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神殺しの王となる。  作者: 唐松あせび
一章 モハナト革命
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十二話 お祝いごとには宝物

「買い物っていったって……、何を買うんだ」


 現在、新たに無属性魔法「心討ち」を習得して意気揚々と討伐クエストに出かけようと息を荒げていたツヅルに待ったを掛けたツシータは所持金を確認していました。


「確かに、私の所持金は6000レーちょっとしかないわ。短剣は一本がせいぜいでしょうし、まともな武器は買えない。でも初めてのクランでの討伐でC級レベルの依頼をこなしたのよ? なにかお祝いがあってもいいじゃない!」


 ツシータは手を組んで言いました。


「具体的には?」


 ツヅルは昨日、報酬として受け取ったユーミルマントの丈を宿屋にあった裁縫道具で微調整しながら、聞きます。

 彼は青い蜂の報酬である魔術書とこのマントを自分だけが受け取り、ツシータは金銭だけしか貰っていないことに若干の申し訳無さを感じていたので、彼女の買い物の案には同意していました。

 普段の暮らしぶりを見ても彼女が何が好きなのか分からないので、この機会に乗じてサプライズ的なものをしてやろう、と画策したのです。


「え、えーとぉ……。取りあえず街に這い出てみましょう!」


 目を逸らしながらツシータが放った言葉に「決まってないんかい!」とツヅルはスラマイナ並にツッコミを入れました。




 男性から女性にプレゼントをあげる。これほど難しい心理戦は中々ありません。各々違いはあれ、男性というのは比較的趣味がはっきりとしているので、女性はそれ関係のものを渡せば済みます。

 しかし、男性から見て女性の趣味は、普段の生活を見ているだけでは分かりにくいものばかりです―もちろん、すべての男女に当てはまるわけではないですが――。

 また、編み物、家庭菜園などそもそもプレゼントがあげにくい趣味なども存在し、世の現実充実系男子は頭を悩ませることが多いのです。

 服などは女性の方が詳しく、しかも流行などに敏感なので選択が難しいですし、宝石及び装飾品の類は一回ならともかく、何回もという話になってくると高く付きます。

 ツヅルも何を渡そうかすっかり迷ってしまいました。

 化粧品などの消耗品を渡そうにもまだ11歳のツシータには早すぎますし、化粧品はこの世界ではかなり高価なものとして知られています。

 邪魔にならないもので、尚且つ便利なもの、これを考えるのは至難の技でした。


「この店に入りましょう」


 しばらく、ツヅルは唸りながら今日も相変わらずの晴天であるモハナトを練り歩いていると、ツシータがとある店の前で止まりました。

 モハナトの西区の住宅街にひっそりと立っている小さな店で、看板曰くアクセサリー屋らしいです。

 彼女に引っ張られるようにして彼は入りました。

 その外見に負けず劣らず質素な内装でしたが、2階があるようなので大きさ的には問題ないでしょう。

 周りを見渡すと、沢山の種類のペンダント、ブレスレット、ネックレス、イヤリングなどが置いてあります。色々見物していると、二階を見に行ってくるわ、とツシータは言い残して2階への階段を上がっていってしまいました。

 1人になったツヅルは彼女に似合うものがないかを一生懸命に探し始めます。

 彼女にはその気はなかったのでしょうが、もしかしたらツシータはここで何かをプレゼントをして欲しいという願望から僕をここに連れてきたのではないか、とツヅルは勘違いをしていました。

 アクセサリー店なので当然ですがたくさんの装飾品があり、彼はとりあえず目についたものから物色します。

 灰色の真珠のようなものが付いた金色のブレスレット。腕につけるものだと接近戦を主に担当している彼女には邪魔になるだろうと思い戻しました。

 それなら濃淡がはっきりしている青色のイヤリング。11歳の少女にイヤリングを強制するのはよくないでしょう。

 魔力石を埋め込んで作ったペンダント。これは夜になると光るらしいです。

 魔法があまり使えない彼女にはいいかと彼は思いましたが、1万2千レーと如何せん値段が高かったので諦めます。彼は他のアクセサリーも見てみると、魔力石〇〇なんてものは大体1万レーを超えていることに気付きました。

