楽しいだにゃん! (マオ視点)
ぼくにゃん、今、サイコーに楽しいだにゃん!
トーマくんとお友達になったのにゃ!
トーマくんの履いてる靴とかいうものには、すごいメカが搭載されていました。
かっこいい!
イタチより速く地を駆けるトーマくんがかっこいい!
鳥っぽくファッサーって、空を飛べるトーマくんがかっこいい!
たまにいるスーパーな猫みたいに、空中でクルンって回転できるトーマくんがかっこいい!
ぼくにゃん、あれに比べたら、まるで亀さんにゃ……。
必死で追いかけても、ちっとも追いつけないにゃ……。
あっ。亀さんがかっこ悪いわけじゃないですよ?
亀さんもかっこいいにゃ。歩き方に余裕があって、伸ばした首も優雅です。
貫禄のあるかっこよさにゃ。
でも、速さでいったら、どうしても遅いにゃ。
ウサギさんが本気を出し続けたら、とても駆けっこでは勝てないにゃ。
そんな感じで、ぼくにゃん、トーマくんにちっとも追いつけないにゃ。
でもそれが楽しいのにゃん♪にゃん♪にゃん♪
「すごいにゃ! トーマくん!」
ぼくにゃん、頭につけた人間語翻訳機を通して賛辞を贈りました。
「そんなすごいメカを使えるキミが超ステキ!」
「はっはっは……」
トーマくんが笑ってくれました。
「猫よ、これが人間の力だ」
「すごいにゃ! 憧れるにゃ! ぼくも人間様に生まれたかったにゃ!」
「ふ……」
トーマくんが鼻で笑ってくれました。
「残念だったな、マオ・ウよ。猫なんかに生まれてしまって」
その言い方にはちょっとムッとしました。
「猫もいいにゃ! でも、その靴に関してだけは、人間様のほうがいいと思うにゃ!」
「ははは!」
トーマくんが高笑いをしました。
そして、ぼくに聞きます。
「猫よ、おまえらは何のために生きている?」
ぼくは即答しました。
「えっ? 食べて、遊んで、すやすや眠るためにゃけど?」
「無駄な生命だな」
親しげに笑いながら、トーマくんが言います。
「私たち人間には、それ以上のものがある。崇高なる理想を求め、人生に価値を求める」
あまりにもトーマくんが難しげなことを言うので、ぼくにゃん笑ってしまいました。
「なんかめんどくさいにゃ、そんなの。ただ美味しいものが食べられて、楽しく遊べて、すやすや眠れたらそれでいいにゃ」
「なるほど、わかった」
トーマくんがうなずいてくれました。
「やはりそんな生き物が地球を支配しているなどということは、間違っている」
「間違いかにゃん?」
よくわかりません。
「違うと思うのなら、私を捕まえてみろ!」
空から何かが飛んできました。
ふわっとちょうど空中に浮いたトーマくんを、後ろからがしっ! と捕まえました。
まさか……カラス!?
そう思ったら、ブリキにゃんでした。
空飛ぶアレを背中につけたブリキにゃんは、トーマくんの背中にしがみつくと、ニヤリと笑って言いました。
「捕まえたぜ? 大将」




