二十七話 しばしの団欒
このベットが二つと小さな机、椅子が一つずつあり、その他には水桶と収納用のタンスぐらいしかない素朴な日当たりのいいこの部屋はとても暖かく、朝は気持ちよく起きられそうですが、どうやらこの部屋の素材は廊下や食堂のような熱に反応して冷たくなる魔法で加工された木材ではないようで、ツヅルは夏が心配になりました。
リーフ曰く、昔はすべての部屋がその特殊な木材で造られていたらしいですが、数年前の冬にこの宿屋に泊まった宿泊客があまりに寒すぎて火属性魔法で暖を取ろうとし、その結果火事になったことがあったそうです。そして、夏に水属性魔法で涼まるのと、冬に火属性魔法で暖を取るのなら前者のほうが安全だろうとの考えのもと、現在のような形になったそうです。
まだ3月の中旬なので、この部屋に4人の子供が集まったところで大して暑くはなりませんが、暑がりというか湿気が大嫌いで、前世でもコンクリートジャングルを猛烈にバッシングしていたツヅルにとっては今後が心配になる部屋構造でした。
「さぁ! ツヅル参謀長。組み立ててある作戦を発表したまって!」
「そうだな」
彼はツシータの言葉に頷いて少し咳払いをすると、話し始めました。
「とりあえず、リーフがフォート家に遷る前にいなくなったら、当然リーフの父や僕たちまで疑われる危険が出て来るから作戦開始は3日後以降になるのは確かだ」
「………」
「………」
「えっ、それだけ?」
何秒経っても続きを話さないツヅルを見て、ツシータは驚きます。
「ああ」
「これにて議会平定!」
なんか既視感があるな、と感じながらもツヅルはリーフに聞かなければならないことを思い出しました。
「そうそう。一つだけリーフに聞きたいことがあったんだ」
今まで、10分も続いたことのない何か色々会議に驚いていたリーフはその言葉で現実に戻ってきて、苦笑を浮かべながら彼を見ました。
「なんですか?」
「フォート家と仲の良い貴族って誰かいるか? できるだけ大きい家で」
「そう、ですね。フォート子爵家は公爵、侯爵、伯爵のいわゆる上級貴族に属してないので、基本的に、下級貴族と呼ばれている、子爵や男爵、騎士爵と仲がいいです。でも、そうですね。ラミ伯爵、という伯爵家とは、屋敷が隣同士なのもあってそこそこ友好はあるようです」
「それは子息や子女の結婚式があったら参加するぐらいか?」
「……はい。恐らくラミ伯爵も3日後の結婚式には来るでしょう」
リーフはツヅルの意図を汲み取れなかったのか、少しばかり動揺しながらもそう告げました。
こうして、会議は表面上は特に進展がないまま終わりました。
まだ19時です。ギルドに向かうには些か早い時間でした。
ギルドなんて深夜と明朝以外基本的に開いているのに何故夜に行かなければならないかといえば、流石にF級冒険者が真っ昼間にギルド長室に頻繁に出入りしていたら他の冒険者から疑われる可能性があるからでした。
なので、今日一日彼は情報を集めながら、22時以降になったらギルドへと出発しようと決めていたのです。
暇をどうやって潰そうか、と考えているとツシータから夕食の誘いが来たのでツヅルは立ち上がりました。
今は食堂が一番混む時間帯なので、ツヅルが扉を開けた時には明らかに宿泊客の人数に合わせて作られていない無駄に椅子や机が多くだだっ広い食堂の半分が埋まっているのが見えます。
やはり、この宿屋は宿泊代が安いので10代の冒険者風の男女が食堂のメイン層でした。今まで人があまりいない時間にしか食堂に来なかったツヅルにとっては中々新鮮だったのか、キョロキョロと周りを見渡していました。
すると、食堂から厨房の間をシャトルランのように、忙しそうにせっせとお皿を運んでいるリーフの姿が見えます。
「ここにしましょう」
ツシータは一番食堂の入り口から遠く、厨房の入り口に近い席に座ります。リーフの仕事を席を厨房に近くにすることによって少なくしようという配慮もあるかもしれませんが、恐らく彼女が端っこを好むタイプなのでしょう。
長方形の4人掛けの机だったので、ネリーはツシータの横へ座り、ツヅルは反対側に座りました。
