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転生したらしい

 どうにか落ち着いてくれた彼らと話をする事にした。主な話し相手は叫んでた人。

 名前はサクで、他の二人はアルとレン。見た目二十代前半くらいなのに三人共四十超えてるとか信じられない。異世界ってすごい、初めてそう思えた。

 僕も自己紹介したかったけど、名前が思い出せないのでもごもごしてたら勝手に名前を言えない事情があると解釈してくれた。合ってる。

 年は十五才って言ったらすごい顔された。こんな小さな子が……とか囁き合ってるアルとレンはどういう意味で言ってるのさ。ちなみにサク達の国の成人年齢は十六才で、僕の世界の方が成人年齢上なのは黙っていよう。

 サクは世界樹の管理を任されている一族の次の長になる人で、アルとレンは護衛兼幼馴染だそうだ。

 よく見ると三人とも髪は緑色だけど濃さが違う。サクは濃ゆくてアルは薄い、レンは二人の間って感じ。

 体格は似たり寄ったりだけど、レンが一番強そうに見える。正直言って羨ましい。

 サクはなんて言うか話上手。さっきまで一人で叫んでた癖に今は和かな雰囲気を出して、敵じゃないアピールを僕にやっている。なんていうか親戚のおじさんっぽいんだよね。僕に対する態度が他の二人と比べると気安い感じに思えて少しほっととする。

 アルとレンはサクの邪魔にならない様に少し後ろに待機している。僕が埋まっているから座ってはいるんだけど、僕に対して警戒してる感じがする。二人はサクの護衛って言ってたし当然か。

 僕は、今まであった出来事を三人に話す。彼らは僕の話を黙って聞いてくれてたけど結構驚いてるのが分かるほどすごい顔に出ていた。三人の中でサクの反応が一番面白かった事は黙っとこ。

 僕が異世界人と言うのを、彼らはあっさり信じてくれた。

 この世界では、突然知らない格好をした人が現れたり、僕みたいに召喚される人が結構多いとの事。やばいなこの世界。


「それでさ、なんで僕がここに埋められてるのか分かる人いる?」

「……あー、それなんだが」


 サクの話では、僕が死んだ日は世界樹の代替わりの日で、次の世界樹になる為の木を切り倒す事で今僕が埋まっている場所に新たな世界樹が誕生する筈だったそうな。

 彼らは、無事に代替わりできたかの確認の為に来て、僕の身に起きた惨状を知る事になったわけだ。

 木の世界樹ではなく、人間の世界樹が埋まっていたらそりゃ叫びたくもなるだろうし、混乱するのも仕方がないんだろうね。

 それにしても随分と物騒な代替わりだな。


「要するに、今までの僕は普通に死んでて、転生して世界樹になったということ?」

「そうだ。本来なら世界樹の代替わりの日は、故意に生き物を殺さないようにとは決められているのだがな。まあ、殺したところで罰則なんて意味が無いからどの国も注意喚起をしている程度だけどな。だが、どっかのバカが馬鹿をやったせいで今回の代替わりはこうなってる訳だ」

「まあ、それはどこぞの王太子に文句言ってもらうとして。あの、僕、ずっとこのままなの? 流石に裸のままとか嫌なんだけど」

「正直に言うが、お前はこれから世界樹として生きてもらうしかないとしか言えん。その次に気になる事が裸なのか。それでいいのかお前」


 嫌な予感はしてたけどやっぱりか。助けてくれそうと思ったのは勘違いだったみたいで悲しい。

 てか、いいも何もそっちは服を着てるから分かんないだろうけど、僕だけ外で裸だよ。めちゃくちゃ恥ずかしいし、できれば何か羽織るものくださいって言いたい。いや、言っていいよね。


「とりあえず僕が着れそうな服ください。そもそも世界樹になる木があるなら、なんで殺しちゃいけない日に殺されたからって僕が世界樹になるのかが分からない」 

「あー、とりあえず俺のマント被ってろ。上等なやつだからこれだけでも大分違うだろ。あとな、代替わりの日に生き物殺しても、普通は問題なく切り倒した木が世界樹になるんだよ。例外はお前みたいな異世界人か、長生きな上に強い力を持っているその土地でヌシと呼ばれているものが殺された場合だな」


 サクから渡されたマントをお礼を言って被ってみた。長めのマントなので殆ど地面に敷いている様になってる。やっと裸じゃなくなってよかったんだけど、裸にマントってこれはこれで変態になった気がする。


「なんで異世界人とヌシは例外なの?」

「恐らくだが、切り倒した木よりもこの場に呼ばれやすいんだろうな」

「呼ばれやすい?」

「魂の力が切り倒した木よりも強いやつだから、この場に埋められていると言う考えがあるんだ。世界樹について詳しい事は誰も知らないんだ」


 アルとレンの方にも顔を向けて見たけど二人も知らない様で首を横に振られた。

 

