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第2話 キミ、死んだんだよ

「つ、月岬(つきみさき)……おま、何して……ってか、あの、化け物!」


 横たわったまま、というか転校生に覆いかぶさられたまま、首だけで辺りを見回す。


 小屋の中っぽい。でも、俺がいた掘立小屋とは違う。木の板張りの部屋の中はガランとしていて、何もなかった――いや、無くはないか。

 俺、と月岬を四方で囲うように、火の灯った四本のろうそくが立てられている。なんだか変なにおい。臭くはないが、なんだろ、お香でも焚いているのだろうか。


 その向こう、扉があるのだろう、その隙間から光が漏れ入っていた。


「魂込めの儀式。化け物はもういない」


 事務的な返答の後、月岬が俺から離れ、少し離れた位置に正座する。


 一緒にいた時――制服を着ていた――とは違って、変な服装だ。えっと、あれ、あれだ、剣道着……ちょっと違うか。どっちかというと巫女装束。小袖と袴。

 ただ、どちらとも色が違う。上下とも灰色だ。袴のほうが色が濃い。


 というか、おい、制服はどうした。


「……儀式? なんだよ、それ、ってか、ここは、どこだ」


 俺も体を起こす。


「月代神社のお堂の中、だね」


 月岬は背筋を伸ばし、じっと俺を見つめている。なんだかこそばゆい。


「ツキシロジンジャ? いや、ここは底津神社だろ」


 底津そこつ神社、つまり俺の家の近所の神社。そこにいた、はず。


「キミが死んでしまったから、ここにつれてきた」

「そ、そっか、それはスマンカッタ」


 月岬は俺とは全く違って、かなり華奢な体つきをしている。背も俺より頭半分ほど低い。

 一応俺は剣道部にいたから、それなりに体は鍛えられていて、言うて、まあ、筋肉質的な。


 俺を運ぶのは大変だっただろうな……


 ……


 沈黙というものに「シーン」という音を当てた人は天才だったのだろう。寡聞にしてその名前は知らないが、ノーベル賞級の発明といえる。


 うん。


 まさに、この部屋中に今「シーン」が大量発生中だ。殺虫剤でもまけば、そのまま大量虐殺に……


「待て待て待て待て、待て、待て」


 俺は「待て」という言葉をまき散らし、「シーン」を追い払った。


「さっきからずっと待ってる、よ」


 さほど驚きも感情もあらわされていない表情で、月岬が俺を見つめている。


「なんて言った、お前」

「待ってるって」

「いや、その前」


 月岬は少しだけ考えた後、「キミが死んでしまったから、ここにつれてきた」と答えた。


「ごめん、ちょっと意味不明。何、俺、死んでるの?」

「正確には『死んでいた』、かな」


 せっかく追い払ったというのに、また大量の「シーン」が部屋の中を飛び始めた。


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