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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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猫 vs 猫 (ニャオウ視点)

 われは再びやって来た!


 もちろん、あの憎たらしきマオ・ウに戦いを挑むためである!


 今日こそヤツを倒し、地球の支配者の座をわれが奪うのだ!





『あら。ニャオウさん、こんにちは』

『いい天気ね』


 町に入ると三匹のおばさんに話しかけられた。


『相変わらずおもしろいものに乗ってるわね。あたしも乗りたい』


 無礼な!

 われの乗るこの馬のおもちゃは帝王しか取ることの許されぬ黒王こくおう号ぞッ!

 このおばさんども、がニャオウ神拳の秘技『猫パンチ』にて不機嫌にさせてやろうか!


『マオちゃんと戦いに来たの?』

『懲りないわね〜、アンタ。マオちゃんに勝てるわけないでしょ』

『あんなに顔の大きな猫、世界じゅうどこを探したっていないわよ』


『これを見てもそう抜かすかッ゙!』


 金色のヘルメットを脱ぎ、われの巨顔をおばさんどもに見せてやった。



 (=^・^=)  (=^・^=)  (=^・^=)



『あっ。ニャオウだ。また来たのかよ』


 紫色の背の高い猫に見つかり、声をかけられた。

 確かコイツ、マオの手下のビキとかいうやつだ。


『再戦しに参ったぞ。マオ・ウはどこにいる?』


『あっちのほうでずっと踊り狂ってるよ』


『なんだと……? 意味がわからん』


『……ま、呼んで来るわ』





 われは黒王を野原に停め、腕組みをして、ヤツがやって来るのを待った。


 ──遅い。


 遅いッ!


 子猫たちが集まって来て黒王に乗って遊びはじめたのを払いのけながら待っていると、ようやく、やっとマオ・ウがやって来た。


 ニコニコしておる。


 ヘラヘラしておる。


 腑抜けておるッ!


『やー、ニャオウ様。また来たのかにゃんにゃかにゃんにゃかにゃん』


『マオ・ウ、貴様ッ! それが戦うオス猫の顔かッ! 何をヘラヘラしておるッ!?』


『みっちゃんが来るにゃん』


『みっちゃんだと?』

 聞いたこともない名前であった。

『そやつは何者ぞ?』


『みっちゃんだにゃん』


『……どうでもいいッ! るぞッ!』


 審判役を、そこをちょうど通りかかった羊と猿と豚にお願いし、われらはこれで何回目か忘れたが、長き戦いの続きを開始する。


 先攻はわれ! 無敵のニャオウ! ちなみに今のところ全敗!

 今回は必ず! 勝つッ!


 勝算ありなのだッ!


 われがゆっくりと、その頭にかぶっていた金色のごっついヘルメットを取る。

 あのおばさんたちに『へえ』と言わせたわれの鍛えあげた巨顔をあらわにしてみせた。


 傍らで紫色の猫が呟きおった。

『なんか前よりちっさくなってねェ?』


 そんなはずはないッ!

 あれから毎日、お湯と水とに交互につけて鍛えたこの巨顔ッ!

 明らかに! 目に見えて! 大きくなっているはずだッ!


『……ニャオウさん、あんた、そのヘルメットやめたほうがいいよ』

 審判の猿がわれに言った。

『せっかく大きくしても、ヘルメットに締めつけられて、せっかくの巨顔が縮んじゃってるんだよ』


 ガアーン!


 そうだったのか……。


『後攻、マオ・ウ』

 羊さんが宣告し、マオ・ウがにこっと笑った。


 にこっと笑ったヤツの顔はさらに膨れ上がり、しかもまだまだ大きくなった。

 まるで風船のように、気持ち悪い感じで、生き物ではないもののように、プクーッと、膨れ上がったのだ!


『みっちゃんが来るにゃ!』


 最大の笑いを浮かべると、ヤツの顔は太陽のごとく大きくなった。


 ……負けた。


 審判の判定を聞くまでもない。


 顔の大きさで猫の権力は決まる。それ以外の要素は一切ない。猫キックの応酬で勝ったとしても、そんなものはただのつまらぬ喧嘩に過ぎぬ。顔の大きさがすべてなのだ。


 一体いつまでマオ・ウの地球支配は続くのか……。


 しかし、勝機は見えた。


 ヘルメットがすべての元凶だったのだと気づくことができた。


 せっかく死ぬ気で顔を大きくしても、ヘルメットで締めつけたらまた元に戻ってしまうとわれは学習した。


 この次からこのヘルメット、やめよう。


『再戦の日を楽しみにしているがいいぞ、マオ・ウよ!』

 颯爽とそう言い残し、われは黒王の背に跨り、ヤツに背を向けると、自分の足を動かして歩きだした。

『貴様に勝てる者がいるとしたら、このニャオウをおいて他におらぬ!

 ハーッハッハッハ! 今日は負けたが、次こそは勝つッ!

 貴様を下し、このわれが地球の支配者として君臨するのだッ!』


『ばいばいにゃ、ニャオウ様!』


 マオ・ウが笑顔で手を振り、見送ってくれた。




 そうしてわれは猫の町を立ち去った。敗れ去ったのではない、次の勝利を確信して一旦退いたに過ぎぬ。


 もう夏も終わりかけている。


 元気に子猫たちがはしゃぎ回り、日陰では大人の猫どもがダラダラしていた。





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― 新着の感想 ―
雌雄を決する戦い! にはならずやはりほのぼの。 気がつけば、黒王号が子ネコだらけになっているのを想像すると、ニヤニヤが止まらんなあ。
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