くるくるくるにゃん(マオ視点)
『くるくるくるくる……』
ぼくにゃん、一日じゅう踊って過ごしてます。
『くるにゃん! みっちゃんたちが、くるにゃん! 歓迎の準備をするのだ、者ども! にゃん』
『そうか。ハナユカさんも来るんだな?』
ビキにゃんもわくわくしはじめてくれました。
『ところでどうやって知ったんだ、人間さまたちが来ること? トンビにでも教えてもらったのか?』
『何を言ってるにゃ! こないだ花占いで出た時、ビキにゃんも一緒にいたではないかいな』
『あれかよ! オカルトじゃねぇか!』
『ぼくにゃんの占いはよく当たるのにゃ! 絶対に当たるのにゃ! 的中率は40%を誇る』
『半分以上はずれじゃねぇか!』
ぼくにゃんとビキにゃんが日だまりでもつれ合い、じゃれ合いをしながらそんなお喋りをしていると、空からブリキにゃんが降りてきました。そしてぼくらに言う。
『おい、おまえら。武器を用意しとけ』
『は? なんで?』
ビキにゃんがぼくにゃんと抱き合ったまま、聞きました。
『人間が来る。今、空から確認してきた。なんだか初めて見るメスが三匹とガキが一匹も混じってる。油断すんじゃねェぞ? やられる前にやんぞ』
『ほら来たーーー!』
『うわっ!? マオ、いきなり大声あげて飛び上がんじゃねェ!』
『歓迎の準備をするのにゃー! なんにもないけど準備をするのにゃー! あっ、そうだ。メロン畑でみんなでお昼寝をするのにゃ!』
『ぜんぶ人間さまたちが来てからでもできるじゃねーか』
ビキにゃんがツッコんでくれました。
『それにしても本当に来るとはな……。マオの占いってすげぇな。さすがだな』
『待ちきれないにゃ! ぼくどうしたらいいかにゃ!』
駆け回りながら、思いつきました。
『あっ! そうにゃ! ブリキにゃん! その背中の飛ぶやつをぼくに貸すにゃ!』
『飛んで見に行くのか? やめとけ。コイツは扱いが難しいぜ?』
『いいから貸すにゃ!』
ぼくは無理やりブリキにゃんの背中からそれを奪い取りました。
『飛ぶにゃ!』
背中に背負ってみたけどどうやったら飛ぶのかわかりませんでした。
ブリキにゃんが教えてくれました。
『そこのボタンを押すだけだ。だが、気をつけろ。まっすぐジェット噴射を飛ぶ反対方向に向けねェとすぐに落ちんぞ。墜落して地面に頭からぶつかったら今以上のバカになんぞ。おまえは地球の支配者なんだから死──』
ブリキにゃんのお喋りなんかどうでもよかったのでぼくはボタンとかいうそれを押しました。
シュゴー!
すごいすごい!
猫が空を飛ぶ!
キーン!
キーン! キーン!
キンキンキンキンキンキンキンキンキーン!
すごい勢いで! どこへ飛んで行くのかわからない!
どこへ飛んで行けばいいのかわかりません!
怖い!
しっぽが爆発しそうに膨れあがって、耳が真後ろを向いたけど、飛んで行くしかないにゃ!
『マオー!』
下からビキにゃんが心配で死にそうな声を出してくれましたけどぼくにゃん本人はたぶんもっと心配で不安で死にそうにゃ!
しまった止まり方を聞いとけばよかったです。
広いお空をぼくは飛んで行くしかありませんでした。
どこまでも……
どこまでにゃ!?
どこまでにゃーーー!? 止めてーーー!!!




