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神殺しの王となる。  作者: 唐松あせび
一章 モハナト革命
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十四話 日常

「毎回、思うんだが討伐クエストで魔物の一部分を持って帰らないといけないのはきついな。まぁ、今回は尻尾だから多少はマシだが」

「そ、そりゃあ、毎回こんな殺し方してたらそうなるよ! うう……、色々ぐちゃぐちゃになってる……」


 ウルフを怪我一つ負わず虐殺した彼らは今現在討伐証明用にウルフの尻尾を刈り取っていました。

 青い蜂のように魔物の生態がはっきりしていないなどの一部の例外を除き、討伐を証明するには何かしらの素材が必要になります。当然、偽装が出来ないように一匹に一つしか備わっていないもの、この場合でいったら尻尾のようなものが必要になるのです。

 メアの火属性魔法にて倒した死体は焦げているだけで見ても気分は暗くなりませんが、ツヅルの物理攻撃の性質が強い「心討ち」で倒したウルフは骨が突き出ていたり臓器が飛び出したりしていて、中々グロテスクな絵面でした。


「まぁ、何事もなくてよかったけどさ」


 メアは無事ウルフを倒せて安心したのか、ため息を吐きました。


(本当に妾、なんもしなかったの)


 魔物の死体を漁りながら、メアと愉快に話しているツヅルの頭にどんよりとした暗い声が響き渡ります。紛れも無くテルランでした。


(光るところでも魔力を吸収する場面でもなかったし、仕方ないと思うが)


 慰めるように言います。まぁ、そんな機会はほとんどないだろうな、という皮肉でもあるのですが。


(そうじゃな……。何か新しい技を考えねばならんな……)


ため息混じりにテルランは言います。


「ツヅル、帰ろう!」


 尻尾の回収が終了し、先の戦闘で依頼を達成したためもう帰れることを知ったメアは笑顔で近寄ってきました。




 東の平原からモハナトへ到着したのは17時でした。

 今日は楽しかったよ明日もよろしく、とメアはまるで口説くような口調で言い、重たそうな足を引きずって去って行きました。

 ツヅルは彼女を見送った後にまだギルドでクエスト完了の受付をしていないことに気付きます。

 今回のウルフ討伐の報酬である薬草はどうしようかと思いましたが、別にすぐ腐るものでもないので明日渡せばいいでしょう。

 彼はとりあえずウルフの尻尾を届けるためにギルドへと向かいました。

 

 ギルドにて報酬を受け取り、宿屋へと帰ると入り口でツシータとリーフが夕焼けをバックに話し込んでいました。ツヅルはなんとなく隠れてしまいます。井戸端会議と泣き上戸には近づくなという、哲学にもなりきれない曖昧な思考を理由に2人の会話を盗み聞きしようとしたのです。

 もっとも、本当の理由はツシータに謎の気まずさを感じているからでしょう。ツシータが修行に行った理由は僕があまりにも貧弱だからか、と思っているのです。


(ツヅル、お主もワルよのう)


 そうして曲がり角に隠れていると、普段の口調そのままのテルランが脳内から話し掛けてきました。

 しかし、ツヅルは一言皮肉を返すと、盗み聞きに集中しました。


「ツシータさん。そのベルト、ツヅルさんに貰ったと聞きましたが」


 リーフは少し前に聞いたことをそのまま聞きました。


「そうよ! アタシの欠点とか服装とか色々考えてくれたような完璧な贈り物だわ」


 ツシータは就寝時も付けているほど大事にしている銀色のベルトを見ながら答えます。


「そう、ですか。じゃあ、ツヅルさんが、わたしにプレゼント送るとしたら、何を送ると思いますか?」


 リーフはツシータの目をジッと見つめながら問います。ツヅルにはその質問の意図が掴めませんでした。

 ツシータはうーんと唸りながらしきりに考えていましたが、


「きっと、リーちゃんが貰って嬉しい物だわ!」


と数秒後には堂々とした態度で答えました。数秒考えた結果それか、と脳内でツッコミを入れます。


「……そうですね」

「えっ、なんかいった?」

「いえ、もうすぐ寒くなりますし、中に入りましょう」


 彼女らは微笑みながら、宿屋に入って行きました。当然、ツヅルはその場に取り残されました。


(さて、隠れて、何か得るものはあったか?)

