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神殺しの王となる。  作者: 唐松あせび
一章 モハナト革命
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二十二話 スライム討伐 8

 魔族が動揺している間に、ツヅルは短剣をパカルタの近くの地面に投げました。

 物理攻撃が弱点だ、なんて魔族がいるこの場所で言えるはずがないので、パカルタが察してくれることを祈ります。

 彼は短剣を拾ったはいいものの、やはりツヅルの意図が汲み取れてれずどのようにして扱えばいいのか分からないようで、疑問の目を向けてきました。

 ボディーランゲージで伝わるとも思わないので、一旦パカルタを無視してミーラに話し掛けます。


「水魔法で魔族の魔法を封じることはできるか?」

「ごめん……。そんな強力な魔法は私には使えない」


 彼は魔力は水に溶けるという水属性魔法の性質を利用して魔法を禁じようと考えましたが、しかし、ミーラは済まなそうに目を伏せながら答えました。「いや、いいんだ」と小声で返したツヅルはいよいよどう魔族に近づこうか迷います。一応、パカルタに短剣を持たせたはいいものの、その意図に気付いていないようですし、仮にもし気付いたとしても足に怪我を負っている彼が短剣一本のみで魔族との格闘戦を制することができるとは思いません。それに、そもそも物理攻撃が弱点の魔族が自分から接近戦に持ち込むことは考えにくいでしょう。

 しばし、この場にいる全員が疑問を抱えているためか戦局は膠着します。風が草木を揺らす音だけが響いていました。

 それにしても、とツヅルは考えます。


(何故、さっきから上級魔法や、範囲の大きい魔法を使わないのだろう?)


 正直、彼はこの戦闘で死を覚悟していました。メアを差し出せば生き残れるかもしれませんが、彼はそれを望んでいません。

 魔族は容姿、服装からはそう思えませんが、間違いなく戦い慣れています。なのに、ツヅルたちがここまで、生きながらえている理由は致命打となる魔法が飛んでこないからに他ならないでしょう。

 こめかみを一定のリズムで叩きながら、ツヅルは思考していきます。これは彼が考えるときの癖でした。

 様々な思考回路を辿っていくと、やがて、とんでもなく荒唐無稽な推測に辿り着きました。それはその推測を編み出したツヅルでさえ、困惑するほどのものでした。自分の考えが一種の狂人が考えるものだったので、彼は驚きます。


(メアが……。いや、そんなことはないだろう)


 陰謀論ほど考えるのが無駄なものはありません。放棄しました。




「ツヅルくん、どうしたんだ……?」

「僕の作戦に乗ってくれませんか?」


 パカルタの戸惑いを放置して、突然、危険を顧みず近寄ってきたツヅルはそう言い放ちました。

 彼が用意した作戦とは、いわゆる持久戦です。セランとミーラに援護してもらいながら、ツヅルとパカルタで魔族を逃げられない状況に追い込み最終的に小瓶を使う、といった一見誰でも考えつくような単純な作戦でした。

 しかし、パカルタがこれに賛成するには少しばかり不安要素がありました。


「でも、魔族がこれに乗ってくれるとは限らない。そんなことをしたら、むしろここ一帯が吹き飛ぶような大規模な闇属性魔法を使用されるかもしれない」


 当然の心配です。格上の相手に追い込み漁をしようというのは若干どころかかなり大それた作戦でしょう。


「魔族が僕たちを殺そうとしているのなら、僕たちはとっくに死んでいます」 


 ですが、考えなしにこの作戦を提示したわけではありません。

 魔族がこの十数分間、パカルタと戦闘を続けたのにはきっとこんな理由があるのでしょう。

 この青年が闇魔術師である可能性は捨てきれないし殺すのは少し待って様子を見よう、と。ツヅルには何故か分かりませんが、そもそも魔族が彼らに戦闘を仕掛けてきたのは闇魔術師を回収したいからです。

 恐らく、何らかの方法でメアの「闇濃霧」を察知して、こちらに向かってきたのでしょう。じゃなければ、先にツラウ村を出た五人組クランが殺された理由が分かりません。

 また、五人組クランと魔族の戦いが1時間に及んだことも判断材料として加わります。

 何故、戦闘時間が分かるのでしょうか。それは五人組が乗っていた馬車が倒れていた位置と、セランとミーラが馬車を直していた時間を掛け合わしたからです。

 正直にいって、ツヅルのパーティーにも劣るような彼ら五人組が遥かに格上である魔族と長時間渡り合えたのは、ひとえにいって魔族が手加減をしていたから、即ち、闇魔術師を選別していたからでしょう。

