再会
マオを胸に喰らった俺は、飛んだ。
後ろに向けて、10メートル、100メートル……どこまでもまっすぐ飛んで、やって来た森の中へ飛び込んだ。
背中から木にぶつかる! という寸前で、何やらやわらかいものがクッションになってくれた。
止まった……。
ようやく止まった。
心臓のドキドキと激しく分泌される脳内麻薬物質を落ち着かせながら、ゆっくりと視線を下ろすと、マオがおおきな目から涙を流しながら俺を見上げていた。
「ミッニャンニャ!」
人言語翻訳機をつけてないので猫語だった。
「ミッニャンニャ! ミッニャンニャ!」
それでもなんて言ってるのかわかった。「みっちゃんだ!」と繰り返しているんだ。
「マオ……。よかった」
俺は心底安堵しながら、その丸い頭を撫でた。
「ミッニャンニャーーー!」
叫びながらマオが俺のてのひらに頭をぐりぐりこすりつけてくる。
しかしやわらかいクッションがあって助かった。これがなければ木に背中を強く打ちつけていたところだ。
……ところでこれ、なんだろう?
やわらかくて温かい感触を背中で頼もしく感じながら、振り向いてみた。
「イーきにー」と言って、巨大な虎が豪快な笑顔で俺の顔を覗き込んだ。
「フキャーーーッ!」と、マオが恐怖に絶叫する。
「さ……、サンバさんですよね?」
俺は固まったまま、聞いた。
「リッカのお母さんの……サンバさんです……よね? 違う虎だったら……嫌だ」
「まうあ、ごんば、さんば」
あ。サンバって言った。間違いない。
辺りをキョロキョロ見回してみた。リッカもいるかもしれないと思ったのだが、どうやらサンバさんだけのようだった。
「みきやー!」
マオが俺を守るように前に立ち、震えながら勇ましく、サンバさんに何かを言う。
「ほきやー! のきらー! まうまうみー!」
「ぽとんな」
サンバさんの声は優しかった。
「にうにう、まうまお。ほとぴんな、がりらんば」
「そわにゃん?」
「はぎな、りっか」
「りっかにゃん!?」
「んば、んば」
彼らの言葉はまったくわからなかったが、二人があっという間に仲良しになったということはわかった。




