楽しくやろうだにゃん! (マオ視点)
おったまげた。
トーマくんは、遥かお空の上から落ちたのに、無傷だったにゃ。
人間の王子様ってすごいにゃ!
あの靴とかいうものだけでもすごかったのに、その上お空から落ちても平気とは……。
ぼくにゃん、お空を飛んだだけで死にそうににゃったのに……
わかった。
わかりました。
人間様は、遊びの天才なのにゃ!
ぼくにゃん、地上に降り立ったトーマくんに、たたっ! と駆け寄りました。
3匹の人間のメスが殺気を見せたのでビビって後ろに飛び退きましたが、構わずトーマくんに近づきました。
「楽しそうだったにゃ! あれでなんともないとは、トーマくんは言ってた通りの天才にゃ! ぼくなんかより、よっぽど地球の支配者にふさわしいにゃ!」
そう言ってあげると、トーマくんはふんと鼻で笑って、ぼくに聞いてきました。
「……では、譲ってもらえるのか? 地球の支配者の座──」
ぼくが「もちろんにゃ!」と即答しようとすると、横から白いもふもふしたものに止められたにゃ。見るとユキにゃんにゃ。
「猫の科学者でユキタローと申します」
ユキにゃんがトーマくんに挨拶した。イーきにーではなく、人間流の挨拶らしき。さすがユキにゃん、礼儀をもってらっしゃる! 礼儀って何か知らんけど。
「聞いている」
トーマくんはぺこりともせずに、ユキにゃんとお話しはじめた。
「おまえがあの飛行装置や松田をバカにした武器を作ったらしいな」
「地球の支配者の座は、お渡ししません」
ユキにゃんがなんか言いだした。
「このマオ・ウが──猫が地球を支配している限り、地球の自然環境は守られます。あなたがたが支配などしたら、すぐにではなくとも、遠い未来に地球は死に追いやられるでしょう」
「おもしろいことを言う猫だ」
トーマくんの顔が、にくにくしげに歪んだにゃ……。にくにくにくしげに……。
「我々は猫と仲良くやるつもりだ。支配権を取り戻しても、どうせ人間は数が圧倒的に少ない。猫に協力してもらい、共に地球文明を発展させて行こうと思っている」
「ボクは協力なんてしませんよ」
「それはなぜだ」
「人間のことを『地球の害虫』としか思ってませんから」
「ますますおもしろいことを言う」
なんかおふたりの間に……見えるにゃ。
バチバチ火花みたいなものが音を立ててるのが見えるにゃ!
ぼくにゃん、仲良くさせようと思って、その間に割って入ると、おもしろいダンスをしてみせました。
おふたりは、ぼくを無視して、話し続けました。
「まぁ、今日は猫の町を見せてもらいに来ただけだ。色々と見せてもらおう。友好のために、互いを知ることが必要だ」
「何もありませんよ。メロン畑と私の家以外は、自然そのものです。何も見て回るようなものはないでしょう」
「フン。それでもいい。何か、人間のためになる発見があるはずだ」
「何を見つけたいんでしょうね? もしかして猫を絶滅させるためのヒントとか? そんなものもありません」
「楽しくやろうだにゃん!」
あまりにも、おふたりがギスギスした空気を漂わせてらっしゃるので、ぼくにゃん大声で言いました。
「仲良く、楽しく、ほがらかに! そんなのじゃなけりゃ、ぼく嫌にゃ嫌にゃ嫌にゃ!」
「では、猫の食生活を見せてくれ。猫はどんなものを食べるんだ?」
「なんでも食べますよ。魚でも、果物でも、草でも、虫でも」
おふたりは、後ろにぼくなんかいないように、背を向けて、並んで歩いていきました。
ぼくが地球の支配者にゃのに!