 その後も、様々なアクセサリーを見て回りましたが、金銭的な問題とツシータの性質の問題が組み合わさって中々良さそうなものが見つかりませんでした。

 仕方がないので、彼は無意識下で無視していたとあるコーナーの元へと行きます。

 彼はアクセサリーと聞くと、どうしても綺羅(きら)びやかもの、例えばペンダントやブレスレットはたまたブローチのようなものしか浮かばなかったのです。

 そこには、『ベルト』と他のものに比べたら地味なアクセサリーが置いてありました。

 ツヅルはその中のハイウエストベルトというジャンルのベルトを見ます。

 ハイウエストベルトとはその名の通りハイウエスト、つまりは通常よりも高いウエストのラインに着けるベルトのことで、彼の前世ではワンピースと共に着けていた人が多かったような気がします。

 ツシータはいつもワンピースと同じような見た目の服を着ているので、普通のベルトは無理でもこれはきっと似合うだろう、とツヅルは思いました。

 一つ一つ吟味しながら考えていくと、目を引いたものがありました。


『マジカルベルト 討伐に行く数日前に魔力を宝石に流し込んでおくと、いざ討伐時に魔力がなくなっても流し込んだ分だけ補充できる画期的なベルトです!』

 

 大きい木の机の上に商品説明と銀色のハイウエストベルトが置いてありました。

 ツヅルはまるで彼女のために製造されたのかと疑うようなベストな装飾品があったことに驚きました。

 価格は3500レーです。ツヅルの所持金の半分でした。

 それだけの金があれば二週間は暮らせることを考えると戸惑いが生まれます。しかし、ここで何も買わずにツシータに愛想を尽かされるのは勘弁してほしいところでした。

 そんなわけで、結局買うことに決めたツヅルがその商品をレジまで持っていく様は、哀惜(あいせき)の念すら感じるほどで、これについて後のテルランさんは(すごかった)と伝説を語り継ぐように言いました。

 



 視点をツシータに変えます。

 彼女は二階にて、とある物を探していました。ツシータは先程、ショッピングの場所が決まっていない風に装っていましたが、実はこの店に来ることも買うものも前日から既に決定していたのです。

 それは、ツヅルへのプレゼントでした。

 初めての仲間と言ってもいいツヅルに自分の送ったプレゼントの品をつけて欲しいという少女的な願望から、ツシータは討伐クエストに行こうとする彼を留めてこの店へと連れてきたのです。

 

紅黒(こうこく)のミサンガ 身に着けていると死に至るような攻撃を受けた時に一回のみ魔力によって防げます。※一度使用されるともう二度とこの類の魔法は効きません』

 

 しばらく探していると元々決めていた贈り物が見つかりました。価格は2500レーです。

 名前の通り黒と赤の紐で編まれたシンプルなデザインのもので、貧弱さ故にどうにも戦闘では心配になるツヅルを気遣ってツシータが必死に考えたものです。

 彼女は迷わずに一直線に会計に向かいました。




 ツヅルらはお互いに送りあった贈り物を着用し、相変わらず騒がしい以外の感想がまるで出てこない朝のギルドにいました。お互い自分がプレゼントを貰えるとは思っていなかったようで受け取ったときは嬉しさよりも驚きのほうが勝っていました。

 しかし、あくまで買い物はサブクエスト。本来の目的である討伐依頼をこなしながら「心討ち」を試さねばなりません。


「そういえば昨日のゴブリン中隊のクエストがないわ」


 受付で常設任務であるゴブリン15体討伐依頼を受けようとした時、ツシータが思い出したかのように何気なく言います。


「あ、それはー、昨日そのゴブリン達が今まで北進していたのに突然、西に向かったので村の危機が去ったからですよー」


 それを聞いたアールナが事務作業で手を動かしながら答えました。


「……昨日のテルランの光で集まっていたゴブリンたちって」


 ツシータはアールナの言葉を聞いて、思い当たる点があったのかツヅルの耳元で囁きました。、


(妾が光ったおかげで村が一つ救われたのじゃ! お主! 褒めてくれ、褒めてくれ!)