 

 テルランが何気ない口調で聞きます。何となく問いただすような口調なのは、いわゆる年の功という物のせいでしょうか。


(……特には)


 そう返答したツヅルは偶然を装って雑談の輪に入ろうと急ぎました。

 



 さて、5日ほど日を飛ばして3月11日から語り始めましょう。

 何故かといえばこの5日間、起床しメアと依頼に行って帰ってきたらもう夕方な特に特筆すべきこともない平凡な日常を過ごしていたからでした。


「今日は、クエストに行くのを辞めよう」


 この日、いつも通り朝7時の日差しを浴びながらギルドへと来ると、またまたいつも通りギルドの外で待機していたメアがこんなことを言い出しました。


「具合でも悪いのか?」


 毎回汗だくになりフルマラソン後のような倦怠感を見せていながらも、そこそこ魔物討伐を楽しんでいた様子のメアの言い出したことに驚きます。しかし、彼女は首を横に振って、


「いや、違う違う。昨日の夜のこと。おばあちゃんに、最近、あまりに帰ってくるのが遅いがどこに行っているんだと聞かれたから、新しく出来た友達と遊んでいたんだとあながち間違ってもいない解答をしたんだ。まぁ、普通の親ならこんな回答で満足してくれるだろうが、メアのおばあちゃんはそうは行かなかった。じゃあ、その友達を明日家に連れて来なさい、と仰ったのだ」


と昔話を語るかのように言いました。


「のだ、じゃなくて……。まぁ、いいや、分かった。討伐依頼のことは話さないほうがいいんだな?」

「ああ、そうしてくれると嬉しい」


 こういう会話があり、ツヅルは今日メア家へ訪問することになりました。




 メアに案内されながら、ツヅルは以前一回だけ通った酒場通りを歩いていました。

 まだ昼にもなっていないので、人は少ないからか、この前見た時よりもなんだか寂れて見えました。

 人がいるのといないのでは結構印象が変わるのだな、と当たり前のことを感じながら、前を歩いているメアを見ます。

 討伐依頼を通じて、この数日間メアと親睦を深め合っていました。

 メアに対するツヅルの印象は、男口調と謎の博識さを誇り、さらにそれを惜しみなく発揮できる頭脳はあるが、いかんせん体力その他運動能力がなく、ただ格好いいという理由だけで刃がついた杖を担ぎ、常に魔術師のローブを着ている赤茶色のポニーテールの変な少女です。

 

「どうしたんだ?」


 急に喋らなくなったツヅルに気付き、彼女は振り向きました。


「いや、本当にその杖重そうだな」


 素直に答えるわけにもいかなかったので、話を別の方向に持っていきます。


「だろう? 3年ほど前からお小遣いを貯めて、小さい魔力石と多量の鉄を買って作った甲斐があったよ」


 ツヅルとしては褒めたつもりはないのですが、どうやらメアはそうは思わなかったようです。


「そうか。あ、そういえば、メアのお婆さんってどんな人なんだ?」


 メアと会話するようになってから強引に話を逸らすことが多くなったな、とツヅルは思いながら言いました。


「そうだな……。一言でいうならば、怖い」

「え? 怖い?」


 メアは普段何かを説明するときに自分の感情を用いることは少ないので、その言葉を聞いたツヅルは少し驚きました。


「そう、怖い。あれはメアが9歳の頃だ。メアは健気なか弱い少女で、早く魔法薬の生成で忙しそうなおばあちゃんを手伝いたかった。そこで、メアはいつもおばあちゃんがやってる魔法を見よう見真似で詠唱してみたんだが、まだ練度が足りなかったのか暴発してね。部屋全体をこんがりと焼いてしまった。その時、爆発音を聞きつけて部屋に突撃してきたおばあちゃんの怖さといったら」