「ネリーはなんか食べたいものある? まぁ、この食堂の朝食、夕食は決まってるからあっても意味ないんだけど」
「パンが食べたい!」
「えっ」
ツシータは彼女が珍しく普通の答えを口にしたことに驚愕しました。
幼少時代にネリーと友人だった彼女でもこの反応ということは、その発言が相当価値のあるものなのでしょう。
「おまたせ、しました」
5分ほど待つと、リーフはツヅルたちがいる机に夕食を運んできました。
「リーちゃんお疲れ」
「リーフ殿、ベットの質というのも重要だぞ!」
それを見て、アーテル姉妹は激励を掛けます。
「えっ、あっ、はい」
「ネリーは体調に気をつけてといっているんだ」
ネリーの言葉によって混乱した彼女を救うためにツヅルは軽く微笑みながらそう言いました。
「そういうことですか……。ありがとう、ございます」
彼女はそうお礼を言いながら少し雑にお辞儀をすると、また厨房に戻っていきます。
置かれた料理はこういってはなんですが質素なものでした。バケット、僅かに野菜が入っているスープ、ミディアムで焼いてある何かの肉という内容です。
この宿屋は決して料金の高いところではないので仕方がないと言えば仕方がないのですが、やはり、前世の食事に慣れているツヅルにとっては中々辛いところがありました。
レシピを提供するという策もないわけではないですが、残念ながらツヅルは本当に簡単な料理しか作ったことがないので大した力添えにはならないでしょう。
「そういえば、ツヅルってよくネルの言葉が分かるわね。私なんて、今この子は挨拶をしているんだなって理解できるようになったのがこの子と出会って三ヶ月ぐらい経った時なのに」
バケットを片手で持ちながらツシータは言いました。話題になっているネリーは何も聞こえていない様子で食事に徹しています。
この子は何かを食べるときに色々考える癖がある、と黙々としたネリーの様子を見たツシータは呟きました。
普通、空腹のほうが頭は働くんじゃないか、という言葉をツヅルは飲み込みました。
「訳の分からないことを言ってるようで状況を見てみれば意外と普通のこと言ってるだけだからな。さっきの『ベットの質というのは重要だぞ!』もせっせと労働しているリーフにその言葉を掛けたということは『しっかり休めよ』と同じような意味になる」
ツヅルは翻訳の手順をツシータに明かします。しかし、ツシータは首を捻っていました。
「まぁ、ネリーの言葉を訳したいなら状況を見て、後はフィーリングだ」
「……というか、何で私たち同じ言語を話しているはずの子の翻訳をしているんだろう」
「さぁ」
この直後にネリーの食事が終わり通常の良く言うなら元気な、悪く言うなら少々喧しい状態に戻ったので、彼らはまだまだ忙しそうなリーフに別れを告げて部屋に戻りました。
時間は20時半。後、一時間半でツヅルはギルドに向かうことになります。
「ネリー、何かしたいこと、ないか?」
再び暇な時間をどう埋めようと考えていたツヅルは最終的に奇想天外な発想を望んで、ネリーに聞きました。
「うーん。あ! あれあれ、ボールを打って走るやつ!」
「野球か? いや、人がいないし」
「そうかー……。あ! あれあれ、砂に猛ダッシュで近づいて、砂に足が踏み込む前に飛ぶやつ!」
「走り幅跳びか? 確かに1、2人でもできることだけど、距離測る道具を持ってないし」
「そうかー……。あ! あれあれ、メンタンピンツモ三色ドラドラ!」
「麻雀か? 台がないなー。……というかこの世界に麻雀なんてあったのか」
「そうかー……。あ! あれあれ……」
「いつまで続けるのよ!」
むしろこれだけで一時間半暇つぶしできそうなツヅルとネリーの会話はツシータによって終了を迎えます。
「決まったら、私も参加しようかなとか考えていたのに気付いたらまだ終わってないじゃないのよ! 麻雀って何よ!」
「じゃあ、ツシータ嬢が楽しませてよー」
何が面白かったのか笑顔になったネリーはツシータにそう催促しました。
「そ、そうね。……じゃあ、無難にしりとりとか!」
