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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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握手

「のるる、なるる、るふふるるん」


 サンバさんが何か言った。

 それを聞き取ってマオが答える。翻訳機をつけているので人間語になった。


「あっ。お帰りかにゃん? ありがとうございました! また会うにゃん!」


 ゆっくり背中を向けて帰りかけたサンバさんに、俺は声をかけた。


「サンバさん! リッカをここに連れて来てくれませんか?」


「リッカ」

 サンバさんは振り向くと、ニッカと笑った。

「アンタ、リッカ、好きネ!」


「そそ……そうじゃなくて!」

 慌てて彼女をここに来させたい理由を口にした。

「今、これから人間と猫にとって歴史的なほどに大事なことが行われるんです。その場にリッカもいてほしい! だから……」


「ワカッタ」

 サンバさんがわかってくれた。

「イイ子、産マセナヨ?」

 わかってくれてなかった。


 それでもたぶん連れて来てくれるだろうと信じて、俺は黄色に黒の縞模様の後ろ姿を見送った。


 和平会談はどうなってるだろう? はっと思い出し、そっちのほうを見ると、青江総司令官がマオの前にしゃがみ込んでいる。


「猫の王よ、握手をしよう」

 そう言って右手を差し出していた。

「我々人間と、君たち猫の、永遠の平和を誓って、ここに握手を交わそうではないか」


 マオは差し出された総司令官の手をまじまじと見つめて、明らかにワクワクしはじめていた。


「みっちゃん!」

 なぜか俺に向かって、聞いた。

「これはどんな遊びだにゃん?」


 俺は教えてやった。

「握手といって、仲良しのしるしだよ。手と手を結んで、これからよろしくって、約束し合うんだ」


 わあっ! と嬉しそうに口を開くと、マオは総司令官と握手をしようとした。

 おおきく指と指のあいだを広げて、人間の手を握ろうとする。

 しかし猫の手はちっちゃすぎて、総司令官のてのひらの上にぽんと置くことしかできなかった。


 ふっと笑うと、総司令官がマオの手を一方的に握った。


 人間のボスと猫のボスが握手をした。


「これで仲良しかにゃん?」


 楽しそうに笑うマオに、総司令官が答える。


「そうだ。我々はこれより敵同士ではない。仲良くやろうではないか」


 山原隊長とマコトさんが拍手をした。

 周りで見ていた猫たちが真似をして隣の猫と握手をして遊びはじめた。


「よかった」

 俺も拍手をしながら、二人を褒め称えた。

「新しい時代がはじまるんだな。人間と猫が助け合い、共存し、仲良く遊べる地球にこれからなっていくんだ!」


 二人が握手をしている向こう側を見ると、秦野さんとアズサちゃんが顔を背けている。

 まだ慣れないんだよな。総司令官がまるでゴキブリのボスと握手をしているみたいに見えているんだろう。

 今日、この町で猫と触れ合ってくれれば、彼女らもわかってくれるだろう。猫がほんとうはかわいいものだということを。


「にゃーははは!」

 松田さんはバカ光線を浴びて、手と足をぜんぶ使って野原を駆け回っている。


 その向こうにユキタローが見えた。

 相変わらず大砲みたいな兵器を前にして、何か言いたげに、握手を交わす青江総司令官とマオを睨むようにじっと見ていた。





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― 新着の感想 ―
状況を把握している、というか楽観視していないのはユキタローだけっぽい? 流石はユキタロー。 出来るオンナ。
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