 つまり、何を言いたいかというと、闇魔術師ではないとバレるまでは殺されることはないということです。戦闘力でいったら歯牙にも掛けられないツヅルたちの攻撃など、魔族にとっては痛くもかゆくもないのです。


「分かった。それでいこう」


 その説明を聞くと、パカルタは何の反論もせずに賛同しました。ツヅルは馬車の近くで身を潜めていたセランたちに作戦開始の身振りをします。


「きゃ!」


 そうすると、唐突に魔族の足元の土が固まり、数本の鋭く細い、高さは170センチは越している土の針が飛び出してきました。セランの「砕岩」でした。魔族はあげた小さな悲鳴に似合わない滑らかな機動で避けます。

 さすがにこれがクリーンヒットすると思うほどツヅルは目が悪いわけではないので、さほど驚きませんでした。こういう魔法は数撃ちゃ当たる、です。しかし、本目的はそこではありません。


「『凍結』!」


 普通の「砕岩」ならば魔法を解除するとその人よりも長い土の針はすぐに崩れ落ちてしまうのですが、ミーラが放った「凍結」という物体に含まれる水分を凍らせる魔法により鋭さをそのままに固まりました。

 何を企んでいるのかが理解できない、とでも思ったのか魔族は土の槍を見ながら渋い顔をしていましたが、ツヅルたちが短剣を持ちながら追ってきていることに気付くと、距離を取ろうと右方向に逃げました。正面は土の槍が邪魔をしていて、通れなかったからです。

 これがこの魔法を使わせた理由でした。

 魔族は闇魔術師を探さねばならないので、逃げることはないでしょう。そうなると、当然戦闘区域なるものができるわけですが、そこの地面に移動を邪魔するほどの沢山の槍が生えていたらどうでしょうか。

 本などの小さなものでも数が莫大になれば、必ずかさばるのです。


「そろそろだね」


 あれから10分ほどが経ち、数十平方メートルの土地の地面にはセランとミーラの努力により、一種の迷路のような様相を呈した槍地獄が出来上がっていました。といっても迷路ほど左右の壁は一直線に並んでおらず、正弦波のようにジグザグです。

 功績者であるセランたちはもう立つのにも困難するほど疲労したらしく、馬車の近くに座り込みながらこちらをジッと見ています。

 よくやった、とツヅルは彼らに身振りで伝えました。そして、すぐに全速力で駆けてL字路をパカルタと共に曲がり、数十メートル先にいる魔族の行動を確認しました。

 二方面を土の槍に囲まれているという状況に少しばかり動きづらいと感じていたのか、彼女は「闇黒球」でこの迷路を崩そうとしていました。しかし、ミーラの水属性魔法のおかげか、一発では半壊するだけで道は開けません。水は本当に魔法の弱点なのか、とその光景を見てツヅルは関心しました。

 結局、攻撃らしい攻撃はしてこなかった魔族はツヅルの姿を見て、数メートル先の曲がり角を曲がります。

 ここまでされてもツヅルたちを死に至らしめようとしない魔族に若干の違和感を覚えましたが、敵に弱点があるのなら使わない手はありません。「俊敏」を用いて更に速くなった足で追いかけます。

 追いかける途中、ツヅルはバッグの中にある魔法薬を手に持ちました。



 

「追い込まれちゃったわ。なるほど、この無駄に思える針はこのためにあったのね」


 数十分後、今更気付いたかのように白々しく魔族は述べました。彼女は現在三方を囲まれた乱雑に置かれた土の迷路の行き止まりに追い込まれています。道の横幅は10メートルほどあるので、最後の一方を塞いでいるツヅルたちは隙を突かれないように集中していました。