ツシータは一分ほど悩んでいましたが結局何も思い付かなかったのか、何のひねりもない普通の遊びの名を上げました。
「――擬似魔術反応!」
「烏獲之力」
「ら、ら、ら……。あ! ライム!」
「無機魔術!」
「津々浦々」
「ら、ら、ら……。 えっと。ライアー!」
ネリー、ツヅル、ツシータの順番で開始しましたが、15分ほど進んだところでツシータの語彙がなくなってきました。
ネリーは得意な魔法関連の単語。ツヅルはこの世界のことをまだ知らないので、どうやらベストロジア語にも存在するらしい四字熟語などで攻めていきます。
「闇濃霧!」
「無闇矢鱈」
「またら! もう何回も答えたじゃない! えっと、ら……。……もう、無理」
そうすると、ツヅルによるら攻めでツシータは見事に敗北しました。
「何でよ! ネルはアタシでも聞いたことがない魔法用語をすらすらというし、ツヅルも聞いたことがないような言葉をいうし!」
負けて悔しくて怒るという子供らしい部分を見せながら、ツシータは頭がいいというよりは知識が潤沢な2人に憤りました。
「そういわれましても! ツシータ嬢の語彙力がないのが悪いー!」
「うるさいわ! もう一回よ! これは偶然。1人しりとりを極めたアタシがそう簡単に負けるはずがないわ」
拳を握りしめたツシータは気合を入れるためか座っていた椅子に深々と座り込むとそう啖呵を切ります。
「順番はどうするんだ?」
「そうだな……。さっきはネリー、僕、ツシータだったから、今度はツシータ、ネリー、僕にしよう」
どうやらネリーはら攻めやる攻めなどに興味がなく、思いつく言葉をポンポンと発しているように見えたので、ツヅルは詐欺師まがいな言葉でしりとりの順番を決めました。
「分かったわ! それでいきましょう!」
(ツヅル……)
肝心のツシータはそれに気づかず、この光景を見ていたテルランが呆れるような声を出していました。
ツシータの敗北に次ぐ敗北、再戦に次ぐ再戦により、ツヅルは時間を潰すことができました。
結局、彼女はしりとりに一度も勝つことができず、一応、当の本人は勝つまでやるといった雰囲気でしたが、ネリーの寝落ちによりそれは叶うことはありませんでした。
彼女はツシータによって石のように固いベッドの上に寝かされ、丁度22時になったことに気付いたツヅルは、少し出てくると伝え、夜の街に出ました。
夜のモハナトはブロックによって光と闇が対照的で、西側の住宅街は真っ暗と評しても過言ではないほど暗く、光属性魔法による街灯がなければ何も見えないほどでしょうが、反対に東側は北東のスラム街と南東の貴族街を除けば、酒場やその他営業店の光によって眩しいほどです。
宿屋は、当然騒々しい東側にあってはまともに寝れず客も来ないので西側にあり、酒場を西側に造ると苦情が来るのでそれらのほとんどは東側にある、と街の中でも結構組分けされていました。
中央区にはモハナト公爵の本拠があり、南側には今回の外出の目的である冒険者ギルドがあります。
治安の悪いといわれているモハナトですが、その犯罪の殆どが東側のスラム街で起こっており、西側はたまに盗難が少々起こるばかりです。
夜に少年が一人出歩いていても安心、というわけではありませんが、警戒して少しは人が歩いている大きな通りを歩けばまず犯罪に出くわすことはありません。
わざわざ危険を冒す必要もないので、ツヅルはそれに倣って大通りを歩き始めました。
「あー、ツヅルさんー。どうしたんですかー」
やがて、ギルドに着いたツヅルが扉を開けて入ると、帰宅途中のアールナと対面しました。
「毎日、この時間まで働いているんですか?」
初めて受けた依頼である青い蜂の時もこの時間に出会ったことを覚えていた彼は週7、朝7時から23時まで勤務というブラック企業も真っ青な労働をしているのではないかと心配になりました。
「さすがにー、そんなことないですよー。この時間まで働くと休みが増えるのでー、この時間まで働くのは週1、2回くらいですー。ほら、一日6、7時間を週に6回よりも、週3回くらい深夜まで働いた方がなんか得した感じになりませんかー?」
