占い師と覇王線
「それで、占い師さん話ってのはなんでしょう?」
「まぁまぁー、その前にあなたの人となりを知りたいから軽く手を見せてもらえる。さっきも言ったけど、料金は取らないから安心して。
強引に客引きして、ショッピングセンターの方に苦情入れられちゃうと私は営業しにくくなるからね。そんなリスクのある事はしないから。」
「はぁー、もうほんと少しだけですよ。あんまり長いと予定あるので帰りますからね。」
私はしぶしぶ手を見せる。占い師は、軽く、両手を見比べてふむふむといいながら、読み進めていく。
「はい、ありがとうございます。やっぱり奇運の方ですね。これまで人生下積み時代。あまり成果も努力している割に出なかったでしょう?どなたが命名したか忘れましたが、こちらに覇王線になりかけの財運線、太陽線、運命線があるので、これまで通り努力を続けて下さいね。」
えっ、この占い師の人って、もしかして本当に当たる人なのかな?うちの先生もよく当たるで有名な人だけど、何も話してないのに初見でここまで言われたのは初めてよ。
覇王線は、世界を統べる才能を持った線でかなり凄いのだよ。私もそれっぽいな〜とは感じてたけど、ここに関しては確信が全く持ててなかったしね。それに、私が世界を統べるってどんだけ〜?
「お仕事もメインの仕事以外に副業の卵もされていますね。でもそちらの方は、温めている最中でまだ殻が割れる様子がなさそうですね。」
「占い師さん話も聞かずに手相だけで、そこまで分かるものなんですか?」
「ええ、流年法と3大線の強さを基準にあなたのの格好や表情を見ていれば自ずと分かりますよ。あなたは、頭が良いですね。」
「そんなことありませんよ。頭が良ければ、仕事辞めて好きな事して暮してますから。」
「いえいえ、2重知能線が出てますからね、分野の異なる技術や知識をお待ちなんですよ。ここからも色々と細かい線が出てますからね。続けていけばきっと……。
あーごめんなさい。やっぱり最後の一押しが足りてなくて、大器晩成というより、末期大勢になりそうな感じがありますね。でも、あなたは運が良いですよ。丁度、今が変化の時ですから。ほらっ、ここの手に星が出てるでしょう。」
「あれっ?こんな所にあったかな?私は、一時期手相を勉強してたので、自分の手相に関しては割りかし熟知してるんだけど。」
「そうでしたか。ご存知だと思いますが、手相は日々変わっていますからね。いくら良い手相でも努力をしないとたちまち無価値になっちゃいますよ。」
「そんなものですかね。で、占い師さん、もっと聞いていたいのですが、私も予定があるので、これ以上は……。」
占い師さんは、ふわっとした服の胸元から小さな水晶玉を取り出して、机の上に紫のちっちゃな座布団を敷いて、そっと置いた。水晶玉は、透明に透き通っている様で、よく見ると中に虹色の液体が混ざっているかの様に溶け合って、水晶玉の中を巡っている。
「これは、技能を与える水晶玉、通称スキルオーブです。あなたに個人のユニークなスキルが開花しますよ。これがないと末期大成ですが、これを使えば早熟して、直ぐにでも開花します。」
途端に占い師が胡散臭くなってきた。あー、やっぱりさっきまでのは、セールストークで、今からが商品の販売になるのか。さてはて、この水晶玉に一体いくらの価格がついて来るんだろ?本当はもう帰ってもいいんだけど、話のネタにはなるし、今書いている作品にも少しは足しになるからもう少しだけ付き合ってみようかな。もちろんそんな怪しい水晶玉は買わないけど。