 ツヅルが行ったことは実に簡単で、セランとミーラに、迷宮ができたら入り口を塞いでくれと頼み込んだだけでした。


「逃げないのか?」


 その様子があまりにも冷静だったので、不思議がったパカルタが聞きます。


「貴方の短剣と、そっちの小さい子の変な魔法で私を殺そうって? ふふふ、私だって物理攻撃が弱点だからあまり使う機会がないだけで結構戦えるのよ」


 パカルタの質問を答えながら魔族は腰からぶら下げていた短剣を取り出します。その表情は何の動揺もしておらず、何か策があるのではないかと思わせるような微笑みでした。

 その微笑みに不安を煽られたパカルタはツヅルに指示を仰ぎました。しかし、彼は魔族のこの態度がハッタリに近しいものだと気付いています。

 たとえ、もし何か考えがあるとしてもツヅルの所持している小瓶のことは予測もしていないでしょう。

 この小瓶を把握しているのだとするなら、危険な薬品を浴びるためにわざわざ追い詰められた、という解釈しかないので、無視してもいいのです。

 後考えるべき可能性といえば、小瓶は実は全くの効力のない不良品である、と魔族が推測していることでしょうか。

 しかし、それはありえません。

 それが成立するには、ツヅルがサラから小瓶を貰ったことを知っており、さらに彼が頭を働かせて追い込み作戦を行い、それを使うと分かっていたことになります。


(少なくともE級冒険者5人を軽々と殺せるほどの強さを持ち、この世界の住人と比べたら知識量がかなり多いはずの僕よりも遥かに頭が働く。……さすがに、その可能性を考える必要はない、だろう)


 考える必要がないものを考えていても、仕方ありません。しばらく片目を閉じながら思考していたツヅルはそう思い、――パカルタや魔族にとっては――唐突に、予備動作なしに魔族の方へ青々しい草原を踏み込みながら、小瓶の蓋を開けました。

 そこには見るもの嫌になるほど真っ黒な液体が小瓶の半分ほど入っていて、目分量で50ミリリットル程度でしょうか。むせ返るほどの禍々しい刺激臭による生理的嫌悪感が彼の身を襲いました。


「ッ! それは……!? 貴方! 止まりなさい!」


 その液体の臭いを嗅いだ魔族は唇を震わせながら大声で静止を求めます。不自然なほどに動揺してみせた魔族は、


「あの子が……!」


と、首をひねるような意味不明な言葉を呟きます。

 しかし、ツヅルは勢い任せに魔族に液体を小瓶ごと投げつけてしまいました。


(あの子が?)


 その言葉が気になりましたが、そんなことはいざしらず小瓶は液体を撒き散らしながら放物線を描き、そして、見事に魔族の頭に振りかかりました。


「きゃあああ――!!」


 小瓶に入っていた黒い液体を頭から被った魔族は共鳴でもしたかのように大きな悲鳴を上げながら崩れ落ちました。そして、人間とそう変わらない肌色の皮膚が一瞬にして黒くなって、草原の緑を染めるのが見えました。

 一方、グロテスクな光景に目を逸らさずに、しかし、かと言って凝視しているわけではないツヅルは呆気に取られたように目を見開いています。

 『あの子』。ツヅルはその言葉により、自分が荒唐無稽だと考えていた推測が正しいことに気付きました。

 すなわち、メアが闇属性魔法を使うことができるのは今、彼らの目の前にいる魔族に心臓を差し出したからだ、という推測。普通に考えて、こんなものが正しいはずがありません。

 しかし、ツヅルは今、目を見開くほどに驚愕しているのはその考え自体ではなく、魔族の体内魔力内にメアの心臓がある、ということが原因でした。 

 まだこの世界に来て半月も経っていない彼には分かりませんが、魔族が損傷したとき、メアにまで被害がいかないとは考えにくいでしょう。

 ツヅルがそんな思考をしていると、なんと驚くべきことに魔族は黒く爛れた体のまま起き上がりました。

 赤い血がポタポタと滴り落ちますが、彼女は気にしていないようでした。


「なっ!?」


 ゾッとするような恐怖を感じながら、慌てて追撃準備をします。準備、といっても「心討ち」の詠唱を開始したのみですが。この状態で闇属性魔法を放たれたら間違いなく死だというのは自明の理でしょう。

