総司令官とマオが仲良くなってくれたようだ
俺はじゃれ合って遊ぶマオと青江総司令官の姿を少し遠くに眺めながら、顔が笑ってしまって仕方がなかった。
やはり青江総司令官も13歳の子どもなんだな。遊ぶことが大好きなんだな。
日本で二番目に偉いとされているお方なのに、ただの少年にしか見えなくて、とても微笑ましかった。
自慢のローラーシューズで総司令官が駆ける。実際に目にすると、とんでもない速さだった。
それを追いつけないまでも、なんとか追いかけることが出来てるマオも凄い。四本の足をぜんぶ使って、総司令官が急に方向を変えても、体をめっちゃ伸ばしてついて行ってる。
すぐに追いついてしまえるよりも、追いつけそうで追いつけないぐらいが一番楽しいんだろうな。
マオの顔が輝いてる。
よかった……。
松田さんは正気に戻っていて、秦野さん、中井さんと並んで少し遠くから総司令官を警護している。それぞれに武器を持っているけど、そんな必要はどう見てもなさそうだ。
これで人間と猫の関係は、未来永劫に渡り、友好的なものとして約束されたに違いない。
ふたりは時たま動くのをやめて、何か会話を交わしてる。
遠くて何を言ってるのかは聞こえないが楽しそうだ。青江総司令官、笑ってる。
リッカがここに来ないかな。
こんな光景を見たら、俺なんかよりもっと前から人間と猫の友好を望んでたあの娘は、どんなに喜ぶだろう。
サンバさんに連れて来てくれるよう、頼んでおいた。きっと来るだろう。
来てほしい。
会いたい。
がしっ! という音がして、ふと目をあげた。
ブリキがあの飛行装置を背負って、青江総司令官を背中から捕まえてる。
ブリキは好戦的なやつだが、どうやらアイツも混ざって遊びたいらしい。
「おい! ブリキ!」
俺の隣で、海崎さんが声をあげた。
「やめろ! 何をしている! そのお方が誰だかわかっているのか!?」
「いいじゃないですか」
そんな海崎さんを、笑いながら俺はなだめた。
「遊んでるんですよ。総司令官だって13歳の子どもだってことですよ」
すると、向こうに立っていた3人の女性たちが、一斉に武器を構えた。
松田さんがライフル銃を、中井さんがチェーンのようなものを、秦野さんは水鉄砲のようなものをそれぞれにブリキに向ける。
ブリキの背負っている飛行装置の威力は凄まじかった。
ブリキは総司令官の背中を掴むと、そのまま空高くまで飛び上がっていく。
「いや……、ちょっと待て!」
俺もさすがに叫んでしまった。
「どこまで飛び上がるんだ!? も、戻って来い!」