「所々粉飾が見られるのだが」

「ひどいな! メアはか弱いんだぞ、ツヅルもちゃんと扱ってくれたまえ」

「僕はどこが粉飾とは言っていないが」

「……メアのおばあちゃんはちゃんといるぞ?」

「いや、そこはちゃんと分かってるよ……。要は部屋を壊したから怒られただけだろう?」

「まぁ、そうだけど」


 なんて会話をしていると、一分も経たずに「リリィージェラス」と看板が立ててある店の前に到着してしました。

 メアは会話を中断して、その老朽化した建物の扉を開けます。


「おばあちゃん! 連れてきたぞ!」


 メアに続いてツヅルも入ると、何故だか店が狭いように感じられました。まるで行商人の荷馬車の中にいるような感覚に陥るほどです。

 周りを見渡してみるとその原因はすぐに分かりました。それは、部屋の左右にある机の上に山のように積んである恐らく魔法薬かと思われる小瓶たちでした。

 数十種類の小瓶がツヅルたちの両端から威圧してきているのです。

 もう既に慣れているのか、その混雑具合を物ともせずにメアは部屋の一番奥で椅子に座っているこの素晴らしく整理のなっていない店の長である祖母に話しかけます。


「え、ほんとに連れて来とる!?」


 所々金色が混ざった白髪で肌は若干萎れていましたが、背筋がピンとしていて随分と若々しい老婆でした。

 そんな彼女は自分の孫娘であるメアの発言に腰を抜かしています。まさか本当に孫に友達がいるとは思わなかったような反応なので、ツヅルは彼女の将来が心配になりました。


「お前、ほんとにこいつの友達か? 脅されてとかじゃないか?」


 その老婆はスッと立ち上がりながら、近づいてきます。


「もう、ひどいな! ちゃんと友達だよ。な、ツヅル」


 祖母の態度に憤慨を覚えたメアはツヅルの肩を叩きながら言いました。


「えっ……。ああ、そうだな……」


 そんなフリをされては芸人ではないツヅルでも乗らざるをえません。この世の絶望を見たような表情でそう頷きました。


「おかしいぞ!? その反応はおかしい! 違う、こんな世界は間違っている!」


 絶望と怪訝が交じり合った視線を自分の祖母から浴びたメアは必死に遺憾の意を表明していました。

 そんなメアの様子を見て、満足したのか彼女の祖母は孫に似た男口調で喋り始めました。


「私はこのお転婆娘の祖母にあたるサラだ。いつも孫娘が世話になっているな」

「いや、こちらこそ」

「君はしっかりしてるみたいでよかった。この街には目立った遊び場がないから子どもたちはグループを

作らないとまともに遊べないというのにこいつは……。そして挙句の果てには、これで何か買って友達と遊べと、何年か前から小遣いをやっているのにも関わらず何故かそのヘンテコな杖作り出すし、若干心配だったからな」

「ヘンテコではなく、格好いいと!」 


 サラは孫のそんな言葉を無視してツヅルを見定めるかのように凝視しました。

 しばしの沈黙が訪れましたが、それに耐えかねたツヅルが魔法薬について尋ねたことによりそれは去っていきます。

 サラは魔法薬業界の中でもかなりの実力者で、こんな雑多な店にも――モハナトには魔法薬の店がここ一つしかないという理由も相乗して――結構客が来るらしいです。


「ツヅル、メアは体が弱いからあまり外に連れ出してはくれるなよ」


 しばらくサラの魔法薬自慢を頷きながら聞いていると、唐突に彼女は手を組みながら言いました。

 やっぱりこの話が出るか、と思いました。そうなんですか、と彼は適当に相槌をしながらこの話題を切り抜けようとします。


「最近、妙に帰りが遅いから疑ってたんだが、お前と遊んでいるだけというから。普段はどんな遊びをしているんだ?」


 目を細めながら、サラは聞きます。コンマ数秒返答に困りましたが、


「僕が宿泊している宿屋に、メアと同じように外に出られない子がいるので、その子と一緒に遊んでいるんです。ほら、メアはうるさい所が苦手らしいですから」


と笑顔を作りながら答えました。因みにこの外に出られない子というのはリーフのことです。リーフは別に体力面に問題があるわけではないし、そもそも彼女とメアとは一切合切関り合いがないのですが。


「なるほどな。メアらしくはないが、それなら関心だ」


 ここでこの話題は終了しました。どうやら、サラの目からはかなりの好少年に見られたようで、ツヅルはホッと息を吐きます。




 もうそろそろ帰ろうかな、と1時間滞在したツヅルが立ち上がると、ちょっと待っとれ、とサラは椅子から立つと彼女から見て左側の方の棚に手を掛けて何かを探し始めました。

 周りにある木棚と値札のついた瓶が自分の体を打ちつけあって、ガラス特有の甲高い音を出していました。

 もう魔法薬がごちゃ混ぜになってツヅルのような一般人にとっては、どのように整理されているのか分からない木棚を捜索しているサラは他の小瓶よりはさらに一回り小さい小瓶を手に持ちながら、戻ってきます。