 主犯のテルランはかなりの歓喜を見せましたが、ツヅルはそんな彼女を無視して「心討ち」という新しい魔法を使うことの高揚感に見を浸らせていました。




 ツシータは早速、彼女の髪の色と同じ銀色をしたハイウエストベルトを腹中部に付け、嬉々としながらスキップでもしそうに歩いていました。

 今回は今までの青い蜂やクルォリのような変化球ではなく、簡単な討伐依頼なので特に心配することはないでしょう。

 しかし、そんな安心よりも彼が望んでいるのは自分達が見事にこなしたクエストの報酬である「心討ち」が、いかほどの素晴らしさなのかがゴブリンという下級の魔物の死体によって証明されることでした。


「この服って元々こういうものとセットだったのかもね」


 今日は東門から出て平原に向かったツヅル一行がモハナトから大分離れ、平原を通る舗道が見る影もなく消え去った頃、ツシータは彼女がいつも着ている緑色のワンピース状の服を見て言いました。こういうものとはベルトのことです。

 動きやすいからということでしょうが、そもそもワンピースを着て戦闘ができる彼女が常軌を脱しているのです。ツヅルは彼女の身体能力に苦笑いで応えました。




「あら」


 しばらく彼らが他愛もない雑談をこの平野の中で繰り広げていると、ツシータが驚いたかのように声を上げました。その視線を追ってみると、目的のゴブリンが20体ほどの集団が遠くにいるのが見えました。

 真っ先に敵を発見したツシータは背中に掛けてあるレイピアを抜き、ツヅルは「心討ち」を詠唱し始めました。

 「心討ち」の概要をツヅルの理解しているところだけで一言で表すのなら、『魔法で物理攻撃を再現する魔法』です。

 この「心討ち」は座標を指定して放つと、力が生ずる魔法なのです。

 一見単純に見えますが、実は極めて自由度の高い魔法で、威力や力の数、座標など様々な設定が行え、例えば、二つの力を重ねて攻撃力を高めたり、上向きの力を用意して物体を打ち上げる、などツヅルの魔法力を考えないならばかなりの行動ができるように思えます。

 要約すると、この魔法は魔力を用いることによって、遠近や力量や個数をある程度無視できる物理攻撃魔法でした。

 さて、ゴブリン討伐に話を戻します。

 テルランが、昼間なら光る必要もあるまいと二度寝してしまった昼下がり。

 20体なんて数のゴブリンを通常の10歳程度の子供2人が相手するのはかなり難しく、通常ならば負けてしまうでしょう

 しかし、ことツヅルらに限ってそんなことはありえません。

 敵を恐れない精神を持っている頭脳要員と素早い物理アタッカーが揃っている、というむしろ雑魚集団戦を最も得意としているパーティーでした。

 無表情の戦闘モードに入ったツシータは体を小刻みに揺らしながら、攻撃する隙を狙っているようです。

 ツヅルが詠唱を終了したのは詠唱を始めてから30秒後でした。その間ゴブリンは果敢にこちらへと向かってきています。

 何故、そんなに時間が掛かったのかといえば「心討ち」の攻撃力を試してみたかったからでした。

 つまり、この「心討ち」は魔力を溜めれば溜めるほど威力の大きくなる魔法らしいので、ギリギリ戦闘で使える詠唱時間てある30秒を目安に詠唱してみたのです。


「ツヅル、準備はいい?」

「ああ。……『心討ち』!」


 詠唱が終了したのを見るやいなや声を掛けてきたツシータに応えると、ツヅルは一番前を駆けている他のゴブリンより一回り大きい個体に狙いを定め「心討ち」を放ちました。

 その攻撃は1秒も経たずに100メートルほど離れているゴブリンに当たります。それは、十分な打撃を与えてくれれば十分かなと思っていたツヅルの度肝を抜く威力でした。

 なんと「心討ち」が当たると同時にその一回り大きいゴブリンの腹が破れ、臓器が木っ端微塵になり地に転がり、緑色の血が流れ落ちずに霧散したのです。

 そして、次の瞬間、遠くで雷がなったときのように遅れてその体が吹っ飛び、倒れ込んだゴブリンは血を吹き出しながら息途絶えました。

 

