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第三話 詮無き王③

「やっぱ、ただの屋根裏部屋か。誰も...いないよな?」


部屋には物が沢山置いてあり、埃臭い。

人がいる雰囲気はなく、静かに進む。

地面を踏むと、古びた木の音がする。


「誰か、いるのか?」

「やば」


かすれた声に呼びかけられ、思わず声が出た。

人がいるなど思いもせず、老いた板材の悲鳴を大胆に響かせながらずいずいと侵入していた自分を反省する。

おそらく人数は1人、臆することは無い。

とりあえず返事でもしてみるか。


「人がいるなんて知らなかったんだ。邪魔だったらすぐに出てくよ」

「知らなかったって…俺がここにいるっていうのは皆知っているはずだが…まず、どこから入ったのだ。扉は重りで塞いでいたはずだ」

登ってきたって言ったら怒るかなぁ…

「じょ、城壁を掃除していたもので…」


ダメかな?


「ん?そ、そうか、そうだったか。すまない、ご苦労である」


いけた。


「なら、ここはもう十分だ。下がって良い」

「は、はい」


下がれと言われてしまったので、下がろうかとも思ったが、妙にこの声の主の姿が気になり、ちょっとだけ覗いてみることにした。


「はぁ…どうすりゃいんだよ…」


なんか悩んでるみたいだ。


「…いや、敵国の対処は後だ。まずは自国を守るのが俺の役目だろ?」


この人も国の兵士なのか?

まだ自分には気づいてないみたいだ、普通なら気づかれそうな位置にいるんだけどな…

なかなか自分に気づかないこの男に興味が湧いたアイデルは、距離にして1メートルとない程の彼の背後に立つ。

これでも気づかないんだ…

よっぽど集中して何かを考えてるのかな。


「父さん…僕なんかにできるでしょうか…バカで未熟なこんな自分に…」


父さん?父親に何かを言ってる。


「…仲間が…いたら…」


さっきから途切れ途切れで、話の内容が全然分からないけど、何か悩んでるのは伝わってくる。

仲間ってなんだ?

友人の事か?

友達が居なくて悩んでるのか?

僕も友達といえる人はいないけど、ここまで悩んだ覚えはないな。

人によっては深刻な問題なのか...。

そうだ!せっかくだし、友達を作っておくのもありかもしれない。

この先の人間関係を構築する練習にもなるし、今のうちに1人くらいは友達を作っておいた方がいいよな。


「ねぇ、ここで何をしてるの?」

「…」


…あれ、反応がない。

無視されてるのか?


「おーい、ここで何してるの?」

「…」


嘘だろ…ほぼ真後ろに立って話してるのに反応されないことなんてあるのか?

聞こえてないとかは有り得るのかな…

背中に触れてみるか。


「ねぇ、聞こえてる?」

「…」


だんだん腹が立ってきた。

ここまでして反応しないのは流石におかしいだろ。

ただの清掃員とは話すことなんてないってことなのか?

この人がそんなに偉い人物なのか、ただの意地の悪い性格な人なのか、もうどっちだって構わないが、このまま無視され続けるのも癪だし、1回頬でもつねろうか…


「おーい、聞こえてますかー」


そう言って彼の頬を若干強めにつねってやった。

そうするとようやく


「いってっ…なんだよ?」

「お、やっと反応した」

「うわっ、な、なんだ?!…って、誰だ。さっきの清掃員か?なんでまだここに…」

「さっきから話しかけてるのに、全然応えてくれないからさぁ」

「え……気づかなかった。すまぬ」


本当かなぁ、あの距離で気づかないことなんてあるとは思えないんだけどなぁ。


「なんでそんなに悩んでたの?」

「そんなわかりきった質問をするな、意地の悪い」


さっきこの人に思った感想と同じ言葉を自分に向けられてしまった…

分かりきった質問と言われても、何も分からないから質問しているのに。

大体、この人は何の人なんだ?

自分と同じくらいの年齢に見えるけど、なんでこんなに偉そうなんだ?

貴族の生き残りとかなのか?


「ごめん、わからないんだけど…」

「お前、この国の住民ならば誰でも知っているこのことをわからないとは嘘吐きめ。俺を苦しめたいだけならもう成しただろう、この場から消えてくれ」

「いや、別にそんなつもりはないんだけど…」


「消えろと言ったのが聞こえなかったか?それ以上話すと貴様の命は無いと思え」


えぇ、なんでこうなった。

何がそんなに怒らせた?

悩む理由がこの国と関わりがあるのなら、この国の抱えてる問題っていうのはなんだ?

既に崩壊の一途を辿っているこの国が抱えている問題なんて、国の終末と比べれば微々たるものじゃないか。

それとも、この人はまだ諦めていないのか?

王の居なくなったこの国をまだ救えるとでも思ってるのか?

たかが1人の行動で変えれるほど軽いものではないんだろ?国というものは。


「君、この国のなんなのさ。悪いけど、僕はこの国の人間じゃないからわからない。だから君がどんな人間で、どんなことに悩んでるのか知らないけど、どうしてそんなに苦しそうな顔をしているんだい?」


「…お前、この国の人間じゃないのか…なら尚更、なぜここにいるのだ。不法入国は大罪だぞ。まさか、隣国からの刺客というやつか?俺の首でも狙いに来たか」


「あ、言っちゃった……不法入国はわかってるよ。やっぱり大罪なのか…ごめん。でも刺客っていうのは違う。僕はただ、この国を知りたかっただけなんだ。王のいないこの国を」


「王のいない?…それはどこで聞いた話だ」


「この街からちょっと離れた村で聞いたよ」


ペルシアのことは忘れない。

初めて会った僕に優しさを教えてくれた少女。

あの村で攫われた村民は自分の成せる範囲では助けたい。


「タルパ村か…あの村の住民は…そうか。確かに、王と呼べる奴はこの国にはいないのだろうな…」


王は死んだんだろ?

なら、王と呼べる人なんているわけないだろ。


「病気による災害で国の重鎮はみんな死んだって聞いたけど、それほどの病気がこの国では流行ってるの?」

「本当に何も知らないのだな。こんな時期にこんな国に来て…お前!?どうやってあの草を超えたんだ?」


「え?普通に掻き分けて進んだけど」

「あれを掻き分けただと?!そんな者がこの世にいるとは…命知らずにも程があるな」

「確かに痛かったけど、死ぬ程ではなかったよ?」

「刺傷性はもちろんだが、あれの危険性はそこだけじゃない。物によっては、毒が含まれていることにある。それに当たっていたらお前の命は無かっただろうな」

「…怖い」

「バカな奴め、何でもかんでも無鉄砲に生きておると後悔するぞ…俺のようにな」

「なにかあったの?」

「…この国への危害を加えそうなやつでもないし、答えてもいい。さっきお前は言ったな、俺はこの国のなんなのかと、俺は…この国の王だ」

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