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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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ぶっ殺すッス! (中井アズサ視点)

「空の上で話をしていただけだ。ゴタゴタを起こすな」


 そんなことを言うトーマちゃんのことが信じられなかったッス。

 だからウチ、松田さんの横から総司令官に言ってやったッス!


「あのへんな色のネコ、総司令官のこと殺そうとしたんッスよ!? ビシッと殺してやんねーと、示しがつかねーッス!」


 こんな時、ウチの武器は使えねーッス。


 間合いが2メートルしかないんッス!

 離れてたら何の役にも立たねーッス!


 でも近接戦闘になったらウチほど頼りになる女はいねーッスけどね。


 あのネコ、地上に降りてきたら、ギッタギッタにしてやるッス!

 チェーンの頭につけた分銅で、そのちっちゃいアタマ、かち割ってやるッス!


 しかし総司令官はウチに言ったッス。「ゴタゴタを起こすなと言っただろう、中井。私は何もされてはいない。自分で落下してきただけだ」


「やはり、それは、わたしを信じて? ──」

 ユイちゃんが目をキラキラさせてそう聞いたッス。


「もちろんだ、秦野。おまえが必ず助けるだろうと思い、策もなく落下してきたのだ」


 ユイちゃんが嬉しさにビリビリしびれてるッス! 電気ショック食らったみたいッス!


「青江様!」

 マコっちんが駆けてきたッス。

「よくぞご無事で! 私のアレを使うまでもなかったようですね」


「ウム……。轟の着せてくれていた飛行服を使おうとしたのだが、その前に秦野に助けられてしまった」


 トーマちゃんはマコっちんに耳打ちでそう言ったッスけど、ウチにはしっかり聞こえたッス。

 何しろ聴力を100倍にブーストするヘッドフォンつけてるッスからね。


 聞こえてないユイちゃんは、自分が総司令官を救ったのだー、自分がいなければ総司令官はあのスパイダー〇ンのごとくバラバラになってたのだー、とか浮かれてるわ。手出さなくてもトーマちゃん、勝手にムササビみてーに助かったらしいのに、知らずに。


 なんだかユイちゃんが不憫になって、ウチはフーセンガム膨らませたッス。


 イライラしたッス。


「……やっぱ、さっきのへんな色のネコ、ウチが殺したるわ」


 そう言ってチェーンの音をジャラリと鳴らして殺しに行こうとすると、後ろから止められたッス、トーマちゃんに。


「中井……。私たちが何のためにここへ来たか、わかってるな?」


 ……チッ。


 言われるまでもなく、ちゃんとわかってっかんな。

 ネコの生態を視察するためだって、わかってっかんな。


 ネコだけを殺す物質の存在の有無を突き止め、理想兵器を完成させるためだって、ちゃんとわかってんよ!


 それでもこの狂犬中井アズサ。

 ムカついたらそのへん歩いてるネコぶっ殺しちまうかもしれねーッス。

 誰か押さえといてほしいもんッスね。


 って、思ってたら、むこうから海崎様が歩いてらっしゃった。……キャー!


「総司令官、ご無事でよかった」

 その馨しいお声を出された。……フゥ~!

「ブリキのこと……あのサビ猫のこと、私がお仕置きしておきましたので、どうか報復などとはお考えにならず、平和に場を収めてはいただけませんでしょうか」


「会話をしてただけだ。私は自分で落下してきたのだ」


「……ありがとうございます」


 海崎様がお笑いになったッス! キャー!


 なんて爽やかでステキな笑顔! キャーキャー!


 もうウチ、黒い感情とか吹っ飛んじまったッス! 髪色だけじゃなく心までピンクになっちまったッスー! もう、何もかも忘れちまうほどピンク色ッスー! キャーキャーキャ〜〜〜!




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チェーンの音をジャラリと > 昔懐かしスケバンのようだ。昭和のかほりがプンプンするぜ。
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