(こ、これは……! あと少し、いやかなり弱めたほうがいいな)


 この酷い惨劇を見て、ツヅルは倫理的な観点からそう思いました。

そして、大将格だったであろう先頭のゴブリンが死んだことにより、一瞬、他のゴブリンが動揺していた隙を突こうと思ったのか、いつの間にかツシータが入り込み、糸を縫うようにしてレイピアで一気に5体の首を狩ります。

 続いてツヅルも先程の反省から10秒ほどの詠唱の「心討ち」で3個の力を用意して一気に3体のゴブリンを殺すことに成功しました。

 そういうわけで、結局何事もなくゴブリン討伐の依頼は終了し、移動の時間のほうが長いという恒例に不満を感じながらモハナトに到着したのはもうそろそろ太陽も坂を下り始める午後3時でした。


「そうだ! ツヅル、言い忘れていたわ。アタシ、明日から1週間、剣の練習に行ってくる」


 しかし、東門から街に入った時にツシータの放ったその一言はツヅルが立ち止まるほどには効果がありました。


「えっ……」


突然の報告に思わず聞き返してしまいます。

話はこうでした。

彼女は今回の戦闘で自分の剣術がまだまだなことに気づいたようで、曰く「アタシの剣はこの身体能力に振り回されている」らしいです。なので、もっとちゃんとした剣術を身に付けたいということでした。

 子供は感受性が高いだけに衝動で動くことのある生き物ですが、あまりの唐突ぶりにさすがのツヅルも驚愕してしまいました。

 

「僕としてはむしろ僕のほうが修行に出るべきなんだが」

「ううん、その必要はないわ。アタシはね、青い蜂やクルォリの件で気付いたの。アタシはツヅルの頭脳に釣り合ってないって」

「僕の頭脳なんか平凡だ。ツシータだって少し勉強すればこうなれる」

「それに……、いえ、なんでもないわ」


  クラリスはまだ帰ってきてないぞ、と彼は言いましたが、あてがあるからと一言呟かれました。

 何とか彼女を改心させようと努めましたが、どうやら彼女の決心は固いらしく、どんな言葉にも動じずに対応してきました。

 その言動に少し違和感を感じたのはツヅルだけではないでしょう。

 



 ツシータの修行の件で何故か喧嘩別れをした様な気分になったツヅルは宿屋の食堂で1人で夕食を食べていました。ツシータは修行のあてのところに稽古のことを頼み込んでくるといって出ていってしまったのです。

 いえ、1人というのは語弊があるでしょう。この場にはリーフもいました。現在の時刻は16時半であり彼以外に全く食堂に客はいないので、話し相手になっていたのです。

 彼女は昨日と同じようにツヅルたちの冒険話を熱心に聞いています。

 リーフが抱えている問題であるフォート家へ無理やり嫁がされるという事件は他人から見れば、貴族になれるのだからむしろいいことじゃないかと受け止められることでしょう。

 しかし、リーフは冒険者という夢多き職業への憧れから、また結婚は好きな相手としたいなんて純情な乙女心から精神的な苦痛を味わっているのが、その態度から目に見えて分かりました。

 ですが、彼女はそれを隠そうと努めているので、ツヅルもそのことに対して言及できませんでした。


「あ、ツヅルさん、それ」


 一通り話し終わり、いよいよ話すことがなくなったところでリーフはツヅルが手首に付けている黒と赤のミサンガに気付き、尋ねました。

 別に隠すこともないのでおおっぴらにその話をします。


「そう、なんですか……。やっぱり冒険者は楽しそうです」


 その話を聞いたリーフは極微量の声で呟くというよりも囁きに近い形でそんな言葉を放ちました。

 きっと、冒険者という職業がとてつもなく面白いのだと改めて再確認したのはいいけれど、もう自分はそれになることがなれないのだと目の前に広がっている未来に絶望したのでしょう。