 しかし、大きさは小さくとも値札に書かれている価格はその他の数十倍はあるようでした。

 具体的にいうならば、周りにある魔法薬の値段は平均1万レー程度ですが、その小瓶は20万レーもあるそうです。


「メアの杖は娯楽用だが、ツヅル、お前が腰に掛けているその短剣は戦闘用のものだろう。この店にも3つもない代物だ。依頼で自分の力量では敵わない強敵と対峙したら、これを開けてそいつの頭目掛けてばら撒け。だが、『魔物』みたいに魔と付くものにしか効かないからそこは注意してくれ」


 そんな簡単な説明をして、サラはそれを手渡してきました。

 いや、流石にこんな高いものを貰うのは、とさすがのツヅルもこれには流石に躊躇しました。この小瓶の値段の金銭があったら、宿屋の部屋ひとつが買えてしまいます。そんなものを無償で貰うのは気が引けるのも当然でした。


「その代わり、メアと遊んでやってくれればそれでいい」


 この後も何度か交渉を繰り返しましたが、結局サラの猛烈な説得に押し切られツヅルはその小瓶を受け取ることにしました。

 何故、サラはツヅルにそれを渡そうとしたのか。彼には分かりませんでした。




 メアに見送られながら「リリィジェラス」をツヅルが出たのは午前9時でした。当然ながら全然明るかったですが、何だか討伐依頼に行く気分にもなれないので、今日は断念して久々の休暇を取ることにしました。

 彼はこの世界に訳も分からず連れてこられて今日で11日目です。

 ギルドの依頼を仕事とするならば、初日と今日を除いて9日連続出勤といったところでしょうか。社会人でもかなりの苦痛なのに、10歳でしかも今日の依頼で死ぬかもしれないといったプレッシャーを受けるような仕事を1週間で行うのは肉体的にも精神的にも辛いものがありました。

 宿屋に帰ってベッドに転がったツヅルは先程サラから受け取った小瓶を手で持って見つめながら、この一週間余りを思い出しています。

 ただひたむきに日々を過ごしている時は何とも思わなかったのですが、しかしいざ、休むぞとなった時に異様な虚無感がやって来たりする筋肉痛のような一週間でした。

 暇は人を不幸にする。どこかで聞いたことがある言葉です。

 ツヅルは日頃の疲れからかなんだか眠くなってきたので、小瓶を先日買った財布で容量の四分の一を使い果たさすような小さな黒色の鞄にしまって目をつぶりました。

 久しぶりに10時間は眠れるな、と前世から通算したら5年ぶりくらいになるかもしれない幸福を感じながらツヅルは睡眠へと沈んでいきました。




 小さく扉の開く音がします。その僅かな音でツヅルは目を覚ましました。

 窓からの光を浴びれないのでもう夜でしょうか。ツシータが帰ってきたのか、と彼は思いましたが明らかに忍び足である足音を聞くと、どうにもそうではなさそうです。

 彼は警戒しながらゆっくりと目を開けました。


「あっ……」


 なんとベットの横にリーフが立っていました。


「……なんでヤカンを持っているんだ、リーフ?」


 ヤカンを持ちながらです。彼は問い詰めるように聞きます。彼女はオロオロして必死に言い訳を探しているようでした。


「ツシータさんという大皇帝様が『ツヅルが起こそうとしても起きないから、水でもなんでも掛けてやって』と仰るものですから、とても一般庶民であるわたしにはその権力に逆らえなくて。別にわたしの意図したところではなくてですね。しかし、このような脅迫による事件は極めて責任の追及が難しいものですから、しかし強いて言うならばやはり首謀者が一番罰せられるべきだというのが一般的なコモンセンスでしょうね。ですが、この事件は未遂に終わり、そもそもこれが事件であるかどうかすら不明確です。なので、これからわたしたちの方で慎重な協議を行い、できるだけ速やかに回答を提出させていただきます」


