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2.

「ふんふんふふーん…」


師走のある日、様々な事業が撤退し半ば廃墟となり裏社会での取引現場にされていた図書館が再死体症の温床に変化。


「らーららー…ららー…」


目撃者、被害者共に裏社会の人間であったが為に通報は遅れ、立地の関係上IHTAが到着するのは約2日後…


「あい、ツカサでーす。」


「…親っさんが呼んだのがお前みたいなガキとはな。」


「あんたよりかは強いよ、だって現にさ、あんた向こう行けてないじゃん」


市民は最早南下し比較的安全な東京へ逃げ、IHTAも守るべき対象が居ない為撤退、残された反社会的勢力はツカサ一人に頼る他無かった。


「任せとけって、直ぐぶっ殺して、またおクスリ売れるようにしてあげるからさ!」


「…中は構成員23人がゾンビ化、吸血鬼は居るか分からん」


「…あいよ、"気を付けて"ぐらい言ってくれてもいいのに…」


普通、人間には本能として闇と未知を怖がる特性が備わっている、しかしこのツカサという男は普通ではない


「仲間ぶっ殺しても許されるなんて、なーんか不思議だなっ!」


殺し殺されの環境に19年も置かれ、食器よりも先にナイフの握り方を知ったツカサにとってまともな死生観は通用せず、また恐怖という神経回路が存在を諦めていた。


「うわくっさ!はーこりゃ大変だなおい…あっごめんね~って死んでるか…」


今、足蹴にした昔可愛がってくれた兄貴分の死体よりも先に死臭の心配をする、ツカサとはそういった人間なのだ。


「おいおい…死体多すぎてどれがゾンビだかわかんねぇぞ…!」


足を進めれば掻き分けられる肉の音が、耳をすませば血の滴りが聞こえる死屍累々の図書館をツカサは意気揚々に進んでいく…


「よっ…ほっ…よっと!」


(ん…後ろに2体、前の本棚に1体隠れてるな…)


追い込まれた動物は本能を一時的に研ぎ澄まし、五感を強く筋肉を張らせ血圧を高めるという、しかしツカサは、その環境を日常として送っている…


「………」


(…今だな。)


「はい引っ掛かったー!」


後ろから襲い掛かるゾンビを交わし、その腕力を活用し頭を掴み、衝突させる…!死体は既に死後硬直が終わっており簡単に砕け散っていく…


「おい、もーめんどくさいから全員来いよ、さほら!」


ツカサの挑発に乗ってかはたまた我慢していた食欲か、その場に居たゾンビ約20体がツカサに向かって迫り来る…!


「んー…!さて、いっちょやったりますかっ!」


伸びをし、ツカサは背中に掛けた消火器から使い潰され曲がったバールを取り出す


「まず一人~…」


丁度良く曲がったバールは人間の首を捻るのに特化しており、ツカサの人並み外れた身体能力との合わせは正に鬼に金棒である


「はい次、ほら、さっさと。」


ゾンビの首をねじ切った音を背に、ツカサは一人、また一人とまるで兎のように軽快かつリズミカルにゾンビ達を殺し、経過時間20秒程で既に14体のゾンビが二度目の死を経験していた


「んーマンネリ!これつーかお。」


中身の入っていない消火器、しかしツカサにとって用途は鈍器でしかなく、鉄の塊という概念に成り果てた元消火器は一振りにてゾンビの頭部を潰す


「っふぅ!はい、あんたで最後っ────!?」


「…………」


最後の1体をいざ殺さんとする刹那が時、ツカサの身体は五感の全てを使い背後に立つ者を危険だと知らせる


(ゾンビじゃないなこの匂い…吸血鬼か。)


吸血鬼、第二種指定感染体とも呼ばれるそれはゾンビとは全くもって異なる性質を持っている。


「…ツカサか。」


「っ佐田の兄さん…あんた、なっちまったんだな。」


まず第一に、対話が可能である、生前の自我や記憶を受け継いだまま死を乗り越え、ゾンビとは違い身体が腐らない。


「ああ、お前も来いよ、こっちに。」


「いやー…ごめんだけど、いけないや。」


しかし攻撃性は人間時代とは乖離し、どのような者だろうが迷い無く殺しを出来る脳構造となる。


「だってさ…おれまだいろーんな飯食いてぇよ、血ってなんか不味そうじゃん?」


「くく…ああ、お前はそういう奴だったな。」


それもそのはず、人類の血を栄養、媒介とする変異株ウイルスが宿主に殺しを容易にさせるため脳を改造するからだ、血を吸い圧倒的な身体能力を見せる第二種指定感染体はいつしか"吸血鬼"と呼ばれるようになっていた…!


「うん、じゃあさ。」


「ああ、なら…」


『やろうか。』


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