 ツヅルはこの少女に不憫さを感じながらも何もできることがないことに気付き、ただ黙るしかありませんでした。

 その後は黙々と食べ進め、ツヅルはかなり早めな夕食が終わりました。

 そうして、一旦自分の(もとい)自分とツシータの部屋に帰り、ベットに寝転がって脳内にいるテルランと会話していました。

 しかし、どうにも落ち着かなかったので若干暗くなってきたこの街を見て回ることにしました。

 この3日間、不法侵入エルフの住処に入ったり、貴族街へと忍び込んだりと様々なことがあり、道などを覚えるのが得意な彼は様々な場所へと1人で出かけられるようになりましたが、自分が生活必需品を買い揃えるための場所を何一つ知らないことに気付きました。

 服は1日目に宿屋に行く時にたまたま見つけた服屋から布の服上下を一つ買い足しただけです。


(それにしても何処をどう行けばいいんだ)


 現在、少し遠出して商店街まで来たツヅルはこの街の入り組みように少し困惑していました。

 モハナトは厚い石の壁に囲まれているため中々街の拡張などができないのですが、しかし住人はどんどん増えていく一方らしく、建物が乱立して構造はさながら迷路の如き様相でした。

 因みに、東ベストロジアで周りを壁で囲まれている、いわゆる城塞都市はモハナトと後は貴族の街であるハルミリ程度しかありません。農業都市クヌや宗教都市バルミザなどは国に貸与されている500人の遠征部隊を上手く防衛に当てているそうです。

 現在は唯一の喋り相手であるテルランは、


(あ! おいお主! あそこになんかあるぞ! なになに焼き鳥? お主! いみわからん!)


と、大はしゃぎでこの旅を楽しんでいました。あまり人間や獣人など他種の街をみたことがないのでしょう。


(……見知らぬ街を愉快に眺めているのは構わないが僕の話を聞いていたか?)


 ツヅルはため息を吐きながら言います。


(なんじゃ? 唐突に水を差して。あのなお主、……おお! 何じゃあれ!? なになに、ハーピーのフライ? お主! わけわからん!) 

(あれ、ハーピーって女体の鳥じゃなかったか。……確かに訳は分からないな) 


 テルランに呆れながらも、彼は道道に溢れている飲食店や雑貨屋の場所を記憶していきます。


(あ、お主。今妾にうんざりしておるじゃろ。分かっとる。妾は何でも知っておるからな)


 自分が原因だと勘付きながらまったく悪びれないその態度に逆に感心しました。


(じゃあ、テルランが一体何の役に立つのか教えてくれ)


 彼はおどけた口調で皮肉を投げ掛けました。

 実際、テルランは絶大な魔力を消費し無駄に激しく光ることと、数多の危険を冒す必要がある魔力吸収しか特技がなく、これらは――テルランの生存を考えるならば――ツヅルの頭脳では上手く利用できそうにありません。


(な、なにを! 妾がお主の『浮遊』で短剣投げつけ攻撃よりも役に立たないとでも言うつもりか! ……妾は、妾は、えっと)


 彼女は自分が戦闘においてなにもしていないことに気付いたのでしょうか。文末になっていくにつれて言葉が弱くなります。

 テルランはこの後も負けじと口論を仕掛けてきましたが、全てツヅルによって残骸が残らない程度には粉々に粉砕されました。

 そんな風に彼らは騒ぎ立てましたが 当然他の人に聞こえるはずもなく、しかも道行く人々から誰とも話していないように見えるツヅルが時々表情を変えていたので、頭のおかしい人間を見る目線に晒されていました。


「ちょっと、君」


 そんな彼を見かねたのか、見かねてないのか声が掛かります。少女の声でした。

 テルランとの会話を中断して声の方を見てみると、背の高いメアが彼を下目遣いで見つめていました。


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