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未完成伝記  作者: 一九
再建
6/6

第五話 理解者

「違うのだよ。オルツナード」

「開口一番に「違うんだ」と答える人は信用出来ないとあなたから学びましたよ。私は」

「うぅ...」

「さぁ、正直に話してください。この少年は、どこからこの部屋に来て、一体何者なのかを」

「エステル...」


俺のために、何とか言い訳を考えてくれてるのがわかる。

ここは、大人しくエステルの言葉に任せるとしよう。


「わかったよ」

「エステル!?」


おい!どれだけこの人を信用してるのか知らないが、俺は今、断頭台に首乗せられてるようなもんなんだぞ。

素直に話したら、極刑に決まってる。

不法入国に、王への接近、幸い、武器は何も持ってないから良かったけど、明らかに犯罪だろ。

頼むからオブラートに包んで話してくれよ……。


「こいつは、不法入国者で...」

「あ、」

「城の城壁を勝手に登って、ここまで入ってきただけなんだ」


正確に、簡潔に言ってくれたな。


「なるほど...」


その言葉の次に放たれる言葉に俺は、固唾を呑んで待った。


「本来であれば、打首もま逃れない極刑ですが、民を守ってくれた恩と、エステル王の苦悩について、真面目に向き合ってくれたことに免じて、許しましょう」

「よく言ってくれたオルツナード!」

「いいのか?!」

「しかし!犯罪は犯罪。自分のとった行動がどれだけ重い罪かは、反省してくださいよ...」

と、何かを言い淀んだオルツナードという騎士。

何か言いたげな目でじっとこちらを見ている。

「な、なんですか?」

「君、名前は」

「ああ、アイデルです」

「アイデル。いい名前だ。私はこの国の騎士団長をしているオルツナードという者だ。よろしく。アイデル君」

「は、はい、よろしく...お願いします」


「よし、これでアイデルの潔白が認められたわけだし、これからの話をしよう」


切り替えが早いな。

こっちは心が押しつぶされる気持ちでことの成り行きを待ったのに。


「聞きましょう」


「オルツナード、単刀直入に聞くが、俺の指示で動いてくれる兵はどれだけいると思う?」

「エステル王...簡潔に言いますと...ゼロだと思われます」


それは...いくらなんでも...


「酷くないか。仮にもこの国の王の命令だぞ。本来なら全員が従うべきだろ」

「言っただろ?アイデル、俺はそれだけ民の期待に添えてないんだよ」

でも、それは無理もないだろ...

「王とはそれだけ、期待が込められ、信頼を要し、責任が問われる立場なんだよ。アイデル君」

「...」

「理解してくれ、アイデル」


王の重責を。

理解、できる日は来るのだろうか?

王になった途端、勝手に期待されて、その期待に答えることが当然かのように扱われ、期待に添えない結果を出すとすぐに期待はずれと言われる。勝手に信頼性を計られて、勝手に信頼を失っていく。それでも常に責任には問われて、どんなものでも王の責任となる。それが悪い方向のものだったなら尚更、理不尽じゃないか?

『理解とは、同じ立場に立ったものだけが許された経験の共感だ。君では彼女を理解することはできないよ。アイデル』

昔言われた言葉を思い出した。



「アイデル。聞いてたか?」

「え?ごめんなんか言ってた?」

「おいおい、この作戦の要はお前なんだぞ」

「要?」

「そうさ。お前が通ってきた草の道を正確に案内できないと俺たちみんな死んじまうんだからな」

「もう一度言う。作戦はこうだ。」


そして話された内容は、

俺がペルシアと出会った地点へと案内をし、オルツナードがその道を剣をを使って切り開く。

上手く外へと出られたら、隣国の中継地である小屋を複数の敵に見つからないように1人ずつオルツナードが敵を倒して占拠する。

というものだった。


「待ってよ、外に出るとこまでは理解できるんだけど、その後の敵の中継地?それってどこにあるの?いつからそこまで話が飛躍した?」

「隣国の中継地がタルパ村からそう遠くない所に建てられていることは把握していた。そこには常に5人ほどの兵士が寝泊まりしており、この国の動向を監視している。恐らく、俺ら3人がトキグサを超えた時点で、敵兵の監視役が望遠鏡を使って見つけることだろう。

