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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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会議

 会議室に全員集まり、席に着くと、山原隊長が言った。


「それにしても……正直驚きました。青江総司令官がこれほどにお若い方だとは……」


「トーマちゃんは天才なんですよぉ〜」

 自慢をするようにピンクのツインテールをフリフリしなから中井さんが答える。

「IQ180以上! 学問はもちろん、ローラーシューズでヘリコプターよりも速く移動できる、スーパーエリートなんでぇっす!」


「幼い頃からマッド・サイエンスを学び究めてきたこの私よりも博学で頭脳がキレるからな……」

 憎々しげに、ブルーのショートカットの秦野はだのさんが、自分より背の低い総司令官を見下ろし、言う。

「……嫌になる!」


「こう見えて格闘技もお強いんですのよ」

 カールした長い金髪の松田さんがコロコロと笑う。

「このわたくしよりもお強いんですから、相当なものでしてよ」


「お前ら、あんまり褒めるな」

 あからさまにデレッとしながらも、憂鬱そうな目つきは崩さずに、青江総司令官が3人の女性をたしなめた。

「猫の話をしに来たのだ。早速、本題に入ろうではないか」


「それでは……」

 山原隊長が資料を手に取った。


 みんなの前に既に配られているその紙には、3ヶ月前に俺たちが猫の町を訪問した時に身をもって体験したことが書かれている。

 猫の町には長い間何もないと思われていたけど、じつは建物もあり、何よりメロン畑が存在すること──

 猫は野蛮な生物でありながら科学技術をもつわけのわからない存在と長い間思われていたけど、触れ合ってみたらとってもかわいいこと──

 攻めて来た宇宙人をあっさり空のむこうまで飛ばしてしまうほどの兵器を作れるけれど、基本的にはとっても平和が好きなやつらだってこと──

 そして我々NKUヤマナシ支部の全員が猫との友好を望んでいること──


 しかし青江総司令官は隊長が発言しようとしたのを無視して、マコトさんに話を振った。


「轟マコトくん……。君も、猫との友好を望んでいるのかね?」


「はい、総司令官」

 マコトさんは立ち上がると、即答した。

「猫ちゃんは我々がずっと思い込んでいたような、けがらわしい妖怪のような生き物ではありませんでした。とってもとっても、かわいいんですの!」


「クスクス……」

 中井さんが馬鹿にするように笑いだした。

「アーッハッハ! マコちん、猫に洗脳されちったか?」


「猫は殺すためのものでしょう?」

 秦野はだのさんがマコトさんを睨むように見た。

「あんただって猫を片っ端から蹴り殺して早く平地にブティックを出店したいって言ってたじゃない……」


 思わず俺の口から言葉が漏れた。

「そんなこと言ってたんですか、マコトさん……」


「言ってたわ、ミチタカくん」

 俺にうなずいてから、マコトさんは秦野はだのさんに向き直る。

「ユイ……。あんたも猫と触れ合ってみればわかるわ。あたしたちが思ってたような気持ち悪いバケモノなんかじゃなくて、猫はとてもモフモフした、撫でるだけで気持ちよくなれるような、かわいいものだったのよ」


「ヤマナシ支部のみなさんは、全員そう思ってらっしゃるんですの?」

 松田さんがニコニコしながら俺たちに聞く。

「猫はゴキブリ並みに気持ち悪いものだという今までの人間の固定観念を覆して、猫はかわいいものだと思うようになっちゃったので?」


「いや、私は少し違うな」

 みんなが無言でうなずく中、海崎さんが一人、声をあげた。

「猫はかわいくはない。やはりゴキブリのように、人間に本能的な嫌悪感を催させるものだ」


 3人の女性がウンウンとうなずき、それぞれに声を漏らした。

「……ですよね」

「ゴキブリをかわいいと思うなんてムリ」

「よかったですわ……。まともな感覚の方がいらして」


「そうだ。猫は我々人間にとって、生理的に嫌悪感を催させるものだ」

 青江総司令官も一回だけうなずくと、発言された。

「ゆえに我々は猫を絶滅させるための毒ガス兵器、『理想兵器』を開発せねばならん。しかしそのためには猫には猛毒となるが人間にとっては無害な物質を見つけねばならんのだ。おまえらにはそれを探るように命じていたはずだが?」


「しかし……総司令官どの」

 海崎さんが再び発言する。

「猫は気持ち悪くて、しかもやたらとダラダラとだらけた見下すべきものですが、しかし興味深いところもあります」


「なんだ?」

 総司令官が海崎さんを睨むように見る。

「言ってみろ。興味深いところとは?」


「こちらの資料にもある通り、やつらは私の目の前で我々の車を解体し、あっという間に凄まじい兵器に作り替えました」


「これ、ほんとなのー?」

 中井さんが馬鹿にするように言う。

「とても信じられないんだけどー?」


「事実です」

 海崎さんはうなずくと、一番言いたかったらしいことを力説した。

「それに、猫とはいっても色んなやつがいることが判明しました。中にはすごく話せるやつもいます。ブリキという名の猫は、本当にいいやつなんです。どうか、総司令官どのも猫の町へ赴き、その目で猫の実態をご覧になっていただきたいと、私は希望するものであります」


「げ……」

 3人の女性が声を漏らした。

「猫の町にー……? こわ……」

「ウフフ。でも海崎さんと一緒でしたら怖くはないかも」


「フン……」

 青江総司令官が海崎さんに答えた。つまらなそうな声で──

「面白そうだな」





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― 新着の感想 ―
向こうからしてみたらここの人間は、ネコに洗脳された愚か者なんだろうな。 だが確かに、驚いてネコ語が出てしまうどっかの誰かさんは洗脳されているとしか思えない。
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