 微妙に饒舌なリーフは、どうだこれで隠し通せただろうと言わんばかりの顔でヤカンを持ってこの部屋から退散しようとします。寝起きのツヅルはまだ状況が把握できていないので、何の行動も起こせませんでした。

 

「あ、リーちゃん、ツヅル起きた? ってなんでヤカンなんか持っているの?」


 しかし、リーフにとって不幸なのは扉を開けた先にはツシータがいたことでしょう。この一言でリーフが積み上げたロジックもとい屁理屈が崩れ落ちました。


「ちょっと、こっちに来てくれないか、リーフ?」


 ツヅルが言いました。


「……はい」


 リーフは今度は素直に部屋に入ってくると、もうすっかり起き上がっていた彼に謝罪しました。


「あの、すいませんでした……」


 

 ツシータは何故か大笑いしました。


「何故こんなことを?」  


 なんだか自分が刑事になったような気分で、リーフに問い掛けます。彼女は何とも言いにくそうに口を開きました。


「世界では、現在も人々が貧困に喘ぎ、身分によって自分の未来を妨げられている夢多き少年少女が多数存在します。わたしにはそんな人たちを見捨てておけませんでした」

(僕は悪の権化か何かなのか?)

(いい話じゃなぁ……!)


 リーフの最早言い訳にもならない言葉に動揺してテルランに問いましたが、どうやら聞く相手を間違えたようです。


「で、本当はどうしたんだ?」


 ツヅルは呆れたような表情で再び問いかけます。

 リーフは先程よりも言い渋ってから、顔を赤らめて、


「最近、ツヅルさんのお話を聞いていないから……。……話題作りに」


と呟きました。

 そして、自分が呟いたことに恥じらいを持ったのか、リーフは俯きながら廊下へと逃げて行きました。

 確かに、メアを仲間にしてからのツヅルは6時半という朝一番食堂が混雑しているときに朝食を食べに行き、19時という夜一番混む時間帯に夕食をとり、そしてリーフが仕事を終了する頃には寝ているなんてリズムで生活していたためこの数日間全くリーフと会話していませんでした。


「……リーちゃんって意外にお茶目なところがあるのね」


 訪れた静寂をツシータが破ります。


「犠牲になりそうなった身としては気が気じゃないだが」


 若干、気恥ずかしそうにに彼は答えました。


 


 次の日、少し早起きし、まだ客が全然居ない食堂で恥ずかしがっているため顔を赤くして目を背けているリーフの真正面に立ち話し続けるという悪ふざけを終えたツヅルはいつも通り、メアと合流してギルドで依頼掲示板を見ていました。


『F級依頼 Gダストの殲滅 報酬「2500レー」 依頼者メスト村村長 今年もGダストが出おった。一匹の強さは大したことない。しかし、数百匹いるのが難点で体を覆い尽くされたら全くダメージはないが、精神的にダウンしてしまうという。村の物では怖がって討伐してくれぬから代わりに討伐してくれ』 


 しばらく見ていましたが、なんと数日前にツシータが拒否したGダストのクエストがまだ残っていました。

 やはりF級クエストの中ではかなりいい報酬だしと思い、ツヅルはメアに聞いてみます。


「なぁ、このGダス……」

「だ、駄目だ! も、もし、Gの依頼を受けるというならメアは絶対に行かないぞ……!」


 案の定、メアは体を震わせながら断固拒否しました。こうなると逆に気になってきましたが、こうも拒絶されてはさすがにこの依頼を受注するわけにはいきません。

 仕方ないな、と思いながらツヅルはまた掲示板を見ます。なんだか、同じような流れを以前行った気がしますが、彼はここでも自分たちに合った依頼を見つけました。


『E級依頼 スライムの撃退 報酬「一人2000レー」 依頼者クラート・マスティア 私はこの街から東に25キロほど行ったところにあるツラウ村の村長をしています。北ミストレア森林に一番近い町といえば分かるでしょうか。先日、この村にて少々問題が発生しました。スライムがこの村に襲い掛かってきたのです。その時は数が少なかったので対処できましたが、村の者の偵察の結果、五十匹はいることが分かりました。こんな数、魔術師が少ないこの村では対処できそうにありません。というわけで依頼させていただきました。※募集約十人。村までは馬車の移動。』  

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