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世界樹になったヌシの怒り

「あのさ、僕を殺した王太子がいる国の状況って分かったりする?」

「国神がいる国となると、別の大陸だからすぐには分からないが、それでもいいか?」

「いいよ。僕が原因で国が荒れるのなら、既に国は滅んでる筈でしょ? それの確認だけしたいんだ」

「お前の発言も結構物騒だぞ」

「この世界の事情に比べたらましな方だと思うけどな。僕、こんな状態になってるのに怒ってないし」

「君の態度が豹変しない様に、祈るしかないですね」

「へへへ」

「照れるところか?」


 そうだ、怒ると言えばヌシの話だ。


「ヌシってさ、代替わりするまでずっと怒ってたの?」

「大体は百年程で落ち着いたそうですよ」

「長過ぎ、落ち着いた時めっちゃ疲れてそう。その後は、サク達の一族がお世話してたんだよね」

「そうですね。意思疎通ができる様になると、大抵のヌシは落ち込んだ状態になるので慰めるのに一苦労したそうです」

「何で落ち込むのさ?」

「自分の怒りが故郷である土地を荒らし、群れもなくしたと知って、落ち込まないヌシはそういませんよ」

「教えなければよくない?」

「いつの間にか知ってしまうみたいで、もしかして世界樹には世界の状態が分かる能力があるではないですか?」

「え、僕はなりたてだからそういうのは分からないかな。落ち込んだヌシをどうやって慰めたの?」

「好物を聞き出してそれを差し入れるとか、歌が好きなヌシの為に一緒に歌ったり、子供の世話をするのが好きなヌシには一族の子供に会わせたり、攻撃的なヌシだと魔法で対決とかしたらしいな」

「魔法対決! 何かすっごい魔法使ったの? どっちが勝ったの?」

「君は、魔法の事になると面白いくらい食いつきが良いですね。対決はやはり経験豊富なヌシが勝ったそうです。落ち込んだヌシが立ち直るのにかかった年月は大体十年程だったそうです」

「サク達のご先祖様達は、荒れた土地になった場所でも世界と世界樹の為に頑張ってたんだね」


 僕の言葉に、サク達は誇らしげな顔になってる。なんかいいな、自分達の仕事に誇りとか持ってる人達。

 僕はこんな人達には、もうなれない。


「ふとした拍子に、ヌシの機嫌が悪くなる時があったそうですが、世界が荒れるほどの負の感情を出す事は無かったそうです」

「ヌシの機嫌が悪くなる事があったんだ?」

「時々、埋まった状態に嫌気がさすと機嫌が悪くなったそうです」

「あれ、ヌシも僕みたいに殺される前の姿で埋まってたの?」


 そう言えば、ヌシがどんな状態でここにいたのか聞いてなかったや。


「魂が世界樹として転生しているので、姿形は前世と同じになる様ですね。世界樹になる為の木を切り倒すのもそれが理由ですし」


 例え木でも必ず殺すという意志が強い。この世界は物騒で平和を守っているのか。


「そっか、じゃあヌシが不機嫌になるのも分かる。ヌシは強くて長生きできるほど生きてたんだもんね。野生の生き物って動けないと、餌も獲れないって事だし死活問題になるよね」

「世界樹になった時点で何かをする必要は無くなっているが、やはり本能が勝る時もあったんだ」

「へー、世界が荒れるほどじゃなくても、落ち込んだり機嫌が悪くなった時に、少しは世界に影響が出たの?」

「世界の何処かで小雨が降る程度で、そこまで深刻な状態ではなかった様です」

「世界樹なりたての怒りに全てをかけ過ぎでは」


 怒ってる時は世界滅びそうになって、落ち込んだり機嫌が悪くなった時は雨降らすだけとか世界への影響の差があり過ぎ。


「そうだ、世界が荒れるって言ってたけど、どんな風に荒れたのか聞いてないや」

「そうですね。大雨が続く事での不作、日照りによる水不足、雷雨による森林火災、集中豪雨での川の氾濫、山崩れ、地震による地割れなどですね」

「それが全部まとめて起きたの?」

「同じ土地で、全てが同時に起きた事は無かったそうですが、自然災害が続けざまに起きるのはとても辛い事だったでしょう」

「ほぼ百年続いたんでしょ?」

「徐々に災害の規模は小さくなったそうですが、各地での復興の妨げにはなったようです」

「復興の余裕ができると、略奪や侵略行為で荒れる国があったらしい」

「人災ってやつだね」

「俺は最初から人災だと思っているぞ。ヌシを殺しているのは全て人間だからな」

「そうなんだ?」

「不思議な事に、代替わりの日の野生動物は、縄張りである住処で大人しくなっているそうです。ヌシも例外では無いので、代替わりの日は絶好の狩り日和だと考える愚か者がどの時代にもいたのです」

「大人しくしてる日に殺しに来るとか、ヌシの怒りも倍増じゃん」

「やるなと言われてもやる人間はいるからな」

「何でヌシを狩ろうとするの?」

「雪山熊のヌシの肝が不老長寿の薬になるとか、地潜り猿のヌシの脳みそを食べると魔力の質が上がるなどと言う迷信を信じるお金に糸目を付けない権力者が居るので、代替わりの日が分かるとその年は当たり年などと言う無謀な冒険者が出て来るんですよ」

