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第六話 未完成の1歩②

「……静かだな」

タルパ村に着いたエステルが、周囲を見回しながら小さく呟いた。


「もう夕暮れ時だ。子供たちはみんな家に帰ったんだろう」

「そうか……良かった」

「何が?」

「子供らしく、この時間帯では労働などせず、家で休んでいることに安心したということだ」


「ああ、たしかにな」


「2人ともー」

村の奥から一人の大きな声が聞こえてきた。

「オルツナード!」「オルツナードさん!」

「無事にたどり着けたようで良かったです」

「オルツナード、声の大きさを考えろ!子供たちが寝ているかもしれない」

「っは、これは、大変失礼致しました」


「…では、アイデル、お前が抜けてきたという場所に案内してくれ」

「わかった」


村から少し離れ、自分が通って来たと思われるトキグサの近くまでやってきた。


「確かこのあたりだった気が……」

「多少のズレなら問題ないが、なるべく正確な位置を頼む」

「万が一のため、幅広く伐採致します故、安心してください」


「大丈夫。ここだよ。間違いない」


ペルシアと初めて出会った場所の記憶を頼りに、正確な位置を指し示すアイデル


「…すごい記憶力だな。お前を信じるぞアイデル」

「安心しろ」

「では、ここを元にまっすぐ進めば問題ないかい?」

「はい、方向感覚には自信があります。まっすぐで大丈夫です」

「よろしい。では」


すると、オルツナードは銀色に輝く、鋭く重厚な剣身を鞘から取り出した。

ゆっくりと、それでいて一切の無駄を捨てた一刀の構えをとった。

まるで体全体を1本の刃と化すようなその構えのまま、静かな夜に響き渡る呼吸音。

彼の息を吐くのと同じタイミングで力強く踏み込んだ片足に続き、圧倒的なまでの威圧感を放つ一太刀が一閃された。


長く国を囲んだ硬くヤスリのごとき葉身を持つ危険植物。トキグサ。

外界との往来を断ち、他国の助けは拒絶し、幸福を享受する人生を奪い、国の民を苦しめ、ペルシアら子供達には絶望を与えた。


そして……若き国王エステルにはこれ以上ない孤独と後悔を突きつけた。


この国の抱え続けてきた困難のひとつを、

騎士団長オルツナードは一切の存続を許すことなく、一直線に切り裂いた。


「す、すげぇ…」

「これで一歩……」

「はい……」




-少し前の遠方の駐屯地-


「おい、なんでわざわざここに連れてこられたんだ!俺らは」

「シルバ中隊長が殺られたらしい」

「フィン中隊長も倒されたとか」

「だからってこんなに兵を集めなくても良かっただろ!」


そう大声で怒鳴るのはブライトーチ王国隣国、カルミナーク王国国防騎士団中隊長ラウド。

今会話していた3人はみな中隊長の位をもらった猛者である。

その3人の会話を邪魔する者は誰もいない。

なぜなら、ここに集められた総勢約100人の防衛騎士達は全員同じ思いだったからだ。


招集がかけられた隊員は位ごとに、軍隊長1名、中隊長10名、小隊長20名、他それ以下の階級約80名の騎士達。


これだけの騎士が同じ場所に集められることなどまず珍しく、みな動揺を隠せずにいた。

そこで、この騎士達をまとめあげる軍隊長アレスは先導する。


「静粛に!よく急な招集に集まってくれた。そのことにまず礼を言おう。しかし!みなこの招集が馬鹿げたものだと感じているかもしれないが、それが間違いであること今ここで証明しよう」


そう声を高々に上げ、持ち出したのは、1本の小さなナイフだった。


「これは、シルバ中隊長が討ち取られた時に用いられたと見られる武器である。このナイフを見てみなはどう考える?カルミナークの熟練された防衛騎士の中隊長をたったこれ1本で討ち取ったことを!」


辺りは次第にざわめき出す。

たしかに、あの粗く研がれた石ナイフで中隊長クラスの騎士を討ち取ったならば、相当な手練れと見て取れる。だが、


「失礼ですが隊長殿、その目撃者はいるのでしょうか?」


「……いない」


辺りは更にざわめきを増す。


「だがしかし!倒れ込んでいた中隊長の首元にこのナイフが刺さっていたというのは事実だ。戦闘の現場に居合わせたフィン中隊長は未だ意識を失ったまま…その後状況整理をした結果、敵はこのナイフ1本でことを成したという蓋然性が高い。フィン中隊長がどのような攻撃でやられたのかが未特定だが、傷跡すらなく倒れていたらしい」


それを聞くと辺りは一気に緊張感を増し、無秩序に広まっていた声のざわめきが一斉にして静まり返った。

防衛騎士中隊長という位は、並の努力では昇格することがなく。ここに集まった騎士達はみな、その事実を重々に把握している。

そのため、その騎士をいとも容易く、あのような小さなナイフで倒すなど、軍隊長クラスにも匹敵する実力者と見られるわけだ。


「つまり、我が国と敵対する国、ブライトーチ王国の強力な刺客の可能性があるということだ。そして、他方駐屯地の偵察隊がトキグサを超えていく人影を見たという情報が入っている」


「そしてその者は今…」

「伝令!伝令!」


「何事だ!」

「ブライトーチ王国を囲むトキグサの一部が一瞬にして開かれました。出てきた人数はおそらく3人。そのうちの1名はオルツナード騎士団長だと推測されます」

「なんだと!?」


敵の状況が一変したと知れると軍隊長アレスは直ちに


「騎士は直ちに戦闘準備を整えろ!騎士団長オルツナードが出てきたとなると簡単な敵とは思うな!たとえ、敵が3人だとしても、決して油断するな!火の適応者は前へ出て火球を放ち、応戦しろ!それ以外の者は各隊長も命令に従い、行動したまえ!

急げ!」


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