3.
「っはぁはぁっ…!あぶなっ…おい佐田兄さん!大人しく殺されてくれって!」
「ああ…!あのツカサがこんなにも!やはり吸血鬼は素晴らしい!適応が出来て良かったッ!」
吸血鬼とゾンビの違いは、宿主の"適応力"に依存する、99%の人間は菌に侵され死亡時に脳を乗っ取られゾンビ化するが…
「最初に吸う血はお前に決めたぞツカサっ!その皮剥いで血管から直接!吸ってやる!」
「…そうかよ。」
(ひーこわ、佐田兄完全にイッちゃってるなこれ…)
吸血鬼となる人間は菌との"共生"を身体が選ぶ…
(右、左、右、右…や~っぱそうだ、佐田兄の癖、直ってねぇ…)
脳の運動野を菌が担当しているが為、超人的な身体能力で佐田はツカサへ迫るが、脊髄に染み付いた癖は消えず…
「すぅ~…」
「吸ってやる吸ってやる吸ってやる…!ツカサァ!殺して皮を剥いで吸ってや─────」
「────ここっ!」
そこを見事に突かれ、ツカサの滑り込むような一撃が佐田の肉と骨を切り分け、脳髄へと迫る…!
(っぶな~…あっそうだ、吸血鬼はここ潰さないと死なないんだよな、うん。)
「じゃあな佐田兄、天国?地獄?に焼肉あったらさ、また連れてってくれよな。」
吸血鬼は、宿主の心臓に住み着いた菌の根元を外気に触れさせれば死が確定する、逆に捉えれば、心臓を破壊されなければ無限に近いまで再生するということだ。
「っふ~!あーあぶなかった、おーい、終わったぞ~…っと。」
実に9年間もの付き合いをしていた佐田との決別は殺しによって成立、しかしツカサはというと…
「…確認した、これが報酬だ、親っさんに感謝しろ。」
「うひょ~!これ借金から引いてこれ?っしゃ!今月は耐えれそうだ~…!」
即物的、享楽的を体現していた。
「………佐田兄、ほんとに死んじまったんだな…」
帰り道、何処へ行くかすら決めず封筒に何十枚も入っている紙切れを眺めて、ツカサは言い表せようもない感情に身を包まれる
(別に悲しくはないけど、なんだろ、これ。)
喪失感と表現するにはツカサは語彙力が足らず、自然の摂理だと受け入れるにはあまりにも死が強烈だった。
「…貴様が"ツカサ"か?」
「…?」
しかし世界はただ一人孤独な青年に構う事なく次なる物事をぶつける、夕暮れ時の土手、中にスーツを着込んだコートの男がツカサに声を掛ける。
「私は国際人外脅威対策機関日本支部の統括監理官直属である対策統括室室長の須藤だ、今日は…」
「ちょちょちょまって!?」
「…何だ。」
男の第一声はツカサにとってあまりにも情報量が多く、そして何故そのような者が自分に声を掛けたかという疑問にて脳は処理落ちに近い挙動をする。
「え?は、へ?国対の…えと、何さん?」
「…簡略しよう、私は須藤、貴様の言う"国対"に所属している者だ。」
「う、うん…?え、で、そ、そのような人がどーしておれに声を?」
未だ困惑の最中に居るツカサを突き放すように須藤と名乗る男は静かに、そして冷徹に口を開く
「貴様を、連行する。」




