マオが心配だ! 心配すぎる! (ビキ視点)
マオが新しくやって来た人間の男の子と楽しそうに遊んでやがる。
心配だ……。
心配すぎる!
だってあの人間の男の子、笑い方が楽しそうじゃない!
顔では笑いながら、心の底では何かを企んでるような、そんな冷たい笑顔だ。俺にはわかる!
マオはなんでも信じて、言葉さえ通じればどんなやつとも仲良くなってしまうアホだから、危機感がなさすぎて心配になっちまう。
いっつも騙されてるくせに、まったく学習能力がねェんだ!
あの、『ぽるたん星人』とかいうやつらがやって来た時も、アイツはわくわくしながら友達になりに行った。
そんで、どんなことをされたかは知らんねェけど、宇宙船というものの中でひどいことをされて、空から放り出されてた。
学習しろよ!
そいつは何か企んでるぞ!
でも、あの人間の男の子、すげェものを履いてやがる……。
靴の裏についた車みてェなもんで、物凄いスピードで走ってる。
ジャンプして、空中回転してる。
木にもあっという間に登ってる。
マオはそれを夢中になって追いかけて遊んでる。
クッ……! 楽しそうだ!
オレも混ざりてェ!
オレがケツをうずうずさせていると、どっかで何か話をしてたらしいユキタローとみっちゃんさんが戻って来た。
助かった……! それでオレは高まる好奇心をなんとか抑えることができた。
『ユ、ユキタロー。なぁ! あれ……、止めなくていいのか!?』
オレはとても楽しそうに遊ぶマオと人間の男の子を指さし、言った。
『楽しそうに遊んでるマオを止めることは誰にもできないよ……』
ユキタローはメガネをくいっと指であげながら、ため息をつく。
『ボクもやめさせたいのは山々なんだがね』
『あの人間の男の子、ぜってー何か企んでるぞ! オレにはわかる!』
そう。あの人間の男の子は、何かが違う。
メロンをご馳走すると言ったのに、拒むなんて……。
メロンを好きじゃないやつなんて、いるわけがねェ!
ハナユカさんみたいに素直に、心からの笑顔でメロンを頬張る人間とは何かが違う!
それを遠巻きに眺めてる3人のメスの人間もだ。なんだか怪しい……。
大人しくしてるが、それぞれが手に持った武器で、今にもマオを攻撃しそうだ。
『なぁ、ユキタロー! あのふたりが遊んでるのを止めてくれよ! オレが行ったらなんだか一緒に遊んじまいそうで、できねェ!』
『仕方がないよ』
ユキタローは落ち着き払ってるように見せてるが、オレにはわかる。コイツも不安でしょうがねェんだ。メガネをくいっとあげるその指が、震えてる。
ほんとうは心配で仕方がねェくせに、ユキタローは平気なフリをして、オレに言った。
『出方を見よう』




