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神殺しの王となる。  作者: 唐松あせび
零章 プロローグ
1/80

零話 記憶の欠片は十二分 その1

もし誤字脱字等ございましたら、お手数ですがお伝え頂ければ幸いです。

 あなた。そう呼ばれた。


「なんだ?」


 簡単な返事をしながら、振り向く。その暗闇色の吸い込まれるような眼と合った。


「私を、殺すんですか?」

「なっ……!」

 

 動揺した。しかし、殺す方が殺される方よりも動揺するものをおかしいだろう。そう思って何とか、


「……知っていたのか」


と言葉をひねり出した。


「私があなたの全てを理解していることは、知っているでしょう?」

「逃げないのか?」


 彼女は首を振る。その黒色の綺麗な髪も共に揺れた。首にあるたくさんの切り傷が見えた。


「私はもうこの世界にいたくありません。20と数年ばかりの短い人生でしたが、あなたといることで少しだけ救われた気がします」

「少し、か」


 この頃には僕も調子を取り戻していたから、いつもと変わらないおどけた口調でそう呟いた。

 そうすると、彼女も微笑んで、僕に向かって祈りを捧げるような姿勢になり、目を閉じた。いや、捧げるようなというのは失礼か。彼女は祈りを捧げているのだ。

 僕は部屋の隅に転がっている猫のぬいぐるみをチラと見た。


「本当に、あなたがいてくれてよかったです」

「………」


 目を開けた神妙な表情の彼女がまっすぐ僕を見つめてくるので、何だか気恥ずかしくて言葉が出てこなかった。


「あなたも目を閉じて下さい」


 素直に目を閉じた。今までの記憶が鮮明に浮かんできた。

 しかし、それは遮られた。


「ぐっ……!」


 胸部を襲った激痛で。目を開けるとナイフを持った彼女の姿が見えた。


「私は死にます。でも、もう一人になりたくはないです。私はあなたが好きです。あの場所から引きずり出してくれたあなたが好きです。だから、(つづる)


――今度は優しい世界で一緒に暮らしましょう?


 目を、閉じた。

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