 ですが、幸いなことにそれは杞憂に終わりました。

 魔族は『浮遊』、と今にも消えてしまいそうなかすれた声で呟いて、溶けかけの片方だけの羽を広げ、大空へと飛び立ちました。


「……逃げたのか?」


 めくるめくように変化する状況についていけなかったのか、唖然としていたパカルタはぽかんと開けた口を動かして問います。


「……はぁ。でしょうね」


 九死に一生を得た、と飛び去った魔族が見えなくなるまで見送ったツヅルは疲労によるため息を吐きながら返答しました。


「――ツヅルくん!」


 すぐに受け入られなかったのかパカルタは反応するまでに時間が掛かりましたが、やがてセランと似たような喜びを態度で示しながらツヅルの肩を掴みました。


「すみません。早く馬車に戻りましょう」 


 しかし、それに対してツヅルの喜びはすぐにメアへの心配に変わります。普通ならば、こんな心配をする必要はない、と自分に言い聞かせても、その可能性を捨てることができませんでした。

 



 土の槍を数分掛けて壊しながら馬車に戻ってくると、ミーラたちが戸惑っている様子で馬車の中を見つめていました。


「2人共、どうした?」


 ただならぬことが起こったのが分かったのか、パカルタは真剣な表情で聞きます。


「ちょっと前、メアがいきなり叫び声を上げたまま倒れちゃって」


 困惑した表情のミーラは扉を開き、中で眠っているメアを彼らに見せながら説明します。

 ツヅルは自責の念により泣き出したくなるのを押さえ込んで、メアに近づきます。

 彼女はまだ春も始めだというのに汗をかいていて、時折苦しそうに唸り声を上げながら寝ていました。ツヅルは不謹慎ながらも、リンゴの呪いに掛かってしまった白雪姫を思い出します。もっとも、毒リンゴを吐き出すような偶然が起こるとは思えないほどに絶望的でした。


「とりあえず早く帰ろう。魔族はまだ死んでいないからギルドに報告をしなければならないし。……5人の死体は放置しとかないとだけど」


 現在の状況を整理して、冷静にパカルタはそう判断を下します。

 魔族だけならともかくメアがこの調子なので、この判断に異論を唱えるものはいませんでした。


「ミーラとツヅルくんはメアちゃんを見てあげてくれ」


 そういわれても、ツヅルの知識ではモハナトに着くまでただ無言でメアを見守っていることしかできません。

 こうして、長いスライム討伐が終了しました。オールドスライムに魔族。相手の強大さから考えれば、むしろ10人中5人死亡、1人重症という被害は少ないのでしょうが、もっと思考を働かせていれば対応できたかもしれない事態だった、と考えているツヅルの胸中は決して穏やかなものではありません。

 時間はそろそろ日が夕色に染まってくる時刻。ツヅルたちの心境を考えもしていないような、天使の飛んでいてもおかしくない綺麗な夕焼け空でした。

 



 馬車馬もこの事態を察したのか察していないのか、行きよりも速く進んでくれたので、1時間弱程度でモハナトへと着きました。

 そして、東門から街へと入ります。


「僕たちはギルドにオールドスライムと魔族のことを報告してくるけど……、人手はいる?」

「いえ、大丈夫です。あてがあるので」


 現在、ツヅルはメアを背負っている状況でした。自分の身長よりも高い背丈の彼女を背負っている彼は大分大変そうでしたが、無理に微笑みを作りながらパカルタの協力を断ります。

 あて、とはサラの所でした。

 殺されてもおかしくない、と思いながらもこうなった以上、行かないわけにもいきません。

 心配そうに彼らを見つめているパカルタたちに半ば強引に別れを告げ、ツヅルはのっそりと一歩を踏み出しました。

 「リリージェラス」はモハナトの西側にあるので、少々長旅になるな、と彼は思いながらも歩いていきました。




「……ツヅル! これはどういうことだ!」


 ツヅルがメアを背負いながら「リリージェラス」に入ると、相変わらずゴチャゴチャとした店の奥の椅子に座っていたサラがすぐにこちらに飛びついてきました。

 ツヅルは死を覚悟して、今日一日のことを語り始めます。

 意外にもサラは怒らずただ時々頷くのみで、目は彼を見ていましたが時折全く別のものを見ているような遠目をしていました。


「そうか……」


 話し終わった後、サラは椅子にどっしりと座って天井を見ました。


「ツヅル。今回のことは不問にして、……いや、これはいつまでも解決していなかった私の責任か……。まぁ、ともかく今回のことは確かに攻めたい気持ちがないわけではないが、お前だけの責任じゃあない。……そうだ、私とメアの過去を話そう。そして……、どうにかメアを救える方法を考えるんだ。責任追及会議はそれからでいい」