しかし、アールナは朗らかな声で自分の労働論について語ります。
「それはそうとしてー、ギルドはもう終わりですけどどうしたんですかー」
「いや、ギルド長に呼ばれているんですよ」
そういえばレダンの話ではアールナも革命隊に所属していたな、と思い出したツヅルは素直にそう伝えました。
「……ああ、そうですかー。ギルド長さんといえば、あの応対室での会議には心臓マッサージみたいに心臓を圧迫されましたよー」
何でもレダンは無能だと思った職員はすぐに首を切ってしまうらしく、あの時の彼女のぎこちなさはそれを恐れていたようです。
「ギルド長さんの部屋はあの階段を上がったところにありますよー」
いつも以上に眠たそうにしているアールナに別れを告げたツヅルは彼女の助言を受けて階段へと向かいます。
やはり、この時間にはもう冒険者、ギルドの職員共に帰宅しているようで、1階にある依頼が貼ってある看板と依頼受付カウンターと酒場を伴った料理店がありますが、そこにいる人間ないし獣人はツヅルと受付のところで眠っている男性職員が1人のみでした。
ギルドに入ってすぐ右に進むと2階へ上がるための小さな階段があります。ツヅルは気になりながらも上がったことはなかったので、これが初めてでした。
2階に着くと、まず見えたのは「ギルド長室」というプレートが掛かっている扉です。
そこから横に廊下が広がっていて、そこには「第一会議室」のような職員専用の部屋が並んでいるのが見えました。
並んでいる部屋の数々をひと目見た後、ツヅルは目の前にあるギルド長室の扉をノックをしました。
「……誰だ」
少し経ってレダンの低い声が聞こえてきます。
ツヅルです、と解答すると部屋の中から声が掛かったので、彼は鉄で縁取りされている木の扉を開けました。その扉は築100年は経っているかと思わせるほどには大分古いものだったのでツヅルは少し驚きました。
「何の用だ?」
その部屋は冒険者の街と呼ばれているこのモハナトの冒険者ギルドの長の部屋とは思えないような部屋でした。
大きさはそこそこですが、インテリアは今レダンが座っている椅子と大きな机以外には、客を迎えるようであるソファーが一つ程度しかないという殺風景でした。
革命を起こそうとするくらいなんだからきっと金銀財宝の一つくらいはあるだろう、と予測していましたがそんなことはなく、やはり復讐目的なのか? とツヅルは自問自答しました。
「フォート子爵という貴族を知っていますか?」
しかしながら、いつまでも狼狽していてはここに来た意味がないので、彼は本題を切り出します。
「ああ、ラミ伯爵と仲がいい貴族だろう。半月ほど前、リトーンとの結婚がオズワルの気まぐれによりご破算になったという」
「……ええそうです」
その情報は初耳でしたが、ツヅルは即座にこの情報を知っている体にしたほうが作戦が上手く進むことを察し、嘘を吐きました。
「その、フォート家とラミ家は家も隣だそうで」
「もしかして、フォート家がラミ家からファリースリを買ったことを知って伝えに来てくれたのか? そいつは申し訳ないが、儂らはすでにその情報を手に入れておる」
レダンがそう呟いた時、ツヅルの頭脳の使用率が急上昇しました。
フォート家がファリースリを買った。いえ、きっと伯爵であるラミ家に無理やり買わさせられたのでしょう。子息がはっきり言って出来損ないのオズワル1人しかいないフォート子爵がそんなものに手を出すとは到底思えません。
「そういえば、結婚を持ちかけたのは確か……」
「ラミの方じゃな」
ツヅルはこれにより今さっき脳裏を襲ったとんでもない閃きに確信を得ました。
「そうです。これは、何のためでしょうか」
「……? どういうことだ?」
「ラミ家がフォート家に結婚を持ちかけたのにはファリースリの件が関与しているのではないかということです。つまり、フォート家を乗っ取る計画であったのではないでしょうか」
ツヅルはこういっているのです。
リトーンとオズワルが結婚をした後、もし偶然、フォート家の面々、つまりフォート伯爵とその息子のオズワルが死んでしまったら彼らの資産はどのように分配されるのでしょうか。