「要は私利私欲の為だな」

「強欲。ヌシを殺したら自分も死ぬかもしれないのに狩るんだね」

「自分だけではなく、世界中を巻き込んでますけどね」

「初めの方はともかく実際に世界荒れてるのに、代替わりの日に生き物殺すなって言われても繰り返すのなんで?」

「流石に千年、万年単位の年数が過ぎていますから、人から見れば神話の中の出来事です。平和な時代が続いても、国や人は変わりますし文明も変化します。それに、日々の生活がかかっている人達から見れば、絶好の狩り日和とも言える日にお金になるヌシを狩らないのは馬鹿のする事だと考えを持つ者達がいます。そして稀にヌシを狩れた人間が出て来てしまい、世界が荒れるの繰り返しですね」

「罰則が作られないのも、数百年に一度しかない日なんぞ当事者にならない限り気にも留めないからだしな。取り締まる為の人員なんか用意しないだろう」

「外に出るなって命令出すとか」

「それも効果は無かったと思いますよ。都会ならともかく、ヌシが居るのは人が居ない辺鄙な場所ですからね。警告は出したとしても、止める人はいないでしょう」

 

 確かに、数百年に一度の事なんて自分には関係無いって思う人が大半か。

 ……僕が殺されたと分かってから、ずっと気になってた事を聞いてみよう。


「世界樹になったヌシの身体ってどうなったの?」

「使えるかはともかく、仕留めた奴が持ち帰ったんじゃないか?」

「そうだと思いますが、どうしました? 顔色が悪いですよ」

「だって、それなら僕の身体も殺された場所にあるって事だよね。僕の身体、どうなったんだろう」


 そうだ、僕は魂だけがここに来て世界樹になったんだ。僕の身体はまだあそこにあるんだ。

 あの王太子が命令してたから、僕の身体をゴミを捨てる様に放り出してる筈だ。


「僕の身体をこっちに持って来れない? どうせ捨てられてる筈だからここにお墓作って欲しいんだ」


 僕のお願いにサク達は困った顔をしていた。やっぱり駄目かな、別の大陸にある国って言ってたし、難しいのかもしれない。


「君の身体は、恐らくその国に保管されている可能性があります」

「え、でも王太子は処分しろって言ってたのを倒れた時に聞いたけど」

「異世界人の身体だ、はい分かりましたと処分しようと考える国の重鎮はいないだろう」


 王太子は国の重鎮じゃ無いらしい。


「じゃあ、僕の身体頂戴ってできない? 世界樹になった僕が寄越せって言ってるって」

「難しいだろうな、あっちの大陸と俺達の居る大陸の関係は良くないからな」

「え、仲悪いの? 戦争とかしてたり?」

「いえ、世界樹の存在を向こうの大陸の人達は良く思っていないのが原因ですね」

「何で?」

「……ヌシが世界樹になった時、初めに荒れるのが一番多い大陸があちらの大陸なんですよ」

「あっ」


 なるほど、代替わりの日を絶好の狩り日和だと思ってるのが沢山あちらにいるのか。


「あちらの大陸は、自然豊かですが険しい場所が多く、人が立ち入るのが難しいのでヌシが生まれやすい土地が数多くあります。ヌシを狩る事を生業にする人が他より多いんですよ」

「いつもヌシを狙っている人達ばかりって事?」

「まあ、他の獲物を狩りながら一攫千金を狙う感じだな」

「代替わりの日でも関係無くヌシを狩ろうとするので、他の大陸より世界樹になるヌシが出て来ます」

「あっちの大陸の人間にしてみれば、世界樹の存在は魔王みたいなもんだな」

「ふっ、そうですね。あちらの大陸は魔王が出現する程に荒れていなくても、主要国家以外は滅んだ状態で無法地帯になっていたそうですし」


 サクとアルの言葉に僕はなんか引っかかった。


「それって、世界樹の代替わりの度に国が滅んでる回数が多いって事で、つまりは世界樹=魔王だって認識になってる国もあるんじゃ?」

「ありえないな! 世界樹の成り立ちはこの世界で生きている奴なら誰でも知ってる常識だし、さっき言ったのはただの冗談だぞ」


 僕の疑問にサクが笑って否定する。


「すみません、君の気持ちも考えずに軽率な発言でしたね」


 僕がこうなった理由を思い出したのかアルが謝ってくれた。サクもさっきまで笑ってたのが真顔になって謝ってくれた。


「いや、なんか、あの王太子の国なら、世界樹の代替わりを魔王誕生と勘違いしてそうだなって思っただけで」

「……直接その王太子に会ったのは君だけですから流石に無いのでは、とは言い切れないですね」

「国神がいる国だろう? そんな馬鹿な考えを持つ奴を王太子のままにしておくか?」

「しかし、国神の力が衰えている国ですよ? 自分達の力不足より国神の力を世界樹が奪っていると思い込むくらいはしそうな輩どもでは?」

「それは国神本人が否定するだろ」

「いくら国神が否定しようとも、弱っている国神の力を使って異世界人である彼を召喚し、役に立たないと決めつけて殺す王太子ですよ。政敵を魔王に仕立てるよりかはあり得そうな話です」

「しかしな」

「ちょっと待って! ごめん、僕がおかしな事言った」


 サクとアルが言い争いをしだしたので、慌てて止める。


「僕はこの世界の常識とかさっぱりだから、僕の考えが非常識な事だと知らなかったんだ。だから、二人が言い争う事ないよ」

「そうだ、二人が世界樹殿を困らせてどうする」

「んっ?!」


 え、今の知らない声ってもしかしなくてもレンの声?! 

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