「にしても僕みたいな人が前にもいたんだ」

「記録では三十八件ほどあるが全部ヌシだぞ。異世界人はお前が初めてだからな。ちなみに今回の代替わりで千代目だ」

「千代目!? すっごい長いじゃん! もしかして代替わりって年一とか?」


 それだったら僕は転生して一年の命じゃん。


「いや、それは流石に短すぎるだろ。世界樹は長くて千二十年、短くて三百年ほどだ。お前の先代にあたる木は五百三十一年だった。……代替わりは世界樹に相応しい木が育たないと起きない様になっている。記録が残されているからそれは確かだ」


 逆に長生き決定じゃん。百年単位で埋められていないといけないとか地獄じゃん。

 ……僕の寿命は次の世界樹が決める事になるのか、なんか嫌だな。なんでだろうモヤモヤする。


「それは誰が決めてるの? 代替わりができる様になったら僕はどうなるの」

「……すまんがそれも分からない。ただ自然と代替わりが起きると分かるだけだ。木の場合は幹まで枯れるといつの間にか消えている。ヌシの場合は眠りが深くなりそのまま起きる事なく消えているそうだ。どちらも消えた次の日には、この場所に新しい世界樹があるんだ」

「へー」

 

 それならぜひともヌシの消え方でお願いしたいな。僕は生きたまま枯れて消えるなんて死んでも嫌だよ。刺されて死んだのも嫌だった。


「世界樹ってさ、何するの? てかここにずっと埋まったままとかほんとに嫌なんだけど、どうにかできない? ヌシが世界樹になってた時はどうしてたの?」

「その、世界樹の役目は世界を安定させる事で、すまないがお前には酷な事だと分かってはいる。だが、そのままでいるしかないとしか言えないんだ。あと、ヌシの時はほぼ世界が荒れるせいでろくな対策も考えられていない。殆どの場合、滅亡の危機に瀕していたと記録にもある」


 ……そろそろつっこむか。


「あのさ、記録記録言ってるけど、それ誰が記録してるのさ。なんで世界樹が代替わりで千代も続いてるとか、ヌシが世界樹になるとやばいとか、異世界人も世界樹になるとか、一体どこの誰情報なのさ!」

「神だが?」


 ???????? 神?


「神様って実在してるの? ここでは?」

「お前の世界にはいないのか? いや、神に様付けするくらいだから神を信仰する世界ではあるんだな」

「なに、この世界の神様って気安く呼べるような軽い存在なの」

「軽くは無いが、信仰や敬うとかは個人や国によるな。俺が話した内容は、創造神が作った記録の神が記録した文書のごく一部だ。今は記録の神に仕える信者もいて、記録者と呼ばれる者達が世界のありとあらゆる情報を記録の神に渡している。記録の神はそれを纏めていて、何より神自身が今も世界を記録しているんだ。知りたい事は記録の神に問い合わせれば大体分かる」

「そっかー」

「なんだ、信じられないか?」

「違くて、こっちに来た時に神様おばあちゃんに会ってたなと思い出してた。ほら、僕が殺された時の話はしたでしょ」


 サクだけじゃなくアルとレンも顔を顰めてる。なんでかアルはサク達よりすごい顔してる。


「その神様おばあちゃんと言うのは、国神だろう」

「国神? 記録の神様みたいなの?」

「いや、記録の神は創造神が作った存在で、国神はまた別の存在だ」

「へー、神様にも種類があるんだ」

「まあ、そうだな。国神が老体ならその国はもうお終いだろうな」

「え、おばあちゃんだと国滅びるの?!」

「国力が極端に弱ると国神は衰える。容貌にそれが現れているとなると国は破滅寸前だろう」

「そんなんで国の力が分かっちゃうのか」

「国神はそういう存在でもある」

「王太子が、国の為に僕を魔王を倒す為の勇者として召喚したって言ってたけど、そんなので国の力って戻るもの?」

「あー、んー、お前が勇者かー。……そもそも今は魔王なんていない筈だが」

「はっ?」


 サクが渋い顔して爆弾発言したよ!

 確かに僕が勇者って言われても渋い顔になるだろうけど魔王がいないってどういう事!?

 僕が召喚された意味は!?


「うーん、敵国の王か現王政派の政敵を魔王として位置付けた上で、何も知らない異世界人に殺させようとしたとかか?」

「そんなので国の力戻るの?」

「無理でしょう。一人二人排除したところで老体になった国神に、良い影響が出るとは思えません。そんな事より国の情勢を良くする法案を施行した方が数千倍以上の効果があると思いますよ」

「そうだよな。国神が弱った状態で召喚した奴を考えなしに殺している。その国は無能だらけだな」

 

 さっきまで変顔してたアルが教えてくれた。サクもアルの話に頷いてる。 

 そっか、要するに僕は王太子がバカなせいで殺されたのか。しかも数百年は動けない世界樹に転生するとか。


「僕の人生、バカのせいで台無しか」

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