーとテルランだけです。
魔力を持たないもの、この注意書きからツヅルはこの作戦を思い付いたといっても過言ではありません。
その作戦とは、テルランの魔力吸収でムーロの魔力を抜き取り続け、魔力が残り0、つまりは体内の水が「反応物質」と反応してしまう状況になったら、爆発するまでの20秒の間にどうにかしてチョーカーの中に封じ込めてしまうというものでした。
まず、テルランはいつか語った通り、物理攻撃には弱いですが、魔法には尋常ではないほど強度を誇ります。
ムーロも短剣による物理攻撃は行いますが、あくまで闇魔法主体だと思われるので、テルランが死ぬことはそうそうないでしょう。
「反応物質」というのは、サラから「自爆」作戦の概要を聞かされた時に得た知識の一つで、魔力が存在していない空間中にある水に触れると強烈な爆発反応が起きる物質のことです。
これのせいで、ラスの魔力が0になってからチョーカーに保存するまでの猶予が20秒ほどしかありません。
チョーカーの中の時間は極端に遅いらしいので、その中にムーロを入れてしまえば、メアが60年は生きれる時間は確保できるでしょう。
これを聞いて分かる通り、この作戦のかなり危険です。
サラに結界を張ってもらったほうが、魔族問題の解決自体は簡単だったでしょう。
しかし、彼にはそれを実行する勇気がありませんでした。




