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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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上空での会話 (ブリキ視点)

 リョウジから聞いていた。


 コイツは人間世界の王子だと。


 何やら人間世界では二番目に偉いヤツらしい。


 しかしユキタローの作ったこのジェット装置は凄い。

 猫が空を飛べるだけでも凄いのに、こんな重たい人間なんてものを掴んでいても、グングン空へと上がっていけやがる。


 このまま、コイツを……すれば──


 人間世界の王を怒らせ、人間と猫の間に戦争が勃発するに違いねぇ。


 俺は人間と仲良くなんかしたくねーんだよ。


 人間は、俺のオモチャであるべきだ。


 木の上にトウモロコシを見つけて喜んでる人間がいたら、それを横取りして笑ってやるのがいいんだよ。

 俺にトウモロコシは食えねーけど、横取りされて泣いてる人間の顔を見るのが楽しいんだ。


 コイツを……すれば──


 コイツを怖がらせて、泣かせさえすれば、人間と猫との間に喧嘩が起きるなら、今がその絶好のチャンスだ!


 泣け! 泣きわめけ! ガキが……!


 ハーッハッハ!



「フッ……」と、人間の王子が笑った。


 鼻で笑いやがった。……なんだ、コイツ。


「おい、猫。これはどういうつもりだ?」


 聞いてくるので、教えてやった。


「ククク……! このままテメェをもっと高いところまで押し上げて、そこから地上へ落としてやるなんてことは猫にはとてもできねェから、高いところでビビらせてやるんだよ。泣けよ。わめけよ。そうしたらすぐに地上に帰してやるから」


「かわいい答えだな」


「何がかわいいんだよ! 人間は高いところが苦手だって聞いてんだよ! オラ、怖いだろ? 人間は高いところから飛び降りても受け身がとれねーからな! ハハハ!」


「しかし猫というのは凄いんだな」

 王子がなんか俺らのこと褒めはじめた。

「こんなに力のある飛行装置も、おまえの今着けている翻訳機も凄いものだ。確かに人間の科学力を凌いでいる」


「ユキタローがすげェんだよ。俺にはこんなもの、作れねェ」


「視察に来て、よかったと思っているよ」


「怖がれよ」

 なんだ、コイツは……。

「ビビって泣けよ! 俺が今、手ェ離したら、おまえは遥か下の地上に落ちて死んじまうんだぞ!?」

 それを想像したらなんだか俺のほうが怖くなってきちまった……。


「離してくれてもいいぞ」


「んなことできるわけねェだろ!」

 怖くて泣いちまった。

「離したらおまえ、死ぬんだぞ!?」


「やってみるか」


 王子が俺の手を振り払った。


「ウワアァァア!?」


 俺は泣き叫んだ。


 王子が遥か上空から、とんでもねェ高さから、地上へ落ちていく。


 猫でも落ちたら助からねェ高さだ。


 俺は慌ててジェットを下方向に転回させ、王子を助けに全開出力で急降下していった。




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悪人、じゃなく悪猫になりきれないブリキち。
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