第九話
もう少しで序章が終わりそうなのでもう少し更新を続けてから、一週間お休みを取ろうと思います。
全てを飲み込む闇の中で、一人の少女が歩いていた。子どもと間違われるほど小柄な体でトテトテと歩いていた。一見、可愛い女の子が夜遅い時間に歩いているように見えるが実際はそんなものではない。その少女はある依頼人から頼まれた案件をこなそうとする裏人だ。音もなく、自然いっぱいの森の中で歩みを進めている。輝く月はなく、夜を飾る星もない。夜鳥は動かず、ただ一人のための時間である。
ある屋敷の前にその少女は立った。豪華絢爛というより、機能美にあふれた屋敷である。それもそうだろう、魔の森と一番近い領土でありながら貴族としての誇りを忘れない貴族の屋敷、ラングフォート伯爵の屋敷であるからだ。辺境に住まう伯爵としての地位を確立しつつある貴族の屋敷に護衛がいないという事はなく、深夜でありながら見回りをしている護衛がいる。
「そんなものは無駄なのに」
少女はそう呟くとその姿を護衛の前に曝け出す。しかし護衛がその姿を視認することはなかった。堂々と門の前まで行くと少女は門に向かって手を伸ばす。
「ここは平気かな?」
その小さな手が門に触れる。
という事はなく、その小さな手は門をすり抜ける。左右に動かし体が通ることを確認すると、手を引っ込めた代わりに足を踏み出す。護衛が意味しないその少女は門をすり抜けると、屋敷の扉も同じようにすり抜け、ある一つの部屋の前にきた。その扉の前には厳重に警備されており、重要な物や人がいることがよくわかる。しかし、その護衛は少女を視認できず侵入を見逃すこととなる。
少女が中に入ると、そこにはラングフォート家次女、シャーロット・ラングフォートが天蓋付きのベッドの中で眠っていた。部屋に設置されている時計の短針はⅡを示しており、シャーロットがそうそう起きてくることは無いと思われた。
おもむろに少女はドス黒い蠢く肉塊を取り出した。それは小さいながらも不気味さが溢れ出ており、明らかに少女が持っていい代物では無いのは確かだ。
「これを埋め込むのか。……この子も可哀想だね」
そういうと手に持っていた肉塊を寝ていたシャーロットの胸元に突き刺した。
血は流れなかった。ただ静かな夜を引き裂くような悲鳴が上がった。
「シャーロット様! 失礼します!」
見張の護衛がノックもせずに入る。それだけ緊急事態であることは誰もが認めるだろう。それは自分が夢の世界にいるのでは無いかと思う程。シャーロット・ラングフォートという少女の胸元から多数の触手が伸び、暴れ回っている。シャーロット本人は目を閉じているが、度々激しく痙攣し所々傷を負っている。それは触手によるものか将又内部からの傷かどうかは定かではない。
護衛は一瞬固まってしまうが、すぐさま剣を抜き、暴れ回っている触手に切り掛かる。しかし暴れ回る触手は意思があるかのように切り掛かる剣を薙ぎ払い護衛を突き飛ばした。
「何事なの?」
「どうした何があった?」
ラングフォート伯爵と伯爵夫人がシャーロットの自室にやってくる。けれどそこはすでに戦場であり、軟弱な人間がいると邪魔になる。護衛はとても夜中に出す声ではない大きさで怒鳴った。
「ラングフォート伯爵卿ならびに伯爵夫人殿、先に無礼をすることを謝罪します。では!」
護衛の一人がそう言うと、ふたりを抱えて飛ぶようにその場を離れた。ふたりとも困惑した顔であったがその理由がすぐわかった。
二人がいた場所はシャーロットの部屋からあふれ出た爆風と炎で埋め尽くされていた。豪快な音と共にその部分が破壊され粉々になっている。
「「なんてことを!」」
声をそろえて怒るが、有無を言わさぬ圧がその護衛にはあった。
「シャーロット様が何者かに寄生されたのです!」
いかがだったでしょうか。
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更新は22時に変更します。