 葛藤しているのか狼狽しているのか、軸を得ない言葉でそう言います。

 ツヅルが頷くと、彼女は2人がかりでメアを寝室に送りました。彼女の部屋は実に男らしい、いえ乙女らしくなく、人形などの代わりに数冊の使用感のある本と鉄や布などの素材が置いてあるだけでした。


「その魔族が死んでなければ、メアも死なないだろう」


 サラは苦しそうに寝ているメアの様態について言及しました。この発言の内容も概ねツヅルの予想通りです。2人はメアを寝かすとまた魔法薬が散らかっている店内へ戻りました。


「どこまで知ってるんだ?」


ツヅルはサラの用意した椅子に座っています。


「何故かは分かりませんがメアは今日僕たちと対峙した魔族に心臓を差し出した。そして、その魔族は闇属性魔法を感知でき、今回の場合はメアの『闇濃霧』に反応した。昔、サラさんとメアとその魔族は多少なりとも交流があった、くらいです」

「……メアに聞いたのか?」


 サラは訝しげに聞きました。その態度は、彼の推理に驚いたからでしょう。ツヅルは首を横に振ります。


「お前の言ったことはほとんどあっている。魔族はメアの心臓を持っているからそいつが死ねば、同時にメアも死ぬ」


 改めて聞き、あと少しでメアを殺すことになっていたことをツヅルは認識しました。


「メアがお前を救うために闇魔法まで使う。そんな男だから話すんだ。他言無用で頼むぞ」


 ツヅルはもう一度深々と頷きました。

 時系列順に話そう、とサラは前置きしながら語り始めます。


「私は魔族として生まれた」


 一言目から衝撃的でした。ツヅルは思わず立ち上がりそうになります。


「場所はここラビンス大陸の右隣にあるウェンス大陸のストロイ魔族国連邦の僻地だ。まぁ、その国には僻地じゃないところのほうが少ないが」


 淡々と語るサラを見て、それは本当に事実なのか、と彼は若干疑いました。


「種は魔族の中で最も人間に近いものだ。角や尻尾、羽などを除いたら人間と変わらない。ツヅルが会った魔族も同じだな」


 そこで魔族として生まれたサラには1人、少女の幼なじみがいました。その少女の名前はムーロ。家が隣なのでよく一緒に遊んでいたそうです。

 サラは田舎暮らしながらに充実した幼少期を過ごしました。しかし、ムーロはそう思っていなかったようです。


『私、あなたと一緒に世界中を旅したい!』


 12歳の頃、突然ムーロが言い出したことです。何でもこのストロイ連邦の様に寂れた国ではなく、他のもっと技術が進んだ国に行きたい、という理由でした。いわば都会に行きたがる若者でしょう。


『でも、人間や獣人、妖精族からは忌み嫌われているし』

『大丈夫! どんな危険が私たちを襲っても私の魔法で溶け死ぬわ!』


 サラは物静かで他人を傷つけることを嫌う少女だったので援護魔法、防衛魔法、特に精神魔法という分類の魔法を好き好んで習得していました。

 ムーロは自分の目標のためならどんなことでもやり通すような、良く言えば芯のある、悪くいえば傲慢な少女で攻撃魔法が異様に得意でした。

 そして、15歳の時。サラはムーロに無理やり連れられてウェンス大陸から出て、世界中を旅しました。


「金がなかったから、翼や角を魔法で隠してラーカー帝国で傭兵をやった」


 サラとムーロは傭兵の仕事で食いつないでいたようでした。

 その後、様々な大陸を渡り、様々な経験をした彼女らは遂に最後の大陸に着きます。


「ラビンス大陸。世界を数十年掛けてぐるっと回ったこの旅の帰り道だ。ムーロが最後に『ベストロジアの一番右にあるウェート山を越えてみたい』と言い出した。私はもうすっかり旅の慣れていたから越えられないだろうとは思いつつも了承した」


 そこでまず立ち寄ったのがルリガイア王国でした。理由はベストロジア王国行きの船がルリガイア王国、ネミカラ公国にしか存在しないからです。何故、ルリガイアを選んだのかといえば単純に都会だったからだそうです。


「そこで起こったのが魔女狩りだ」


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