だからその中継地だけは、隣国の上層部への報告をさせない為にも、落とさなければならない難所なんだ」

「敵の殲滅はこのオルツナードにお任せ下さい。数人の敵兵など容易く倒してみせましょう」

「そこって...確か名前は...シルバ、みたいな名前の太った騎士と痩せた騎士がいたりする?」


森を抜けてすぐ、そのふたりと接敵し、1人を殺めてしまったことを思い出す。


「敵兵の名前まではわからないが、確か、その太った騎士に痩せた騎士、いたかもしれないな。でも、あの中継所ができたのは10年以上前の話、父が調査隊を派遣した時の報告書には、たしかにそのような特徴の騎士がいたと書いてた気もする」

「しかし、体型のみの特徴だけじゃあまり正確にはわかりませんね。そのふたりとはお知り合いなのですか?アイデル」


っ!オルツナードの疑い一気に強まり、まるで俺を圧死させるかのようなものすごい気迫で凝視する。


「ち、違うんだ。ただ...」


これもまた言いづらい内容だ。

もう既に戦ってしまったと言ったら、このふたりはどう反応するだろう。

どちらの反応も予測できないものだが、オルツナードの壁外で見たあの剣技、とても俺には防ぎようがない。もし剣を抜かれたら...どうする。


「なんだ、アイデル、なにか言いづらいことでもあるのか?」

「一度君のことを許した身ではありますが、発言によっては、今ここで...」


「待て、オルツナード。言ってくれ正直に、アイデル、その2人の騎士との間で、何かあるのか?」


正直言おう。

もし、この2人を敵に回してしまったら、俺はこの国にはいられないだろうな。

でも、エステルは俺を信じてくれている。

この信頼に答えるのは…友達...としての義務だよな。


「俺は...ここに来る前、その中継所とみられる場所にたまたま行ったんだ。そしてそこで、その2人と敵対してしまい、1人を殺めて、1人を気絶させてしまったんだけど...」

「……」

「……」


2人の沈黙、またもや、断頭台に首を置かれた気分だ。


「それは、少しまずいか…」

「ええ、敵の数が増えてる可能性は十分に考えられますね」

「ごめん」

「なぜ敵対したのかは想像がつきます。あそこの者たちの暴力性は調査済み。あなたが中継所にたまたまたどり着いた理由はこの際、聞かないでおきますが、そうですか、その若さで、人を殺めたと...アイデル君、精神は安定してますか?トラウマになってはいませんか?」

「え?いや...戦わなきゃ殺られていたのはこっちだし、後悔こそあれど、精神は問題ないです」

「後悔...なるほど、強く、優しい子だ。状況を察するに、だいたいの情景が浮かんできました。よく戦いましたね。アイデル」


今度の呼び捨ては、さっきの気迫溢れる、威圧的なものとは違い、優しさで溢れていた。

このオルツナードという人は、ただ自分の正義に正直で、優しさのあるいい人なんだと、改めて認識した。


「そう...だな、オルツナードの言う通りだ。よく戦った、アイデル」

「うん」

「でもその場合、もう一度作戦を立て直す必要がでてきたぞ」

「その点は問題ないでしょう」

「なぜだ」

「もし、敵兵の数がこちらの予想を上回っていたとしても、私とアイデルが必ずやあなたをお守りします」

「アイデルが?」

「たしかに、アイデル君はまだ子供ですし、敵との戦闘に巻き込むのは私としても気が進まないのですが、トキグサを出るには、アイデル君は必ずついてきてもらわなきゃ困ります。しかし、そうなった場合、戦闘に巻き込まないというのは不可能に近い。そうなったら、彼にも、戦闘に参加してもらった方が手っ取り早いのです。それに、私はこの子の戦闘センスには一目置いています」

「アイデル、お前戦えたのか...」

「まぁ、多少は」

「アイデルがそれでも構わないなら...」

「俺は構わない」

「ならそれでいこう。作戦は早い方がいい。もうすぐ日が暮れてしまう。それまでにトキグサを越えよう」

「承知しました」

「うん」


何かを忘れている気がする。

あの時、中継所で彼らが話していた内容...。


「どうかしたかアイデル?」


思い出せないが、まぁなんとかなるだろう


「いや、なんでもない」


そう笑顔で返すとエステルも

「そうか」と笑って返した。

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