「……血族が2人しかいないフォート家はあっさり滅び、子爵の莫大な金は全てラミ家のものになる、か」
「そうです。よくある乗っ取りです。『謎の暗殺者により』よりも『フォート家の使用人は薬物を使用しており、錯乱して』と銘打った方が自然でしょう。そして、分家のエリー家には僅かばかりの金銭を与えて、黙らないと殺すと脅す」
「フォート家に無理やり買わせた薬物を、期を見計らって女中、衛兵などに投与し、フォート家を滅亡に追い込み、ラミ家に責任が向かないようにして金を手に入れる。……何とも酷い作戦だ」
「その作戦はオズワルの気まぐれによって頓挫しました。しかし3日後、オズワルとエリー家のリーフ・フォート・エリーとの結婚式が開かれます。当然フォート家と友好があるラミ家も参加するでしょう。また、このエリー家というのは、この結婚の依頼がくるまでフォート家との交友がほとんどありませんでした。」
「……要は、儂にもみ消して欲しい、と」
ツヅルの説明で、レダンは彼がどのような作戦を立案したのかを察しました。
つまり、彼は結婚式でリトーンなどがオズワルの結婚相手であるリーフを牛耳ってフォート家滅亡の作戦を再び練る可能性が大です。
そして、もしも彼女、リーフがそれに頷いた場合、革命隊にとっては敵であるラミ家の資金力を向上させることになりこれは望ましくありません。それを避けるためにリーフを誘拐したい、ということでレダンに協力を仰いだのです。
「一応、作戦はできていますし、人も揃っています」
「……分かった。それに乗ってやろう。しかし、あまり派手な動きはしないでくれ。いくらギルド長の権力といえどもモハナト公爵には通じん」
こうして、ツヅルはまた一つリーフ誘拐の手はずを整えました。
しかし、まだ準備は終わっていません。確かに、彼女を救うのみだったら後はスラマイナに頼み込めば終了します。
ですが、このオズワルの結婚というのは表面上エルフ好きの貴族の息子がエルフの血が入った人間と結婚する、とこれだけのことに過ぎませんが、裏では複雑にファリースリという薬物が絡みあっているのです。
彼はリーフ、メアのことだけでなくモハナト革命隊のことも深く考えねばなりません。
現在、モハナト革命隊はピンチに陥っています。
ファリースリ取引を開始してから幾日が経ったかは分かりませんが、モハナト公爵はラミ伯爵やこの街でトップの冒険者クラン「湖の剣」のリーダー、ナラスなどを味方に引き入れ、現在も他の貴族を巻き込もうとしています。
今現在、港街の領主であるアルノ公爵やドラント=ヴァルーユ商会はあくまで取引相手としての交友があるのみでしょう。
しかし、いつ彼らがモハナト公爵の勢力として加わるか分かりません。もしも、街の外にまでこの勢力が及んでしまったらその時点で革命隊の敗北は必至です。
しかし、今まで革命隊は何もできずにただ見ているだけでした。これはピンチ以外の何物でもありません。
しかしツヅルは、
『チャンスがピンチの仮面を付けているは恥ずかしがり屋だからなのよ』
という誰かの言葉を今でも信じていました。
ツヅルは会談を終えると、もうギルドの扉が開いていないということでレダンに裏口を教えてもらいそこから出ました。
もう、23の鐘であり、眠たくなった頭を引きずって彼は宿屋に戻ります。
もう真っ暗な街道を通り、宿屋に入ったツヅルは廊下を通り、自分の部屋の前に立ちました。
(ツシータがもう寝ててくれればいいが)
と、彼はいつかの彼女の号泣を思い出しながら扉を開けます。
ロウソクが放つオレンジ色の光に、一瞬、ツヅルはツシータが起きているのかと錯覚しましたがよく見てみると、ベットに彼女が倒れるようにして眠っていることに気付きました。
恐らく、待っていようとしましたが眠気に耐え切れず寝てしまったのでしょう。
そのベット眠っていたネリーは腹に倒れてきたツシータの重みが苦しいのか唸っていました。
彼は何とかツシータを抱きかかえてネリーの隣に寝かせると、自分は開いているベットに倒れこみました。




